かくりよの宿飯のアニメが始まるらしいので。その一



 ここはかくりてんじん

 私、あおいは、天神屋の中庭で小さな食事どころを営んでいる。

「あれ、おおだん様、出張から戻って来たの? ていうか何してるの?」

「やあ葵。見てみろ、僕はうつしでテレビを買ってきたんだよ。みんなでアニメを見ようと思ってな。大会議室に設置を試みているところだ」

「アニメ? なんでアニメ? ていうか隠世って現世の電波届くの!?

「現世で隠世を舞台にしたアニメが始まるらしいのでな。電波は……ちょっとはちよう権限を行使して……届くようにする……」

 大旦那様は、目をらしながらもにょもにょと。

 要するにちょっといけないことなのね。

「あ、葵、現世でお土産を買ってきたんだ。コンビニスイーツというやつだよ。食べるかい? 懐かしいだろう」

「なんかあからさまに話を逸らしたわね」

 しかし私は、懐かしのコンビニスイーツに夢中になる。

 ロールケーキや、カップ入りチーズケーキなど。

「そうそう。この手の一切れで売られているロールケーキは、いかにもコンビニスイーツという感じよね! もらったフォークでつつきながら食べるのよねえ」

「最近、コンビニスイーツもあなどれないと聞く。味も良く、様々な場所で食べやすいよう、工夫されているらしい。現世の人間たちの知恵だな」

「そうねえ。手作りのお菓子はもちろん特別な美味おいしさがあるけれど、コンビニの、気楽に買って気楽に食べれる感じも、私は好きなのよね。これなんて、チーズケーキをキューブ状にカットして、カップに詰めているわ。付属のくしで食べるのよね。小腹がいた時に、少しずつ食べられるの」

「現世の人間たちは忙しいからな。食器を使わずに買ったものだけで軽食が取れるのは、確かに重宝する。僕も現世に行ったらコンビニによく行くよ」

「大旦那様がコンビニにいる様子は、あまりイメージできないわね……」

「ホットコーヒーをよく飲む」

「ああ、コンビニのコーヒーって結構美味しいわよね……お手頃だし」

 とかなんとか話をしながら、私と大旦那様はまったりコンビニスイーツをたんのうする。

 そこにチビがやってきて、カップに入ったキューブ状のチーズケーキを一つ取り出し、その場に座ってかじり始める。

「で、アニメの話しなくていいんでしゅか〜?」

「あ……」

「結局ぐだぐだ、食べ物の話ばかりでしゅ〜。これだからダメなんでしゅ〜。もっとやる気出すでしゅ〜」

 私と大旦那様はチビに言われて、そろっとお互いに目配せ。

 でもやっぱり、コンビニスイーツに手を伸ばす。そして、

「大旦那様、アニメの宣伝頑張ってね。宣伝費ガンガンにかけて」

「う、うん。そこはびゃくに掛け合ってみるよ……」

 私は、ちょっとだけ白夜さんを怖がっている大旦那様の背をポンとたたいたのだった。