01.勇者?……いいえ、違います。天王 翔 という、掃除屋をしている三五歳のとるにたらない男です。
思いがけないことがあると頭が真っ白になるらしい。話には聞いていたが本当だったようだ。
ふっと意識が引っ張られる感覚がして目を開けると、なぜか周りは真っ白な世界。ぐるりとまわりを見るが、見渡す限り真っ白な空間が広がっている。なんで俺はこんなところにいるんだ? あまりのことに呆然とする。
えっと、思い出せ! 確か今日の朝は、目覚まし時計が鳴らず寝坊したんだよな。それを妹にからかわれて朝からちょっと喧嘩したっけ。あ~、そういやあいつ北海道フェアで買った限定プリンを無断で食べやがった! くっそ~、仕事の後のささやかな幸せを奪いやがって。北海道フェアって何日までだったかな? 後で調べないとな。まだやっていると良いけど、で、どうしたっけ? そうだ、仕事に行っていつも通り仲間達とお昼を食べて……そういえば食堂に新しいパートさんが入ったな。それで、仕事が終わって帰ろうとしたら、母さんから帰りにヨーグルトを買ってきてほしいとLINEが入っていて……そうだヨーグルト買いに行こうとしたんだった。信号を渡ろうとして……あぁそうか、……トラックにひかれたんだ。最後に見たライトがとても
で……俺の他に四人。どうやら一緒にひかれてしまったようで、なぜか一緒にふわふわと浮いている。
ん? ふわふわと浮いて……いるだと。なぜ? あれ? 俺以外の四人が光りはじめたのだが……。何が起こっている? 俺は……光っていないな。なぜだ?
『あ~どうしよう、どうしよう!!』
……どこからか随分と焦っている声が聞こえる。どこだろう、周りはすべて真っ白で何も見えないのだが。
『ちょ……どうするのこのままだと失敗だよ!』
失敗のようです。ちなみに俺以外の四人の姿が薄くなっている。俺だけそのまま。と、いうか起きているのも俺だけ。他の四人は寝ているのか?……死んでいる? いや違うか? 分からん。
『あ~元の世界に帰っちゃうよ~! 召喚術が~』
『せっかく勇者になれるのに~』
元の世界、もと?……勇者? 勇者って妹がはまっている、漫画の世界の主人公? え~っと、
『何をしとるか!!』
ぅわ! なんだ、すごい大音量で怒鳴り声が。あ、四人が消えた。
『ぁあ~見つかった~』
『やばい、どうしよう~』
『……あれ? もう一人いるよ?』
『『『えっ……え!!!』』』
ん~どうやら俺は予定外だったらしい。見えていなかったのか? ずっと、四人と一緒にいたのに……なんだか寂しい。
『見習いの分際で召喚術など使いおって~!』
『『『ぅわ~……』』』
『召喚術は世界の秩序を乱すからダメだとあれほど!!!』
『や、やばい』
『『……あっ……』』
あれ? 俺を包んでいた何かが無くなったような気がする。って思ったら、落ちているよ。……どこに??
俺はどうなるんだ~。