幕間七 シロップ
私の名前はシロップと申します。
デスクストス公爵家のメイドを務めております。
私の母がリューク様のお母様専属メイドとして働いていました。
そのおかげで、幼い頃からリューク・ヒュガロ・デスクストス様の専属メイドとして仕事をさせていただいております。
リューク様はお可哀想な方なのです。
お母様はリューク様を産んだ後に体調を崩されて、そのままこの世を去ってしまわれました。
それからデスクストス公爵様はリューク様に無関心になり、一度も会いに来られたことはありません。
五歳の誕生日を迎えた日も、家族の誰もいらっしゃらなくて、数名のメイドと執事長だけでささやかなお祝いしかできませんでした。
その席では食事を楽しんで居られましたが、食事の途中で急に倒れられて高熱を出されたのです。
ですが、翌日には熱こそあるものの、なんとか体調を戻されて私は安心しました。
メイドの中には心無い人もいて、リューク様は暗殺されそうになり、毒を盛られたのではないかという人もいました。
毒は恐ろしいモノです。
人の容姿すら作り替えてしまうほどだと聞いたことがあります。
私は母からリューク様を守る戦闘技術を学びました。
ですが、知識面ではまだまだ未熟です。
犬獣人と通人のハーフとして生を享けました。
亜人種はアレシダス王国では蔑まれる対象なのです。
通人至上主義を唱える教会の意向が王国中に蔓延しているからです。
幼い頃に母と外に買い物に出かけた時に感じた蔑む瞳は今も忘れることはありません。
デスクストス家の中では誰も私や母を蔑んだ目で見ることはないので、私にとっては国よりも公爵家の方々の方が大切です。
専属メイドとして、お世話をすることになったリューク・ヒュガロ・デスクストス様は、生まれて間もない頃。
私の尻尾を見て、それはそれは嬉しそうな笑顔を浮かべておられました。
いつも私の尻尾に夢中になっておられていました。小さくて、可愛くて、絶対に私が守るんだと固く誓いました。
五歳になられた誕生日に高熱を出されたときは、死んでしまうのではないかと心配で夜も眠れませんでした。
高熱が治まってからも、度々体調を崩されることが多くなったリューク様がとても心配です。
ですが、いつも笑顔で私に甘えてくれるので本当に可愛い天使なのです。
今日もリューク様が私に本を読んでほしいとお願いをしてきました。
私としては犬が主人を待つ忠犬はっちゃんという絵本がオススメでしたが、リューク様が選んだ本は魔導書でした。
魔法の基礎と言われるタイトルの魔導書を選ばれ、五歳児が興味を持つには、あまりにも難しい本だったので驚いてしまいました。
「シロップ。ご本読んで」
「はい。リューク様」
可愛いリューク様のお願いです。
読まないという選択肢はないのですが、大丈夫でしょうか?
「こんな難しい本でいいのですか?」
「うん。ボク、魔法を使ってみたいんだ」
ふふふ、理由がとても可愛らしくて私の杞憂だったようです。
五歳であってもリューク様は男の子なのです。
魔法や剣に憧れるのは当たり前のことですね。
「リューク様も男の子ですね」
私はリューク様が生まれる前から文字や計算、メイドとしての作法を母からミッチリと指導を受けました。
それはリューク様のお世話をするにあたり不足があってはならないからです。
魔法の基礎は難しい内容で、読んでいても私ではあまり理解が出来ませんでした。
難しい文字も多くありましたが、読むことに問題はありません。
何よりもリューク様が、「シロップは文字が読めて凄いね!」褒めてくださいました。
ふふ、我が主様は可愛いだけでなく、女心もわかっているのです。
それにしても魔法の基礎とは小難しいことばかり書いていて、何が言いたいのでしょうね。
魔力など、その辺に普通に漂っています。
魔法だって、生活魔法として習うもので十分です。魔法の基礎と言いながら、私でも知っていることばかりなので基礎以下だと思います。
あらあら、私がご本を読んでいる間に眠ってしまわれました。
子供らしいふっくらとした頬を優しく撫でます。
