「……これで、マティアス殿は正式にウルフ侯爵家当主となった。おめでとう」
──バロウ公爵のその言葉を待っていたかのように、教会の中はワッという拍手喝采に包まれたのだった。
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「やれやれ……ようやく面倒事が終わって一安心だな」
あ~だるかった、とぼやきつつ俺はティーカップに砂糖を入れ、スプーンで混ぜる。
〝月狼の戴日〟の後日──俺とレティシア、そしてマティアスとエイプリルの四人は、シャノアの喫茶店に集まっていた。
一度は爆破魔法で半壊状態となったシャノアの喫茶店だが、無事に修復が完了。
以前と同じように、城下町のお客さんたちが集って賑わいを見せている。
ちなみにであるが、店の修復費用は全てマティアス──というかウルフ侯爵家が出資してくれた。
〝バカ兄貴のケツ拭きは俺がしないとな〟というのがマティアスの弁。
まったく、兄より優れた弟ここにありだな。
ともかく──
「これで思う存分イチャイチャできるな、なあレティシア!」
「ええ、そうね。でも流石に二人の目の前でイチャイチャするのはよしましょう、アルバン」
レティシアは優雅に紅茶を口へと運びながら、落ち着いた口調で俺をなだめる。
むう、レティシアが言うなら仕方ない。
「……今回、二人には色々世話になっちまったな。オードラン男爵、レティシア嬢、改めて礼を言わせてくれ」
反対側の席に座るマティアスが、なんとも申し訳なさそうな表情でそう切り出す。
エイプリルのその言葉に続き、
「わ、私からもお礼を言わせてください! レティシア様には本当に色々教えていただきましたし、オードラン男爵には命を救っていただいて……か、感謝してもし切れません!」
そう言って、バッと頭を下げる。
俺は「ハァ」と小さく息を吐き、
「勘違いするな。俺はお前たちのためにやったんじゃない。あくまでレティシアのためにやったんだ。だから礼を言われる筋合いなんぞない」
「……そう言ってもらえると、助かるよ」
苦笑するマティアス。
何故かレティシアも俺の隣で「クスッ」と笑い、一瞬こちらから顔を背ける。
……あれ?
俺、なんかおかしなこと言ったか?
レティシアに喜んでほしくてやったのは事実なんだが?
だってレティシアが二人を助けるって言うから……。
いやまあ、好き好んで見捨てたくはないと思ったりはしたけどさ……。
なんとも煮え切らない俺を余所に、レティシアは改めてマティアスたちへと目を向ける。
「ところでマティアス、無事にウルフ侯爵家の跡を継いだのだから、学園に戻ってくるのでしょう?」
「ああ、勿論だ。今回の恩はしっかりと返させてもらう」
マティアスはハッキリと声に意思を込め、
「俺にできることならなんでも言ってくれ。これからもFクラスメンバーの一人として……アンタらには忠誠を誓うよ」
そんな答えを返した。
それを聞いたレティシアは満足そうに笑って、ティーカップを口へと運んだ。
「そう、頼りにしているわ」
「え? お、おいおいレティシア! 頼りにするのは俺一人で十分だろ!?」
「そういう意味で言ったんじゃないの。ほぉら、妬かない妬かない」
むすっとする俺の頬を優しく撫でてくれるレティシア。
うぅ……妻の手がスベスベで気持ちいい……。
彼女は続けて、
「ああ、そうだわ。それよりエイプリル、あなたに聞いておきたいことがあったのだけれど」
「? は、はい、なんでしょう?」
「ずっと気になっていたのよ。あなたって、どこのクラスに所属しているの? これまで見てきたC~Eクラスにあなたは在籍していなかったと思うのだけれど……」
何気ない感じでレティシアは尋ねる。
すると、
「あ、はい! 私は〝Fクラス〟に在籍しています!」
「「「……え?」」」
俺、レティシア、マティアス三人の声がハモる。
「ま、待って頂戴……? Fクラスは私たちのクラスであって……ええっと……」
「あっ、そういえばお伝えするのをすっかり忘れていました!」
エイプリルはハッと思い出したかのように口を開け──
「私、〝二年生〟なんです! 二年のFクラスに在籍しているので、皆さんとは学年が一つズレますね!」
──
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「「「え…………ええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇッッッ!?!?」」」
──速報。
これまで同級生だと思っていたエイプリルが、実は俺たちの先輩だった件。