第十五話 魔法実験

ダンジョンから持ち帰ったレアメタルが目の前に置かれている。

ボクの心はワクワクと浮き足だっていた。

新しく手に入れたオモチャを、どのようにして遊ぶのか。

ワクワクウキウキして、心が落ち着かない。

早く遊びたい。早く作りたい。

今のボクはそんな気持ちでいっぱいになって、他のことが手につかない。

レアメタルは、魔法を付与する鉱石として、最も優れた貴重な素材として知られている。

武器を作るならミスリルが有名だが、レアメタルは特殊な魔導器具を作る際に、高性能な心臓部として魔導器具の核になる。

「それじゃ早速やりますか」

レアメタルの使い方は難しくない。

直接、魔法陣を書き込めば使うことができる。

ただ、難しいポイントとして、レアメタルは魔法陣の重ね書きができる。

どれだけ多くの魔法陣を編み込めるのかは、製作者の技量にかかってくる。

王都中を探しても、ドワーフの鍛冶師をボクは見たことがない。

精霊族である彼らは、鍛冶仕事や付与魔法に長けていて、魔導器具に書き込む魔法陣を編み出したのは彼らだと言われている。

彼らが近くに居てくれたなら、すぐにでも配下に迎えたいと思うほどだ。

会ったことがないので、今回は自分でやるしかない。

編み込む魔法陣は綺麗で正確に描かなければ魔法は発動しない。

武器や魔導器具に、どうやって魔法陣を付与するかという話になるわけだ。

魔法を使う際に目に見える形で、魔法陣は浮かび上がっている。

それは放つ際に一瞬だけ浮かんでくるので、魔法陣をその一瞬で覚えなければならない。

覚えるのが難しいこともあるが、強力な魔法になれば、魔法陣も複雑になるため魔法陣の転写をすることが至難の業とされている。

複雑な魔法陣を綺麗に転写することは不可能に近い。

そのため、難しい魔法が世の中に広がらない理由として、転写が不可能だからだ。

無属性魔法の中でも、生活魔法や強化魔法などは魔法陣も単純な部類に入るので、転写が成功して生活魔法の一環として利用されている。

だが、属性魔法に関しては、複雑性が増すため、固有魔法の転写が研究されている。

《水》や《火》などの、属性魔法の中で使い手が多い魔法しか研究は進んでいない。

使い手が少ないということは、それだけ研究材料が少ないということになる。

それでも、《遠見》を研究したモニターや、《鑑定》を利用したマジックウォッチが作り出されているだけでも凄いことだ。

そういう研究を好んでしているのが、リサーチ先生だ。

では、ボクがレアメタルまで採ってきて、何をしようとしているのか。

答えから言えば、バルにボディーを与えるためだ。

現在は、魔力を送り続けることで形を維持している。

怠惰なボクにとって、バルに魔力を送るという労働をしているわけだ。

ラクそうに寝ているように見えて、魔力を消費し続けている。

この矛盾を解消したい。

怠惰とは、自分では何もしないことだ。

ただ、それではボクがヒマになるので、楽しいことはしたい。

だけど、身の回りの世話や魔法は簡略化したい。

それ以外の楽しいことは全部したい。

いいとこ取りの人生を歩みたい。

魔法の簡略化の一つとして、バルのフォルムチェンジ、統計学、メモリー機能、再生機能などを付与したボディーを作りたいと考えている。

魔力を充電式にする魔法陣と、命令を理解できるように精神をボクと繋げたい。

考えるだけでも、多くの魔法陣を書き込まなければならない。

バルにボディーを与えることで、ボク自身の魔力消費を減らして、労働をしないようにしたい。

「いきなりレアメタルを使っても失敗することは目に見えているからね。まずは、シロップに取り寄せてもらったミスリルで試してみよう」

シロップには事前に、欲しい魔法陣の調達と、ミスリルを大量に購入してもらっていた。

鍛冶師や魔導器具師が何年もかけてたどり着く領域へ。

それがいったいどれだけの期間で成功できるのかわからない。

バルの魔法陣は、信頼する者以外には見せられない。

だからこそ、信頼する鍛冶師がいないなら、依頼することもできない。

「バル、魔法陣を記録しろ」

最初に始めたのは、紙へバルの魔法陣を転写する作業だった。

多重魔法陣付与になるので、一つ一つを間違えるわけにはいかない。