目元はお母様に似てキリっとした凛々しいお顔をされているのに、ほっぺがふっくらとしていて本当に愛らしい。
私は少し重くなられた我が主様を抱き上げてベッドへ運んで差し上げました。
母から習ったのは、何もメイドとしての作法だけではありません。
いつか現れるかもしれないリューク様の敵を葬り去る力を私は日々鍛えております。
「あなた様は必ず私がお守りいたしますね」
愛しい我が主様の寝顔を眺めて、幸福感を充電した私はお部屋を後にしました。
六年の月日は、人を大人へと成長させるには十分な時間だと私は思います。
私の身長は二年前から変わってはいませんが、我が主様であるリューク様は身長が伸びて、もうすぐ私と変わらないほどまで成長されます。
十一歳、男の子として体の成長が促されて、身長が伸び、顔つきが変わっていかれております。幼い頃はぽっちゃりとして可愛らしかったリューク様。
最近はお肌が弱いということで始めた洗顔のお陰なのか、綺麗な肌と整った健康的な肉体に成長されております。
我が主様もそろそろ声変りを始めるはずなのですが、我が主様は他の人とは違う成長を遂げました。
「シロップ、どうかしたの?」
私の目の前では気持ち良さそうなクッションに、全身を預けながら本を読んでいる美少女がいます。
いえ、美少女のように愛らしく成長されたリューク様がおられます。
声変わりをしておられないので、まだ声が高く聞こえます。
そして、部屋の中ではリューク様を乗せて、クッションが浮いているのです。
我が主様じゃなかったらメッチャツッコミたい!
クッションが空中に浮いています。
クッションに我が主様が寝転がるようにして浮いています。
大切なことなので二度言います。
「どうやっているのですか?」と聞いたこともあります。
しばらく我が主様は思考して、可愛く凛々しく成長された顔をコテンと傾げて、
「シロップも乗る?」
「えっ? 乗っていいのですか?」
「全然、いいよ」
恐る恐るクッションの上に乗りました。
それは今まで感じたこともないほどフワフワしていて、なんと形容すればいいのかわからないほど心地よい乗り心地でした。
説明を誤魔化されました。
私は一つの結論を出すことにしました。
これまで見たこともないことを成し遂げた我が主様は稀代の天才であると……。
クッションの上は思考することが馬鹿らしくなるほど心地よかったです。
あのクッションはどこに売っているのでしょうか?
「こんな心地よい物は初めてです」
「そう? よかったね」
「はい。あっ、リューク様。もう一つお聞きしたいのですが」
「な~に~?」
「どうしていつも本を読んで寝ているだけなのに、体が引き締まっているのですか? お食事はちゃんと取られていますよね?」
これも不思議です。
確かに美容については、この六年で共に化粧水や洗顔などしてきました。
他のメイドたちからは「シロップ綺麗になったよね? 自分だけ何しているの?」と聞かれるようになりました。
高い石鹸を使って、毎日リューク様と共に洗顔をしているおかげとは言えないので、ただリューク様のおかげですと答えています。
綺麗なのは分かるのです。
ですが、運動は日光浴のときに散歩をしていらっしゃるのを見かける程度です。
健康には良さそうではあるのですが、決して身体は引き締まったりしません。
だけど、我が主様の身体が引き締まるほどの運動をしているのを見たことがないにもかかわらず引き締まっております。
これでもメイドとして、我が主様の剣であり、盾として護衛を務めております。
日々、私自身は鍛錬を忘れてはおりません。
だからこそ、この肉体を維持できていると自負しております。
ですが、身体が成長するにつれて我が主様の身体は引き締まっていくばかりで、これほどの成長を遂げるのは絶対におかしいです。
寝ているだけのはずなのに、着替えの際に見た腹筋は割れていました。
「う~ん。それは教えてあげてもいいかな」
クッションから降りた私へ「見ていて」と我が主様が魔力を練り始めました。
