3話 真実の仮面をかぶったプレイヤー

「美桜っ!」

優斗は声を張り上げて叫んで、焦ったように手探りで入口のドアの鍵を開ける。歯の立ったサバイバルナイフをドアから引っこ抜いて、一目散に部屋から飛び出した。廊下を走る音が遠ざかり、2階から1階へ飛び降りた衝撃が床に伝わる。勢いよく開いたリビングの扉が壁にガチャンとぶつかる音がした。

レキトは電源ボタンを押して、対プレイヤー用レーザーを解除する。端末上部に溜まっていたイヤホンジャックの電気は弾けて、ライトグリーン色の残滓が宙に漂った。落とし穴のあるベッドの下に手を突っ込み、紫藤と別れてから買っておいた救急箱を引っ張りだす。急いで傷口を止血して、消毒液を浸したコットンを当てて、包帯を巻いて応急処置を済ませた。

赤色のスマートフォンの音量をゼロにすると、《小さな番犬》の吠える声は聞こえなくなった。振動しているスマートフォンの画面には、「DANGER」のポップアップが点滅している。枕元のベッドボードに置いたフリスクケースを手に取り、レキトは口の中へ一粒放り込んで、奥歯でガリッと噛み砕いた。黒いチノパンのポケットにフリスクケースを入れて、自分の部屋から音を立てずに出て、階段を1段ずつ慎重に下りていく。

そして、レキトはリビングの扉の前に立った。優斗が勢いよく開けた後に壁で跳ね返ったのか、リビングの扉はほとんど閉まりかけている。室内の様子は見えず、中からはテレビの音しか聞こえてこない。ボス戦を前にしたときに似た緊張を感じる。

静かに深呼吸したレキトは親指にホームボタンを添えて、対プレイヤー用レーザーを撃つ準備を整える。ゆっくりと右手を伸ばして、真鍮のドアノブをひねる。

リビングの扉を開けると同時に、片手でスマートフォンを構えた。


開けた扉の先から温かな光が差し込んだとき、錆びた鉄のような血の臭いが漂ってきた。暖房の利いた空気が流れてきて、肌が乾燥していくような感覚を覚える。30畳くらいの広さのリビングでは、円型のロボット掃除機が床の「汚れ」を拭いていた。その「汚れ」は徐々に広がっていて、円型のロボット掃除機の拭き取り作業が追いついていない。

1階のリビングには、優斗とNPCの家族たちしかいなかった。優斗は言葉を失って、目の前の光景を呆然と見ていた。母親の紀子は父親の司の手を取って、華奢な体を震わせていた。司は壁に寄りかかるように倒れて、刃物で刺された跡のある傷口から血をドクドクと流している。

涙を浮かべていた妹の美桜の手には、父親の血がべったりとついた包丁が握られていた。

「……違うの、お兄ちゃん。これは私がやったんじゃないんだよ。……お願い、助けて。──私の体、さっきから言うこと聞かないの!」

おびえた顔をした美桜が叫んだ瞬間、錆びついた歯車を動かしたような音が聞こえた。天井から吊られた糸が、美桜の頭から手足につながっているのが一瞬だけ見える。美桜の唇が左右に動きはじめて、小顔になる体操でもしているかのように、左へ大きく歪み、右にも大きく歪んだ。美桜は首を必死に横に振ったが、彼女の口角は上がっていき、心から楽しそうな笑顔に変わっていく。

そして、腹話術で人形が喋るときのように、美桜は口をパクパクと開けて閉めることを繰り返した。

「グッドモーニング~! プレイヤーの優斗くん、そして暦斗くん! 気持ちのいい休日の朝、可愛い妹さんがお父さんを刺した光景を見た気分はいかがですか~!?

悪趣味な挨拶が美桜の口から聞こえてくる。それは紛れもない美桜の声だった。

だが、泣いている彼女の顔を見れば、本人の意思で言葉を発しているわけではないのは明らかだった。

レキトはスクエア型眼鏡をかけ直す。新手のプレイヤーの姿はリビングに見当たらない。赤色のスマートフォンの音量ボタンを叩いて、《小さな番犬リトル・ケルベロス》の吠える声が聞こえるようにする。

おそらく美桜の身に異変が起きた原因は、遠隔操作系のギアによる力だろう。NPCにしか効果が及ばないものなのか、何らかの条件を満たせばプレイヤーも操れるものなのかはわからない。