ボクが意識を覚醒させて、左手に魔法陣を浮かび上がらせる。

バルがボクの右手を使って、魔法陣を転写する。

元々、魔力を掌の間で練って身体に取り込むようにしていた。

左手一本で実現する難しさを感じたので練習をしていた。

ボクは、バルを出現させた状態で、魔法陣を組み上げて、バルのメモリーに記録させる。

バルは、ボクの脳に記録された格闘技の技術を学習して記録した。

その応用で、魔法陣をボクが作り出して、バルが記録する。

ボクが自分では覚えられない。

漠然とした画の記録を細部まで覚えてはいられない。

芸術家なら、自分の作品を細部まで覚えていられるのかもしれない。

それでも同じ絵師が全く同じ絵を描いたとして、百パーセント同じとは言えない。

ボクは絵師ですらないから絶対にできない。

より確実な方法を選んだ結果、バルを使うことにした。

練習で、バルに魔法陣を描かせたが、完璧だった。

魔法陣を描いたミスリルに少しだけ魔力を流すと、小さなバルが生まれた。

「よし。完璧だ」

魔法陣から生まれたバルは、魔力が切れると消滅した。

魔力を消費し続ければ、魔法は消えてしまう。

普通に魔導器具を使う人たちも、魔力を流すことで使うことができる。

使いながら魔力を消費する物と、一日分の充電を行って使う物が存在する。

《充電》の魔法陣は、シロップが手に入れてくれた。

何度も充電魔法を使えるか試しているが、一日分の充電しかできない。

充電の容量を拡大させるための方法を考える実験が必要になる。

「リューク様、そろそろ起床のお時間です」

夢中で実験に明け暮れていると、リベラの声が聞こえてきた。

「あっ、ごめん。リベラ、今日は授業を休むよ」

「リューク様?」

扉を開くと、リベラが驚いた顔をしていた。

それもそうだ。

いつもなら完璧な姿で現れるのに、今日は顔も洗っていない。

「少し失礼します」

リベラは、ボクのだらしない姿に幻滅するかと思った。

だけど、リベラの視線はボクを退かせて部屋の中を覗き込んだ。

「なっ! これはまさか、申し訳ありません。失礼させていただきます」

リベラが強引に部屋の中へと入ってきた。

部屋の中は片付けもしていない。

乱雑に捨てられた魔法陣が描かれた紙と、机の上に置かれたレアメタルとミスリル。

「リューク様」

「何かな」

リベラがボクの前にやってきて、プルプルと震えている。

「どっ」

「どっ?」

「どうして私を誘ってくださらないのですか! これほど精巧な魔法陣を私は見たことがありません。それにレアメタルがあるということは、何かしらの魔導器具をお作りになるんですよね? もしくは魔法を研究されていたんですね。私の得意分野です」

物凄く食いつかれた。

「あっ、いや、うーん。つい楽しくて」

「酷いです! リューク様。私はリューク様の従者です。リューク様の健康や学園生活を助ける役目があります。それだけではありません。リューク様が新しい魔法を編み出されるのであれば、お手伝いをする役目が一番にできるのは私です」

魔法狂いに捕まってしまった。

ボクは頭を掻いて、深々と息を吐く。

リベラなら、バルの魔法陣を見られても良いかな?

「うん。じゃあリベラも手伝って」

「はい。喜んで」

カリンにも昨日は会いに行けなかったから謝らないとな。


「リューク、居られますか?」

ボクがシャワーを浴びていると、部屋をノックされて声がする。

「はーい」

ボクの代わりに、リベラが応対してくれる。

「あっ、これはカリン様。すみません、こんな格好で」

「あなたはリベラさん! どうしてそのような姿に?」

「あっ、はい。すみません。このような姿だとは忘れており、身嗜みを整えずに出て来てしまい申し訳ありません」

衣類は乱れ、下着同然のワンピース姿のリベラが出て大丈夫かな?

「それは問題ですが、どうしてあなたがリュークの部屋に? まさか」

「違います! 決して不貞行為をしていたわけじゃありません」

「リベラ、誰」

ボクがシャワーから出て顔を出せばカリンがいた。

「あっ、カリン。わ~カリンだ」

ボクは久しぶりに会うカリンに抱きついた。

抱きついても、カリンが抱きしめ返してくれない。

これは、リベラとのことを誤解したかな?