最初は何をしているのか分かりませんでしたが、それも質問して知りました。
我が主様は自身の掌の間に魔力の塊を作り出せるそうです。
「シロップ、いくよ」
私は、本物の天才を見ました。
目の前には、達人級の武闘家がおられます。
格闘技の形を実演する我が主様の姿は、その道を極めた者と同じ動きをしていました。
私も自身を鍛えているからこそ分かるのです。
今の我が主様に決闘を挑んでも勝てない。
投げ、打ち、払い、殴り、蹴り、極めなど様々な動きを組み合わせた総合的な格闘術。
それは何年も鍛錬を積んだかのように綺麗な形として完成されていました。
体術をしたこともない我が主様が、体術の達人だったのです。
「えっ? えっ? えっ?」
目の前で起きている出来事が信じられませんでした。
あれほど動くことが嫌だと言っていた我が主様が動いている。
それも達人クラスの動きを再現して見せている。
「どういうことですか? 動かれるのは嫌いだったのでは?」
呼びかけても一心不乱に体術の形を披露する我が主様。
一通りの形を終えると動きが止まる。
「どうだった?」
先ほどまで真剣な瞳をしていた我が主様は、いつもの眠そうでやる気の無さそうな瞳に戻られました。
凜々しい瞳にドキッとして、今のだらけた瞳も可愛くてドキッとしてしまいます。
「凄かったです。リューク様がご自身でここまで努力していたなんて驚きです!」
「努力か、違うんだけど……、まぁいいか」
リューク様は本を読んでいたときよりも、眠そうな顔でクッションにもたれかかりました。
「違う? 何が違うというのですか? あれほどの動きは、本物の格闘家の方でも見たことがありません!」
「うん。まぁそうだろうね。僕が生み出した魔法の一環でトレースっていうんだ」
「トレース?」
クッションで浮くだけでも凄いのに、さらに新しい魔法を生み出していらっしゃるなど、やっぱり天才以外の何者でもありません。
「うん。ボクが意識を失うことで発動できるんだ。その間に脳が見たことある動きを真似る魔法なんだよ。ボク自身は動いている意識はないから努力はしていない。だけど、身体は鍛えられるし、自然に体が覚えてくれるから便利なんだよ」
我が主様から説明を受けても、私には一ミリも理解できませんでした。
頭の出来が違うのです。
ただ、一つ理解できたのは、我が主様は天才です!
十一歳という歳で、我が主様は魔法の神髄を理解されておられるのです。
「う~ん。説明してもわからないかな? まぁ、知識チートの一つだから理解されないよね。そうだ。そろそろ無属性魔法もある程度使えるようになったから、属性魔法の検査をしてもらいたいんだけど。お父様に伝えといてくれる?」
我が主様はマイペースな方です。
この六年で見た目だけでなく、魔法の実力も高められました。
それは私では到底理解出来る領域ではありません。
きっと我が主様は大きなことを為される人であることは理解できます。
「はい! かしこまりました!」
ですので、私はどこまでも我が主様についていきます。
◇
人の成長は早いものです。
我が主様がアレシダス王立学園に入学されてしまいました。
入学式の日に、ご主人様は私を抱きしめてくださいました。
「ありがとう、シロップ。君には感謝しても仕切れないほどの恩がある」
「リューク様!」
ずっと守ると決意したご主人様は、いつの間にか私よりも背が高く逞しくなられておられました。
「ボクを信じて待っていてくれるかい?」
「信じてお待ちしております。寂しいです」
「ありがとう。ボクも寂しいよ。家のことを頼むね」
「かしこまりました。お帰りを心からお待ちしております」
《忠犬はっちゃん》のように待ち続けております。
「学園を卒業したら、カリンと結婚するから、その時も付いてきてね」
「よろしいのですか?」
結婚したら、私はいらないと捨てられてしまうと思っておりました。
だから、ついて来ていいと言われて嬉しいです。
「うん。カリンが許してくれるなら、ボクの子を産んでほしい」
「えっ!」
私がリューク様の子を?
