天神屋の大旦那、現世の旧友にお中元を贈る。
ここは
「大旦那様、どうしたの? やたらと鈍い唸り声が聞こえるけど」
「ああ、葵。よかった。こっちへおいで」
「……ん、何か読んでるの?」
葵はいそいそと入室する。
大旦那は机の上に大きな冊子を広げていた。
「ああ、
「へえ〜。隠世にもお中元のカタログとかあるんだ。助言って言っても、贈り物なんてひとによるしなあ。大旦那様の古い友人ってどんなひと?」
「千年前から嫁に
「へええ……」
家庭持ちで長生きなあやかしなんだ……
と葵は思った。
現世には、人間に紛れて生活しているあやかしがたくさんいるからなあ。
「やはり食い物がいいだろうか。食費がやばい、とか言ってたしな」
「そうなんだ。なら家族みんなで
「酒? 酒かあ……確かに無類の酒好きだったが、今は飲めないと言っていた」
「……へえ〜」
禁酒中のあやかしなのかしら……
と葵は考えた。
「やはり王道にそうめんがいいだろうか。普段の食事でも食べられそうだ。しかしあまりに普通すぎてつまらないだろうか……ケチくさいとか思われるだろうか」
「か、考えすぎよ大旦那様。しっかりして。あ、大旦那様こっちはどう? 隠世産の大うなぎの
「おお……確かに! うなぎが嫌いなあやかしはいないな! しかしうなぎだけで満足出来るだろうか……あっちの嫁はすごく大食いなんだよな。心配だからこっちも送っておこう。ああ、これも……あれも……」
「ところで大旦那様。古い友人ってなんのあやかしなの?」
「ん?
「ふーん……」
聞いたことだけならある。
だけど詳しいことは知らないな、と葵は思ったのだった。
何にしろ、大旦那様がこんなに気遣う旧友であるならば、同じくらい偉くて立派な、強いあやかしなんだろうな……と。
○
一方、現世。
隠世冷凍便が届き、
「お、おい真紀。天神屋の大旦那からお中元で高級うなぎが届いたぞ……っ!」
「うそ! 高級うなぎなんて何年ぶりかしら! 今夜はうな重にしましょうよ馨〜」
「だ、だがそれだけじゃねえ。そうめんや高級菓子、食火鶏の炭火焼きもある」
「う、うそ……さすがは金持ち。きっとご夫婦で選んでくださったのね。ねえねえ馨、こっちから送るお中元どうしよう。我が家の財力じゃこれに見合うお返しができないわよ」
「毎年のごとく、あいつの好きな東京ば○なでいいんじゃね? そこに雷おこしと袋ラーメン、現世の安旨ジャンクフード詰め込んどこうぜ。あ、あと大旦那の嫁は料理人らしいから調理用の便利グッズとか買って入れとくといいかも。百円ショップとド○キ行こう」「なんか、お中元っていうより実家からの救援物資みたいね……」