「あ~、多分誤解しているよ。リベラは魔法実験の手伝いをしてくれているだけだ」

「えっ?」

「カリン。部屋の中へ入って」

カリンの手を引いて部屋に入れる。

「汚い」

「ははは、これでもリベラが片付けてくれたんだ。とりあえず寝ていないから、シャワーを浴びて食事に行こうと思ってたんだ」

カリンの目がギラリと光る。

「リューク、一つ質問をしてもいいかしら?」

「何かな?」

「お食事はいつ取りましたか」

「えっと、帰ってきたのが昨日だから、その朝には」

課外授業の朝以来食べていない。

カリンの瞳がいつにも増して鋭くなる。

「ご飯は私が作ります」

「えっ? でも、カリンは忙しいから」

ボクが気遣いを見せようとすると、カリンがリベラを見た。

「いいえ。絶対に私が作ります。いいですね。リベラさん」

「はっ、はい。良いと思います」

「よろしい。リュークは、魔法の研究をなさるのですよね」

カリンはよくわかっているね。

これまでもダイエットや運動など、ボクが研究を好きなことをよく知っている。

「うん。しばらくはそのつもり」

「わかりました。その間は、私がご飯を作ります」

「えっ、いいの? 嬉しいよ」

昔もそうだった。カリンと婚約してから、ご飯はカリンが作ってくれた。

研究をするときは、シロップが身の回りの世話をしてくれて、カリンがご飯を作ってくれる。昔に戻ったようで嬉しい。

ボクが面倒くさがりなのを一番わかってくれているのは、シロップとカリンだ。

「料理や身の回りの世話は私が致します。リベラさんは、リュークの助手をしてあげてください。あなたの料理も用意しますので」

「はい」

リベラはカリンの迫力に圧倒されて返事しかできない。

「よろしい。それでは環境づくりからです。まずはここの片付けを二人でしておいてくださいませ。私は料理を作って参ります」

「「はい」」

やっぱりカリンには勝てないね。

〇月〇日 実験十日目

多重魔法陣発動に成功。

属性魔法の魔法陣は自分では生み出せないため、紙に転写して無属性の魔力を流すことで発動する。

魔力を同時に流して、魔法を発動させることに成功した。

実験の進捗状況としては順調だ。

最近は、シーラス先生が学園に来いとリベラを通して伝えてきた。

今は忙しいと断っている。

ミリルが様子を見に来てくれた。

リベラとカリンが世話をしてくれているところに、ミリルが何か出来ないかと問いかけてきた。

ボクの代わりに基礎学習のノートを取るように頼んだ。

ミリルがまとめたノートを見せてもらうと凄かった。

要点やテストの攻略方法まで完璧にまとめられたノートが届けられた。

ミリルは賢い。

バルの研究の手伝いをしてくれたら役に立つかも……。


〇月〇×日

結果から言うと、ボクの判断は正しかった。

ミリルに協力してもらえたので悩みを伝えた。

魔力充電についてだ。

相談すると、魔力吸収という新しい発想を提供してもらった。

なんでも、魔力は空気中に存在しているので、心臓部となるレアメタルに魔力を吸収させてエネルギーに変えることで、半永久的に魔力を補充できるという方法があるそうだ。

それが出来れば魔力をボクが供給しなくても、活動できるようになるのではないか?

ミリルの発想は役に立つ!

魔力吸収は絶対に必要だ。

ヤバい! ミリルが優秀過ぎる!

さっそくリベラと魔力吸収についての研究を始めた。

資料はミリルが持ってきてくれた。

ミリルが事前にたくさんの資料を読んで、要点をまとめてくれたお陰でスムーズな実験が出来るので助かる。

カリンが三人分の食事を作ってくれている。

負担をかけてしまった。申し訳ない。

でも、チーズとハムのサンドイッチは美味しかった。ありがとう。


〇月〇×日

あれ? この魔力吸収……ヤバくね?

マジでヤバいかも……今までは体内にため込んでいた魔力を使って魔法を使っていた。

だけど、魔力吸収は空気中に存在する魔力を使って魔法を発動する。

魔力吸収を行えば、無限に魔力が使えることを意味している。

ヤバっ、自分の中にある魔力を使わないで、この技術を覚えれば無限に魔法が撃てる。

リベラとミリル、カリンにも原理を説明して使ってもらった。

それぞれが吸収出来る量が違っていた。

どうやら個人の魔力保有量が違うと、吸収出来る量も変わってくるようだ。

それに吸収しながら魔法を撃つことができたのはボクだけだった。

みんなは吸収に集中しないと、吸い込めないと言う。

それでも魔力回復が出来るので利用方法はあるようだ。

原理はシンプルなのだが、呼吸をするように魔力を吸い込むだけだ。

魔法の才能に恵まれたリュークの身体は、すぐに魔力吸収を習得できた。

魔力吸収は技術だ。

それも凄い技術なので、これは凄い発明なのではないだろうか?