「ふふ、着いたみたいだね。それじゃ新生活に行ってくるよ」
ご主人様は馬車を降りて学園の門を潜って行ってしまいました。
「リューク様、行ってらっしゃいませ」
お姿が見えなくなるまでお見送りを続けました。
主様が屋敷からいなくなってしまいました。
主様は自分のことを自分で全て出来る方です。ただ、面倒くさがりなところがあります。
毎朝のルーティンだけは自分で動かれるのですが、本を読むためにクッションに乗るとトイレに行くのも面倒だと言います。
本当に一日中寝て過ごすこともあるんです。
ですから、学園で授業中に寝ていないか、とても心配です。
私ならば、主様が起きる時間にお声かけして、お着替えや歯磨きも膝枕でしてあげられるのに、大丈夫でしょうか?
毎日、主様がいないことばかり考えてしまいます。
お屋敷のお仕事はちゃんとしています。
ふと、主様が呼んでくれるのではないかと耳を澄ませます。
学園に入る前であれば、いつもお部屋の近くにいて呼ばれるのを待っていました。
呼ばれない……。
寂しくて、つい我が主様の部屋へ毎日いないのか確認に行ってしまいます。
そして、いつもいない主様を確認して、私の尻尾は元気を無くすのです。
「シロップ、あなたは毎日何をしているのですか?」
「お母様」
「あなたはリューク様専属メイドです。リューク様の屋敷を守るのがあなたの役目でしょ? リューク様を求めてどうするのです」
「ですが……、寂しいのです」
「ふぅ、まだ離れて三ヶ月ほどではありませんか、わかりました。屋敷のことは私がやってあげます。あなたは気分転換に行ってきなさい」
「気分転換?」
私は主様中心の生活だったので、個人的な気分転換は剣術以外にありません。
それ以外だと、主様を乗せた馬車を操るぐらいです。
「そうです。リューク様はアレシダス王立学園でご自身を研鑽されていることでしょう。ですから、あなたも研鑽なさい」
お母様からは様々なことを教えてもらっています。
ですが、今回は何を言いたいのか全くわかりませんでした。
「何をすれば?」
「そうですね。研鑽という意味であれば、レベル上げが一番でしょう。メイドとしてはあなたにほとんど教えてしまいましたからね。リューク様を守るための力を強くするのもいいでしょう。冒険者登録して魔物を狩ってきなさい」
お母様から戦闘技術は学んでいましたが、確かに実戦経験が私には乏しいです。
もしも、主様が対応できない悪漢に襲われた時、私がお守りしなくては!
「わかりました! お母様。私、レベル上げに行ってまいります」
屋敷のことはお母様に任せれば大丈夫です。
リューク様、私は強くなります。
王都の冒険者は、魔物との遭遇が少ないそうです。
レベルアップには適していないということで、少しばかり辺境へ移動しました。
年末には主様が帰って来られるので、それまでには帰らなければなりません。
帰ってきた主様に強くなったねと、褒めてもらうためにレベルアップに勤しみました。
辺境は亜人への迫害は少なかったです。
王都で感じる蔑むような視線は感じることなく、皆さん亜人など関係なく魔物の脅威から互いを助け合う仲間として力を合わせていました。
ゴブリンやオークなどが畑を荒らしに来るので、毎日大量に狩らなければ村への被害が多くなってしまいます。
私がやってきたマーシャル領はどこに行っても魔物の被害を受けていました。
大量の魔物を狩る日々は、レベルアップに困ることはありません。
私が魔物を倒すと村の人たちはとても喜んでくれるので楽しいぐらいです。
「ねぇ、シロップお姉ちゃん。ずっとここに居てくれないの?」
村の子供たちは可愛くて、私も彼ら、彼女らを守ってあげたい気持ちになります。
ですが……私の心には決めた方がいるのです。
「ごめんなさい。私は待っているご主人様がいるのです」
「ご主人様?」
「はい。その方はなんでもご自分で出来るのに、何にもしようとしないんです」
「ええ~、自分で出来るのにしないの? 変だよ。ダメな人だよ」
「ふふ、そうですね。ですが、私は求められている気がするので、嬉しいのです」
「え~、シロップお姉ちゃん。ダメ男が好きなの? 大人って、変なんだね」
「ふふ、主様はダメ男ではありませんよ」
「ひっ!」
主様の話をしたことで帰りたくなってしまいました。
それに五ヶ月が経ち、そろそろ学園もお休みになっているはずです。
主様を出迎えるために、屋敷にそろそろ帰りましょうか?
