舞踏会は絶好のタイミング
──〝月狼の戴日〟まで、あと残り一週間。
マティアス派とナルシス派の優劣は相変わらずマティアス優勢で覆ることはなく、このままいけばアイツがウルフ侯爵家当主ってことで決着がつくだろう。
マティアス派の貴族たちの間にも戦勝ムードが漂っており──家督相続を前に、舞踏会が催されることとなった。
ウルフ侯爵家……というかマティアスが主催する、贅を尽くした貴族のための舞踏会。
会場には紳士淑女、老若男女問わず大勢の貴族たちの姿。
まだ幼い貴族の子供たちも招かれており、キャッキャとはしゃいでいてなんとも穏やかなムード。
で、その舞踏会には当然Fクラスのメンバーも招待されることになったワケで──
「美味ぇですわ! 美味ぇですわ! このお料理、とってもおパンチが利いてましてよ!」
「エ、エステルさん……! も、もう少し落ち着いて食べましょう……!? 貴族の皆様に注目されちゃいますからぁ……!」
提供された料理がよほど舌に合ったのか、バクバクと口に放り込んでいくエステル。
そんなはしたない彼女をアワアワとたしなめようとするシャノア。
エステルはこういう舞踏会に慣れてる──というか性格柄周りの目をあまり気にしない奴だからな。
逆にシャノアは平民出身で舞踏会そのものに慣れてないから、まるで借りてきた猫のようにオドオドとしている。
他にもローエンは騎士家系出身の貴族と話をしていたり、ラキは裕福そうな若い貴族に唾を付けようとしていたり……皆、思い思いの行動を取っている。
ちなみに、Fクラスメンバー全員が普段とは異なる正装に身を包んでいる。
一応、名のある貴族たちが集まるパーティだからな。
王立学園の生徒として、身なりには気を付けんといかんワケだが……。
「面倒くせぇ……早く帰りてぇ……」
俺は会場の隅で、壁を背にブツブツと呟いていた。
ぶっちゃけて言うと俺、こういう貴族の社交界って嫌い。
だって面倒くさいし堅苦しいから。
貴族たちと取り留めのない会話をして踊って無駄に高級なワインを呷る……なんてことするくらいなら、部屋に籠ってレティシアとイチャイチャしてた方が俺にとっては百億倍は有意義だ。
はぁ……つまんな……。
なんて俺が思っていると、
「アルバン、随分と退屈そうね」
俺の下にレティシアがやってくる。
彼女も普段とは異なる正装のドレスを着ており、いつにも増して華やかだ。