第一話 あくまで怠惰に

五歳の誕生日、高熱を出して倒れた。

熱に浮かされながら夢を見た。

夢の中で醜悪な顔をしたボクがいて、顔の良い騎士から剣を向けられる。

騎士の周りには美しい女たちが、ボクを見下ろしていた。

騎士は持っていた剣をボクの首へと下ろした。

それはボクの未来を予知したものだ。

「ハァハァハァハァ」

驚いて飛び起きた。

悪夢から目覚めた僕の頭の中には様々な記憶が再生される。

この世界が、ボクがしていた大人向け恋愛戦略シミュレーションゲームで。

夢の中で殺された悪役貴族リューク・ヒュガロ・デスクストス。

それがボクだ。

公爵家の第二子息として生まれたリューク。

家族に認めてもらいたい一心で悪事を働き続けた悪役貴族キャラであり。

国を転覆させようとする公爵家の次男として生を享ける。

王に成り代わろうとしていた公爵家の家族の思惑など知らないまま、ゲームの主人公によって殺されてしまう。

家族である公爵家からも、利用されたにすぎない哀れな悪役貴族として死を迎える。

ゲームの中で主人公達は黒幕である公爵家の第一子息のテスタや、デスクストス公爵当主を討ち果たして、国の憂いを取り除くことで出世していく。

リュークは、主人公たちにとって、中ボスにもなれない【ヤラレ役】でしかない。

夢から覚めたばかりの頭の中は、二つの記憶が交じり合うような特殊な状態だった。

現状を把握するために時間が必要になり、一つ一つ整理していく。

この世界が、ボクが大好きだった大人向け恋愛戦略シミュレーションゲームの世界なのは間違いない。

大人向け恋愛戦略シミュレーションゲームは戦略要素が盛りだくさんで、育成パートなどのやり込み要素が多く含まれており、人気が爆発したゲームなんだ。

ゲームをしていた自分自身がどうなったのか思い出せない。

主人公によって、リュークが悪役貴族として首を刎ねられた最期だけが鮮明に思い出せる。

頭が整理出来たことで、自分の置かれた状況が理解できた。

まだ、悪役貴族として活躍する数年前に転生してきたことはありがたい。

ボクは五歳という年齢で、様々な記憶を取り戻した。

主人公がゲームを開始するのは十五歳の時だ。

今から十年後の世界にゲームは開始される。

その際に出てくるリュークには魔法の才能があるのに、努力をしないで怠慢に生きている。キモデブガマガエルという悪称が付くほどに見た目や性格が醜悪に歪みに歪んでしまったリュークが登場していた。

彼の性格を歪めた原因として、生まれてすぐに母親を亡くしたことで、愛情を受けられなかったことが考えられる。

誰からも愛されないまま、他の家族から相手にされない環境が続いたことで、リュークの性格を歪ませたとボクは推測した。

家族に認められたいという思いが強くなった結果として、悪事を働くようになったわけだ。思考としては子供が構ってほしいと言うようなものだろう。

だけど、ボクはリュークの家族からの愛情は必要としない。

今のボクなら、冷静にこれからのことを考えられるはずだ。

五歳のリュークは、多少ポッチャリな見た目に、鋭い目つきをしている、ただの可愛い少年だと思う。鏡に映る容姿だけを見れば、それほど悪くない。