「勝者リューク・ヒュガロ・デスクストス! ダン君を下ろしなさい!」

リサーチ先生が慌てて勝者を口にした。

こちらへ命令する。

「いいですよ」

ボクは一切ためらうことなく、バルを消滅させてダンを落下させる。

「キャー!」悲鳴を上げるクラスメートたち。

ボクの視線の先には、顔を青くしているリンシャン・ソード・マーシャルの顔がある。

ダンが地面に激突する前に、リサーチ先生が空中でダンを抱きとめた。

リンシャン・ソード・マーシャルは、助けられたダンの元へ駆けつける。

「なっ、何をするんだ。この卑怯者、ダンは意識を失っていたんだぞ」

勝った者を讃えるのではなく、罵倒してくるリンシャン。

ボクは彼女の態度にイラっとする。

「ボクに校内ランキング戦を挑んできたんだ。それくらいの覚悟は持ってもらわないとね」

睨むリンシャンから視線を外して、ボクはクラスメートを見た。

「腕に自信があるなら、校内ランキング戦を受けてあげるよ。これはサービスだ」

ボクが視線を向ける。

クラスメートたちの中には視線を逸らす者。

言葉をつまらせる者。

崇拝するように瞳を輝かせる者。

反応は様々だった。

「なんだ、誰もいないのか。今のボクは戦って疲れているかもしれないよ?」

しばらく待っても誰も声を出さなかつた。

「ボクは知識を持つ者を尊敬する。魔法を追究する者を尊敬する。だけど、力だけのバカな者を嫌う。こいつのように野蛮人ならば、校内ランキング戦で二度と再起できないようしてやるよ。待つのも飽きた。ボクに挑む者よ。明日があると思うな」

ボクの発した言葉はクラスメートたちが、他の生徒にも広めてくれるだろう。

悪役貴族としての演出としては悪くない。

やるなら徹底的に。

これで面倒な校内ランキング戦を挑んでくるバカがいなくなることを祈りたい。

最後にボクはダンを抱えて、ボクを睨むリンシャンを見た。

面倒な校内ランキング戦に付き合ってあげただけでも感謝されてもいいと思う。

リンシャンの瞳は、こちらが悪いと言わんばかりの態度を取っている。

これ以上の説明は無駄だね。

正義を振りかざす奴は自分たちに都合の良いことばかり言ってくる。

最悪な雰囲気になった闘技場からボクは立ち去ることにした。

通路で待っていたリベラと共に……。

「かっ、必ずダンはお前を倒す。覚えておけ」

震える声で、リンシャンから発せられた言葉に、ボクは何も答えることはなかった。

「よかったのですか?」

「何が?」

「本当は、彼が地面に激突する前に、リューク様が魔法を出現させて、受け止めるはずだったことを言わなくて」

「リベラ、ボクはね。怠惰なんだ」

「はい」

ボクが言いたいことが伝わらなくて、リベラは戸惑った顔をする。

「理解しようとしない者に説明することは無駄だ。無駄なことはしたくない。これでも十分に話した方だと思うよ。これ以上の説明は面倒だからしたくない。それよりもリベラと魔法の話をして、本を読んでいる方が有意義だ」

珍しく余計な説明をしたことで、リベラも納得してくれたようだ。

リベラの顔は誇らしく。寮へ戻る道を歩き出す。

「宜しいかしら?」

歩み始めた僕らに声をかけた者がいた。

振り返った先にいた面倒な相手に、ボクは溜息を吐いてしまう。

「ハァ……、なんですか? 王女様」

「王女様ですか、クラスメートなのです。エリーナで結構です」

「そうですか、ボクもリュークで結構です。エリーナ、それで何か?」

「王族である私に対して鬱陶うっとうしそうな顔をする人はあなたぐらいです」

めんどくさい。王族だから無下にすることもできない。それを理解していない。

ボクとは最悪の相性だ。

「あなたの実力、見せていただきました。素直に見直しました。態度の悪い方だと思っておりましたが、努力しているからだったのですね」

「それはどうも」

「ユーシュンお兄様から、テスタ様のお話は聞いていました。ですが、デスクストス家には、あなたもいるということを認識させてもらいました。素晴らしい戦いを見せていただき、ありがとうございます。それだけを言いに来たのです。それでは失礼します」

言いたいことだけ言って、去っていく王女様。

何がしたかったのかわからない。

エリーナ王女様と関係するのは、面倒以外の何物でもない。

「侮れませんね」

「何が?」

「いえ、リューク様は何も気にしないで大丈夫です。それよりも帰りましょう」

「ああ」

リベラに促されて寮へと帰ることにした。

結果は変わってしまったけど、チュートリアル戦を終えることが出来た。