マーシャル領で魔物狩りをしたことで狩猟本能とでも言えば良いのでしょうか?
気持ちがスッキリして、心にも余裕が出来ました。
私の成長を主様に見ていただきたい。
褒めてくださいますかね?
「帰るとしましょう」
私はマーシャル領を後にしました。
「あら、おかえりなさい。シロップ」
私が屋敷に戻ると、お母様が出迎えてくれました。
すでに、マーシャル領から王都までの距離は遠いため、帰ってくる間に年末近くになってしまいました。
急いで主様を出迎える準備をしなくてはいけません。
「お母様、今日までありがとうございます。私は主様に甘えていました。やはり自立することも大切ですね」
「ええ、そうね。あなたも強くなって成長してきたみたいでよかったわ。そうだ、あなたが留守の間に二人ほど臨時メイドを雇ったのよ」
「臨時メイドですか? 大丈夫なんでしょうか?」
「カリン様の推薦だから、大丈夫よ」
「カリン様が?」
「ええ、何でもアレシダス王立学園が休みの間だけ、メイドとして雇ってほしいそうよ。リューク様のご学友で、仲良くしている子たちだそうだから、あなたもちゃんとしないとダメよ」
私は屋敷用のメイド服を纏って身を引き締めました。
「この子たちよ」
お母様が連れてきたのは、可愛らしい二人の女性でした。
「よっ、よろしくお願いします。ミリルです」
「よろしくにゃ! ルビーにゃ」
主様のご学友である少女たちは、とても可愛らしく。
一緒にアレシダス王立学園に通えて……、羨ましいです。
「リューク様専属筆頭メイドのシロップです」
「筆頭って、あなた肩書き増えてるわよ」
お母様が何か言っていますが、気にしません。
「主様のご学友であろうと、メイドとして働く以上は仕事をちゃんとしていただきます。よろしいですね?」
「「はい」にゃ」
私は二人にメイドとして仕事を教えることにしました。
ミリルさんは、少しドジなところはありますが、物覚えが良く、整理整頓に優れていました。ルビーさんはお調子者なところはありますが、一つ一つの仕事は丁寧で窓ふきやお風呂掃除、洗濯などとバランス良くできて優秀でした。
「カリン様、お久しぶりです」
二人の仕事を教えるのも一段落した頃、カリン様が訪問されました。
「シロップ。久しぶりですね」
「はっ、前回は不在にしておりまして、すみません」
「いいのです。それよりも今日は、リュークが帰ってくるんですよね?」
「はい。主様から帰宅の連絡がありましたので」
「ふふ、一緒に出迎えようと思ってまいりましたわ」
カリン様は主様の婚約者様です。
私の主になられる方なので、私よりも上です。
「主様も喜ばれると思いますよ」
そっと、カリン様が耳元に口を寄せてきました。
「リュークから、シロップを妾にしたいと言われました。シロップは良いですか?」
主様は本当に私を大切にしてくれています。
顔が熱くなるのを感じます。
「ふふ、言葉は不要ですね。一緒にリュークを支えましょうね」
カリン様は偉大です。器の大きい方で、私のことを受け入れてくださいました。
「あっ、馬車が来ましたよ」
私は自分でも驚くほどの速度で馬車の前に辿り着くことができました。
「やぁ、シロップ。ただいま」
誰よりも早く主様を出迎えることが出来ました。
「お帰りなさいませ、リューク様。お帰りをお待ちしておりました」
「尻尾が凄く動いているね。喜んでいるのかな。ボクもシロップに会いたかったよ」
主様は凄い人です。私の気持ちがすぐに分かって頭を撫でてくれました。
あっ、主様は学園に入る前よりも身長が伸びています。
学園に入る前は同じぐらいだったのに、私よりも高くなられたのですね。
「夜にゆっくり話そうね。今はカリンもいるみたいだから、みんなでお茶でもしよ」
「はい! ご用意いたします!」
久しぶりに主様から命令を頂きました。
こんなにも嬉しいのですね!
私は幸せです。