魔力の消費がないので、魔法を使っても疲れない。

ヤバっ、これマジでヤバい。

リベラ、ミリルとハイタッチして喜んだ。

カリンのお祝いフルコースは美味しくてお腹いっぱいになった。


×月〇日

困った……。

魔力吸収は素晴らしい技術なんだけど……魔法陣が存在しない。

魔法じゃないから魔法陣がない。

レアメタルに付与することが出来ない。

でも、充電よりも遙かに便利だ。

ボクが魔力を注がなくても、魔力を吸収出来ればバルは自動で動くことが出来る。

それはとても素晴らしい。

絶対にバルのボディーに取り入れたい。

リベラが魔法学から、ミリルが生物学から、それぞれの観点で意見をくれる。

なかなか上手くいかない。《吸収》の魔法陣が存在しない。

作り出すしかない……。

ハァ、野菜しか喉を通らない。

コンソメ美味い。


×月〇×日

カリン……、君は天才だよ

全てをレアメタルだけでしようとするからダメだったんだ。

レアメタルは心臓部なんだ。

レアメタルへ魔力を循環させる別の魔導器具を作り出せば良い。

シューマイ美味しかったです。

同じ調理器具で、同時に料理を二品作る姿が素敵だったよ。

目の前で元気づけようと料理をしてくれてありがとう。

カリンのおかげで突破口を見つけた。

研究を開始して三ヶ月が経っていた。

テストには参加しなければいけないので、ミリルが渡してくれたノートで一夜漬けをした。

ミリルノートは凄い。

それしかしてないのにテストは余裕だった。

ルビーもミリルノートの恩恵を受けたらしい。

テストが終わると、ルビーが片付け要員としてやってきた。

猫は癒やされる。

ルビーを撫でていると集中力が増した。モフモフ最高だ。

シロップに会いたい。

年末の学園剣帝杯が終わったら、絶対に、家に帰ろう。

温かい鍋は最高です!


