かくりよとうつしよ、二人の鬼嫁



 うつしかくりの間にある〝はざ〟という結界空間にて、世界を超えて秘密のお茶会を催す二人の人間の女の子がいました。

 一人はあおい。もう一人はいばら

 二人とも、いろいろな意味で鬼嫁でした。


葵 「ねえ真紀ちゃん。私たちって主人公じゃない? ヒロインじゃない? お互い現世と隠世で頑張ってるけど、最初からだんが決まってるって意味わからないと思わない? しかも鬼嫁とか呼ばれちゃって理不尽極まりない……って、真紀ちゃん聞いてる?」

真紀「なに葵ちゃん。葵ちゃんの抹茶サブレは最高よ!」

葵 「お土産の感想を聞いてるわけじゃないわ」(と言いつつ自作米粉ドーナツをチラ……)

真紀「じゃあなに? 旦那が役立たずだって?」(米粉ドーナツをガン見しながら)

葵 「大旦那様はお手伝いしたがりだから役立たずってわけじゃないんだけど……むしろお手伝いさせると喜ぶの。はい、ドーナツ」

真紀「喜んで手伝いしてくれるならいいじゃない。うちのかおるはいつも嫌味を言ってくるわよ。でも何かのじゅでもかけられたように毎日決められた家事手伝いをこなしてる。お土産も買ってくるし。……あー。葵ちゃんの和スイーツおいしー」

葵 「はあ〜。真紀ちゃんの旦那さんはマメマメしいっていうか所帯じみてるっていうか、ほんと旦那さんって感じ」

真紀「……まあでも、男子高校生なんだけどね。枯れてるしひねくれてるし」

葵 「いいなー、お互いのことよく分かってるって感じがする」

真紀「そりゃ、千年前も夫婦だったからね。鬼神の大旦那と葵ちゃんはこれから夫婦になるんだから仕方がないわよ。というか……鬼神の〝大旦那様〟って、プライベートではどんな鬼なの? 古い付き合いだけど、イマイチつかみ所がないのよね」

葵 「ん〜。大旦那様はねえ。見た目のわりに口調や普段の性格は穏やかなんだけど、何を考えてるかよく分からないし、変なもの買ってきたり魚屋になったり意味不明な行動ばかりしてる。あと謎にお弁当が好き。……そもそも『あやかしお宿に嫁入りします。』ってタイトルで始まってはや五巻。一巻はタイトル詐欺だった上にいまだそっち方面進んでない! いったい何だったんでしょうねっ! 別にいいけど!」

真紀「あ、そういうの言っちゃっていい感じ?」(葵のお土産ボックスをあさりながら)

葵 「ていうか真紀ちゃんは嫌じゃないの? まだ女子高生なのに、最初から旦那さんが決まってるのって。前世の旦那と、もう一度夫婦になるつもりなの?」

真紀「もちろん。そのためには馨が逃亡する前に早く籍を入れてしまわないとね。あいつは結婚する前から離婚するってうるさいけど……ま、逃すつもりはないわね」

葵 「お、おによめ」(ついでに空になったお土産ボックスをチラッとのぞく)


 隠世で嫁入りを拒む女子大生鬼嫁もいれば、現世でさっさと籍を入れたい女子高生鬼嫁もいるようです。

 いろいろな〝鬼嫁〟がいるのね、と葵はしみじみ思ったのでした。