79.ガルム二 アイ。
─犬で間違いないアイ視点─
住処の外が騒がしいと思ったら全員が家の外にいる。主が外にいる時は、仲間のほとんどが外にいるが、全員となると珍しい。仲間を引き連れて外に出る。
……え!
俺も仲間も足が止まる。目の前には……土龍がいる。かつての姿とは程遠いが、確かにあの魔力と気配は土龍で間違いない。以前から水龍がいて驚いたが、土龍まで主のもとに集まるとは。
主は……平然と受け入れているようだ。少し怖いが近づくと主が心配してくれた。水龍も土龍も、格下の俺達にも普通に接してくれている、それはおそらく主がそうしているからだ。主は心がとても広い。いつか主の役に立ってみせる。
今はまだ、俺も含めて本調子ではないため、狩りにも行ってはいない。申しわけなく思うが、とりあえず体を治すことを優先している。主もそれを望んでいるようなのだ。だが、そろそろ体の方も体力が戻り、走ることも問題がなくなってきている。最後まで不安があった仲間も立ち上がることができるようになった。あと少しで主の役に立つこともできる。
初めて主という存在を持ったが、これほどうれしいモノだとは。
森の中を全速力で走る。まだ少し本来の動きができていないモノがいる。ずっと体を動かしていなかったのだから、仕方がないのだろう。俺もまだ本来の動きとは言えないな。
俺達と一緒にダイアウルフのチャルさんとチャタさんが走っている。まだ本調子ではない俺達を心配して、主が一緒に行くように言ったようだ。正直ありがたい。
森の中には、今の俺達ではどうすることもできない敵がいる。無茶をして主を悲しませるつもりはないが、逃げるだけでも命がけになる。今日はある程度、体を慣らすために走って帰ることにした。
連日続く暑さ。
森から消えていた季節が、戻ってきたのだ。これも主の力なのだろう、やはりすごい。
ゴーレム達が家に入るのを主が確かめている。今日は終わりなのだろう。
畑という場所で仕事をしているゴーレムの数に最初驚いた。多すぎる。
まさか主一人ですべてに魔力を供給しているとは。結界の維持に魔力の循環、そしてゴーレムの維持。主の魔力はすごい。
ごはんという時間になった。
主は食べる時間がほぼ決まっているようで、俺達もそれに合わせている。主の作るごはんは不思議なモノですごくうまい。今まで食べたことがないモノがいっぱい出てくる。
楽しみの一つになった。
同種仲間もほかのモノ達も楽しみのようで、雰囲気が楽しげになる。……中にはすごいやる気を見せる者達も、居るには居るが。
主が儀式をすれば、食べる時間となる。
そこからは楽しい時間だが、ちょっと怖い時間ともなる。食べ物をかけた争奪戦となるのだ、俺達は怖いので参加はしていない、ちょっと離れたところでおとなしく食べている。
争奪戦も見ていて、応援したくなる対戦と、本気で逃げることを考える対戦がある。
特にコアさん達フェンリルと親玉さんの子供アルメアレニエの争奪戦は、始まれば速攻で逃げる。アレはやばい。
シュリさんの子供アビムフールミとラタトスク達の争奪戦。睨み合っているだけでも、そばを離れる。何とも恐ろしいモノを感じるのだ、あれは。
この二つの争奪戦には絶対に近づかない、というか、逃げれるようにちょっと構えている。
今日も不思議なごはんが出てきたがうまい。イビルサーペントがこれほどの味になるとは。
あれ?……知らない間に争奪戦に参加していたようだ。おかしいな、怖いから避けていたはずが。それにしてもうますぎる。早く本来の力が戻ってほしい、そうしたら最後まで粘れたのに。
「アイ」
主が最近、俺に向かってアイと呼ぶ。チャイさんに確かめると、おそらく名前だろうと教えてくれた。
俺に付けられた名前、少し不思議な響きを持つが気に入っている。仲間も名前が付けらえたようで一生懸命覚えている。自分の名前を覚えたら仲間の名前も覚えよう。