×月××日

ハァ、ダルイ。

身体が言うことを聞かない。

今日は休息日だ。

カリンがお粥を作ってくれたから食べさせてもらう。

リベラやミリルにも休日を与えて、お礼に食事をしてきてほしいと給金を出した。

断られたが、何かしらお礼がしたかった。お金というのは打算的で、一番ラクなお礼になって申し訳ない。

カリンにいっぱい甘えた。

凄く癒やされる。

体調が悪いときは、やっぱり誰かの温もりを感じたい。

久しぶりに三日間ほど寝込んだ。

カリンがずっと看病してくれた。


×月×〇日

体調が戻って、研究を再開した。

リベラやミリルも、新しい魔導器具の立案をしてくれて、レアメタルに装着できるウィング型の魔力吸収装置と魔力循環システムを実現した魔導器具を作り出した。

羽を広げると魔導器具が魔力吸収を開始し、羽を畳むと吸収した魔力をレアメタルに循環するというものだ。

《吸収》の魔法陣は存在した。リサーチ先生を問い詰めて吐かせた。

《吸収》の応用で開発した魔導器具は素晴らしい。

魔力をレアメタルへ送るという発想はリサーチ先生から頂いた。

何を作っているかは言わなかったが、リサーチ先生の知識は役に立つ。

ミスリルにも《吸収》を応用して魔力を送り込む実験は成功だ。

ミスリル羽が空気中の魔力を集め、レアメタルが集まった魔力を吸収して、魔法やエネルギーに変えて排出する。

循環システムが完成した。

これを二段階バキューム吸収と名付けた。


□月〇日

とうとう、この日が来た……。

どんな魔法陣をレアメタルに刻み込むのか、試行錯誤を繰り返した結果。

十の魔法陣を付与することになった。

《バル》を核として、《吸収》以外にも残り八個も付与する。

《変形》《記録》《解析》《統計》《確率》《鑑定》《操作》《再生》

ほとんどの実験はリベラに行ってもらった。

ボクは魔法陣作成と同時多重魔法の練習を行っていた。

レアメタルを囲むように十の魔法陣を同時に発動させる。

レアメタルに順番に付与していかなければならない。

魔力吸収を覚えていてよかった。

魔力消費が激しいはずの同時多重魔法陣発動を実現可能にしてくれた。

魔力切れの心配をしなくていい。

「いくぞ」

カリン、リベラ、ミリル、ルビー、四人が見守る中。

ボクはレアメタルへ十の魔法陣を付与していく。

同時多重魔法を発動して空気中に魔法陣を浮かび上がらせる。

「リューク様、成功です!」

集中しているボクに、ミリルの声が響く。

発動は成功した。

ここからは一つ一つの魔法陣を重ね合わせるようにレアメタルへ刻み込んでいく。

「リューク様、レアメタルへの付与……、全て完了です」

ボクの周りに浮かんでいた全ての魔法陣が、レアメタルへ刻み込まれた。

ここまで半年をかけた実験が、なんとか成功を収めた。

ふらついた身体をカリンが受け止めてくれる。

「大丈夫ですか?」

「ああ」

レアメタルが光を失って地面へと落ちていく。

ルビーがナイスキャッチしてくれた。

「だっ、大丈夫かにゃ?」

「ありがとう、ルビー。割れることはないが、傷が付かなくてよかった。最後の仕上げをするから台の上においてくれるか?」

「はいにゃ」

ルビーは丁寧にレアメタルを台座の上に置いてくれた。

ボクは最後の仕上げをするためにレアメタルに近づいていく。

「まずはウィングを装着」

レアメタルと魔導器具をドッキングさせて一つの魔導器具として完成させる。

見た目には石に羽を付けたシュールな形ではあるが、ここから変化する。

「ボクの魔力を流し込んでバルを目覚めさせる」

全員が息を呑む。

ボクは注げる全ての魔力を注ぎ込む。

こうすることで、核となるレアメタルに魔力回路が生み出され、魔力を循環させるための道が出来上がる。

道が出来た場所に魔力吸収された魔力が流れ込みバルのエネルギーとなる。

これは魔導器具の魔力吸収が出来る魔力保有量の最大値を上げることにもなるので、ボクは注げるだけ全力で魔力を注ぎ込む。

「ハァハァハァ。これで全部だ」

カリンに支えられてボクは実験の結果を待った。

魔力を注ぎ込んだことで、バルが目覚めてボクと意識がリンクされるはずだ。


今までの実験にかかった苦労が走馬灯のように頭に浮かんでいく。

研究は想像していた以上に大変だった。

課外授業から帰ってきてから、テスト勉強以外は完全に授業を無視して、半年が過ぎてしまった。

リベラが実験の手伝いをしてくれて、寮に戻ればカリンが食事を食べさせてくれる。

お風呂やトイレもカリンに連れて行ってもらったのは恥ずかしい。

ミリルは、ボクの代わりに基礎学習のノートを取ってくれて、テスト対策まで作ってくれて、研究の手伝いと掃除まで手伝ってくれた。

ルビーも、ミリルノートには助けられたようだ。

たまに部屋にやってきて、ボクが考え事をしていると膝に座ってくる。

撫でると気持ちが落ち着いて癒やされた。

こうして半年間はあっという間に過ぎていった。

何やらシーラス先生から話を聞きたいと言われたが、今は忙しいと断り続けた。

バルにボディーを作る計画は、大詰めに差し掛かっていた。

「よし、最後の仕上げだ……。ボクの意識とバルをリンクさせる」

ボクは最大限魔力吸収を行って、自分の魔力へと変換してから、自身の身体の中にある魔力をレアメタルへと注ぎ込む。

レアメタルとボクとの意識をリンクできるはずだ。

体内に存在する魔力をレアメタルへ注ぎ込む。

全てを注ぎ込むと、ボクは力を失って倒れてしまいそうになる。

カリンが慌てて支えてくれなかったら、倒れていたことだろう。

成功しろ!

「バル? バル? どうだ調子は?」

魔力を注いだのにリンクが出来てない?

ボクはバルに呼びかける。

今までは「(^^)」と返事をしてくれたバルから返事がない。

「魔力は十分だと思うんだけどな? あとはボクとの意識をリンクさせるだけで終わるはずなんだ。どうしてリンクできないんだ?」

ボクが呼びかけると、ピクリとレアメタルに反応があった。

「バル?」

もう一度呼びかけると、レアメタルが光り出した。

紫色の光はボクの魔力を表しているような感覚を覚える。

魔力吸収で体内の魔力を回復させながら、バルの変化を見守る。

「(^^)」

光が収まると、ミスリルで作った羽を生やした子犬程度の紫クマが空を飛んでいた。

フワフワした見た目のクマは、子犬サイズの不思議な生物として飛んでいる。