かくりよの宿飯のアニメが始まるらしいので。その三



 ここはかくりてんじん

 私、あおいは、天神屋の中庭で小さな食事処を営んでいる。

 かくりよが舞台のアニメが始まるという知らせを聞いた天神屋は大騒ぎ。

 あかつきがロビーにて、アニメのポスターを貼っている。

「暁、それどうしたの?」

「大旦那様がうつしから持ち帰ってくださったのだ。天神屋でも大々的に告知するようにとのお達しだ」

ぎんさんも張り切っていたけれど、それって、天神屋に結構メリットあるの?」

「ここは現世と隠世を行き来する者も多いからな。天神屋も舞台の一つになっているらしく…なんだったか、聖地巡礼? そういうのでここに来る客もいるとかなんとか」

「へえー」

 なんだかよくわからないが、天神屋のお客が増えるのはいいことだ。

「あ、そうそう。私、銀次さんと考案したクーポン券のついたチラシを、このフロントに置いておきたいんだけど、いいかしら?」

「クーポン券?」

 私は暁に、赤と青のクーポン券がくっついたチラシを見せる。

「こっちの赤い券は、ゆうがおのドリンクが一杯無料になる券。こっちの青い券は、今一押しの塩唐揚げ定食が値引きされる券よ。両方同時に使うこともできる、かなりお得なクーポン券なの」

「ほお〜……塩唐揚げ……。もちろんフロントでも配ってやる。お客様のチェックインの時にでも案内してみよう」

 暁はそう言いながら、私にこそこそと。

「ところでそれは、一枚くらいなら天神屋の従業員も使用可能なのか?」

「え? あはは、もちろん一枚くらいならいいわ。あんた唐揚げ好きだものね」

「生粋の鬼門の地のあやかしなだけだ。鬼門の地のあやかしは皆とりにくが好きだからな」

「でも毎日唐揚げばかり食べちゃダメよ。健康に悪いし」

「ふん。俺はこれで健康志向だ」

 だが、暁はどこか思うことがあるようで、

「……しかしこれからますます忙しくなる。疲れが極まると好きなものばかり食べようとするからな。葵、俺が偏った食事をしないよう、ちゃんと見張っていてくれ」

「ええ、そこは任せといて。天神屋のみんなの健康は、私が管理するわ」

 どん、と胸を叩く私。

 健康的でスタミナのつく天神屋の従業員限定のメニューでも、考えてみようかな。