悪役貴族として出現させるために、成長と共に醜悪になっていくのなら、その原因を突き止めて絶対に阻止しなければならない。
ゲームは大人向けということもあり、悪役貴族のリュークは主人公の邪魔をする。
邪魔の仕方として、主人公と恋人になる女性を奪い取る役目をしていた。
その際には、女性を強引に責める描写が映し出される。
拷問や、魔物をけしかけて捕まえた女性を触手プレイにして責めたりする。
それはボクの趣味じゃない。
ハードな責め画像は、見る人が見れば好きな映像なのだろうけど、ボクはちょっと苦手だった。
恋愛戦略というタイトル通り。
恋愛に重きを置いた育成恋愛学園パート。
戦略に重きを置いた戦略戦術立身出世パート。
の二パートを分けてゲームが進行していく。
リュークは、学園パートで醜悪な容姿をしながらも、公爵家の権力を盾にして女性に言うことを聞かせていた。
まさしく、悪役貴族っぷりを全力で発揮する傲慢怠惰な暴君クソ野郎になる。
立身出世パートでは、リュークの家であるデスクストス公爵家が暗躍して、アレシダス王国を裏から乗っ取るために様々な事件を起こしていく。
主人公は学園パートで付き合った女性によって、立場を変えて立身出世パートを始められるのが面白さの一つだった。
公爵家の仕掛けた事件を解決していくことで、どのパートでも出世していくというシナリオになっていた。
さて、状況はある程度整理できた。
どうやらボクは未来の悪役貴族として、転生してしまったようだ。
ゲームの進行上、悪役貴族として生きていかなければならない。
幸い、高位貴族なので何不自由なく生活ができている。
魔法の才能もあり、容姿も醜悪なキモデブガマガエルにはなっていない。
なら、不細工になるのを阻止して、家族に認めてもらうために悪事を働くことやめれば断罪される未来を変えられるかもしれない。
あくまで貴族として、怠惰に過ごす日々を満喫する人生は悪くない。
怠惰と言っても、惰眠を貪るだけではせっかく転生したのにつまらない。
リュークは魔法の才能があるんだ。魔法を活かしてラクをしたい。
将来的に考えて、家族が悪役貴族として暗躍を始めることはわかっている。
その際に、強さを持っていなければ、主人公や貴族たちに簡単に殺されてしまう。
それは絶対に嫌だ。
本編が始まるのが十年後、あくまで怠惰にゆっくりと快適に己を鍛えよう。
「魔法を教えてくれる人を見つけないといけないな。でも、こういう場合は魔力量を増やすのが先だね。増やし方は、魔力を使い切ることで枯渇させる。その魔力が回復する時に増えると聞いたことがある」
目を閉じて魔力らしきものを感じてみる。
さすがは魔法の才能《《だけ》》はあるリュークの体は、すぐに魔力らしき特別な力を感じられた。
「これが魔力か?」
空気の塊のような見えないエネルギーが、体を包み込むように膜を作り出した。
体の中に入って全身を巡り、また外へと排出されていく。
まるで呼吸をするように、身体の中を循環して、出ていくまでの流れを感じられた。
「使うためには、どうすればいいんだろう?」
ゲームの世界では、攻撃魔法、回復魔法、補助魔法、などの魔法を放つ際に魔力が消費されていた。だけど、今は魔法の使い方がわからない。
「回復魔法でも試してみるか?」
攻撃魔法を使って、部屋の中を壊したくない。
自分に向けて回復魔法を発動してみた。
画面越しであれば、ゲームの画面に呪文を選択すればいいが、選択するコマンドがないので、覚えている呪文を唱えてみる。
「ヒール……あれ? 使えたのかな?」
自分の体力ゲージが見えないので、回復したのかわからない。
ただ、熱を出していた体が少し軽くなったような気がする。
「もっとラクになるかな?」
そう思って回復魔法を連発した。十発程度で意識を失った。
コンッ、コンッ
「リューク様? 起きる時間ですよ。体調はいかがですか?」
朝だ。専属メイドであるシロップに声をかけられる。
返事をしたいけど体が
目を開けるが、具合が悪そうなボクを見て、まだ熱が下がっていないと判断された。
シロップは甲斐甲斐しく世話をしてくれて、退出していった。
まだ気分が悪いや。熱のせいでしんどいわけではないんだけど、魔力を消費できたことは体で実感できる。回復魔法は成功した。
怠さはあるけど、体調不良が回復している。
魔力を枯渇させてしまったことで、意識を失って気分が悪くなっているようだ。
回復魔法はハッキリと魔法を使えたという実感が乏しい。
やっぱりちゃんと魔法の勉強をしないと、細部までわからないことが多い。
ボクの専属メイドである、犬獣人のシロップ十二歳に魔法の本を読んでもらう。
「シロップ。ご本読んで」
シロップは、白い犬耳と尻尾を付けた可愛らしいメイドさんだ。
ボクよりも、少しお姉さんと言った感じだけど、文字が読める偉い子だ。
「はい。リューク様」
お願いをすると嬉しそうに本を持ってきてくれる。
素直で甲斐甲斐しく、健気な忠犬と言った印象を受ける。
「こんな難しい本でいいのですか? 絵本とかもありますよ。私、《忠犬はっちゃん》とか好きなんです」
「ボクは魔法を使ってみたいんだ。シロップ、お願い?」
五歳児の演技は重要だ。
見た目が子供なのに、大人のようにふるまえば、子供の強みを生かすことができない。
幼い体を利用して、発展途上であるシロップの膝に頭を預けて本を読んでもらう。
ソファーに座ってもらったシロップの太ももは、まだまだ細いがこの体勢はラクでいい。