雨の夕方、鬼の旧友
ちょうど、向かい側からやってきた和傘の集団とすれ違ったようです。
それは
馨 「驚いた。鬼神じゃないか。お前、
鬼神「やあ
馨 「そりゃそうだろ。そもそも前に会ったのは俺が中学生の頃だぞ。この年頃の男子は成長期で、すぐにでかくなるからな」
鬼神「しかしまだまだ、千年前の君には程遠い
馨 「うるさい。今の俺は何の偽りもなくただの男子高校生なんだ。
鬼神「ふふ、汗水たらして労働するのは君らしいけどね。そういえば……さっき、
馨 「は? 愛妻? 誰だそれは、恐妻ならいるけど」
鬼神「
馨 「あいつを大人しいと勘違いしているのはお前くらいだ鬼神。
鬼神「うーん、もしかしたら今も恨まれているのかもしれない。昔、君を隠世に一ヶ月ほど連れて行って、独り占めしたことがあるから」
馨 「ああ……はは、懐かしいな。共に初めて隠世へ行って、随分はしゃいだからなあ。結局お前はそのまま隠世に残り、俺は現世へ戻ったんだったか」
鬼神「あの頃はお互いに若かった。旧友である君とは、もっともっと語りたいところだけど、そろそろ行かなければならない。なんなら今度、うちの宿、天神屋に来るといい。奥方と一緒にね。夫婦水入らずのゆったりした時間を約束するよ」
馨 「鬼神。お前、ボケてるのかなんなのか知らないが、俺たちはまだ結婚なんてしてないからな。夫婦ってのは前世の話で、今はお互いに学生だ。お泊まりなんぞ発覚してみろ。すぐに教育指導が入る。SNSで拡散だ。不純異性交遊、ダメ、絶対!」
鬼神「うーん……難儀な時代に生まれ変わったものだな、酒吞童子よ」
馨 「そういうお前だって、なかなか厄介な人間の娘の
鬼神「はは。ちょっと根性の据わりすぎた娘で、まだまだ嫁入りする気配はないが……。おっと、そうそう。
馨 「へえ……。お前もおつかいなんかさせられてるんだな」
鬼神「そうとも! すぐそこのド○キに行って、業務用のチョコレートを大量に買い込まなければ! ああ……葵は喜ぶだろうか。早く新婚さんになりたい」
馨 「…………(あ、こいつマリッジブルーとか
鬼神「お互い鬼嫁には苦労させられるだろうが、結婚は我慢というぞ、酒吞童子」
馨 「お、おう。……って、そんなのお前に言われるまでもなく、現在進行形で身に
こうして鬼神こと、隠世の天神屋の大旦那は、数人のあやかしのお供を引き連れ、
馨は、懐かしい旧友との偶然の再会のせいで、しばらく立ち止まっていましたが……
やがて、千夜漢方薬局にいる恐妻のことを思い出し、足早に進み出しました。
随分と、雨に