さらに魔力を込めると、力に耐えきれなくなった魔法石が音を立てて割れた。

 石が粉々に砕けた時、リックのまぶたと唇が微かに動いた。

「…………ヘルミーナ様には、いつも驚かされる……」

 やや呆れたような、それでいて優しい声が聞こえた瞬間、誰もが声を詰まらせた。

 青褪めていた顔色に血の気が戻り、ゆっくりと目を開いたリックは、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

 ──ああ、いつものリックだ。

 ヘルミーナは唇を震わせながら、「今回は、貴方の……っ、リックのせいではありませんかっ!」と、声を張り上げていた。

「お兄様っ!」

 息を吹き返したリックに、メアリは全力で抱きついていた。泣きじゃくるメアリの頭を引き寄せ、リックは何かを実感するように瞼を強く閉じた。カイザーは驚きを隠そうともせず、ランスはうずくまって嗚咽を漏らしていた。

 ……生きていてくれた。

 大切な仲間を、友を、失わずに済んだ。

 ヘルミーナの心は喜びで打ち震えた。抱き合う兄妹を、自分も両手を広げて抱きしめた。両腕から伝わる確かな温もりに思わず破顔する。

 その直後、視界が揺らいだ。おかしいな、と思った時には目の前が暗転していた。

「ミーナ嬢っ!」

 遠のいていく意識の中、カイザーの声が聞こえたような気がする。けれど、ヘルミーナの記憶はそこで途切れた。

 穏やかな風が金色の髪を揺らしても、ヘルミーナがすぐに目を覚ますことはなかった。


 間もなく第二騎士団が小屋に駆けつけた。

 彼らが全てを把握するのは難しいだろう。だが、事実は包み隠さず共有され、それは当然王室にも伝えられた。

 気を失ったヘルミーナはカイザーに抱えられ、彼らを乗せた馬車は人知れず、静かに王城へと戻っていった。

 一方、彼らが去っていったケーズ村では、後世まで語り継がれる奇跡の物語が生まれた。それからほどなくして、光属性の噂が国中に広がっていくことになった──。