見えないプレイヤーによる攻撃がすでに始まっていた。

「なんで? なんで口が勝手に動くの? 『プレイヤー』って何のこと!? 怖いし、もうわけわかんない!」

怯えてパニックになっている妹は、すがるような目でレキトたちに訴えかける。ギアで操作された彼女の口は、笑みを無理やり浮かべさせられていた。円盤型のロボット掃除機が近寄ったとき、「やだ、やだ」と言いながら、美桜は言葉とは裏腹に足を上げていく。そして、足裏を思いきり叩きつけて、円盤型のロボット掃除機を壊した。

包丁で刺された司は、壁に寄りかかるように倒れている。まだ息は辛うじてあるようが、虚ろな目は閉じそうになっていた。紀子は血の気の引いた表情を浮かべて、唇をわなわなと震わせている。操られた美桜が包丁についた血を舌で舐めると、紀子は言葉にならない声を漏らして失神した。

──両親がスマートフォンを使って、美桜を操作している素振りはない。

──敵がどこにいるかわからない以上、まず目の前の危険を排除しておいたほうがいい。

レキトは親指でホームボタンを長押しして、対プレイヤー用レーザーを起動する。端末上部のイヤホンジャックに電気が溜まり始めて、ライトグリーン色に光り輝いた。両手でスマートフォンを持ち、視線と射線が揃うように構える。そして、泣き笑いしている美桜の足に向かって、対プレイヤー用レーザーを放った。

だが、美桜の足にレーザー光線が当たる直前、桜色のレーザー光線が割って入るように衝突した。お互いのレーザー光線は相殺し合って、煌びやかな2色の残滓が美桜を囲うように漂う。レキトは顔をしかめて、無言で抗議するように優斗を睨みつける。

真剣な顔をした優斗はレキトを見つめ返して、懇願するように首を横に振った。

「……やめてくれ。美桜は操られてるだけなんだ」

「操られてることが問題なんですよ。本人にその気がなくても、彼女は俺たちに包丁で襲いかかってくる。ただでさえ俺たちはお互いにダメージを負っているんですから、無駄な体力を消費すべきでないことはわかってるでしょう?」

「……そんなことはわかってる。けど、美桜はまだ中学生の女の子なんだ。痛い思いはさせたくないし、体に傷を残すことはしたくない。……頼む。妹を撃たないでくれ」

優斗はレキトに頭を下げる。切実さが滲み出ている声だった。両手を握りしめて、肩を震わせている。涙が零れ落ちるように、額から流れていた血が床にポタポタと垂れていた。

レキトは口を閉ざして、頭を下げている優斗から目を逸らした。《小さな番犬》は変わらず吠えていて、今この瞬間が危険な状況であることを伝えている。操られている美桜の足を撃つことを急かすように、赤色のスマートフォンは振動しつづけている。

NPCの家族との日常のために戦う優斗が自分自身と重なったことを思い出す。

レキトはため息をついて、両手で構えていたスマートフォンを下ろした。

「……ありがとう。後は一人でなんとかするよ」

優斗は下げていた頭を戻す。右手に持っていたサバイバルナイフを腰の後ろのナイフケースに納めた。両目を閉じて、息をゆっくりと長く吐く。まぶたをすうっと上げたとき、青い瞳は左右に揺れていた。

「あ……ああ! やだ、やだ、やだよ! 二人とも、私から逃げて!」

ギアで操られた美桜は叫んで、優斗に包丁で襲いかかった。振り上げた包丁を頭上から勢いよく下ろす。優斗は半身に構えて、鋭く迫る包丁を軽やかに避けた。「もう大丈夫」と美桜の頭をポンと叩いて、彼女の目尻から流れている涙を指先で拭う。

操られた美桜は優斗の手を払って、踊り狂ったように包丁を振り回した。優斗は美桜のそばから離れず、妹のステップに合わせるように、連続で包丁を避けつづける。穏やかな笑みを浮かべて、119番にスマートフォンでかけて、落ち着いた声で救急車を呼んで。そして、床に落ちているロボット掃除機の破片を、美桜が踏む前に蹴り飛ばした。

「……足元にある物に気づかない。『操作する相手が見える範囲しか見えない』ってことか。本体が近くにいないなら、こんな茶番、いい加減終わりにさせてもらうよ」

優斗は美桜との間合いをさらに一歩詰めて、相手が狙うことを挑発するように自分の胸を指した。目の前に突き出された包丁をギリギリまで引き付けて、操られた美桜の死角へ瞬時に回り込むように避けた。親指でホームボタンを長押しして、対プレイヤー用レーザーを再起動する。そして、突き出された包丁の刃の根元に、桜色の照準点を定めた。

「あーあ、弱点バレたし勝ち目がないな〜。こいつは使えないし『処分』するか」

敵プレイヤーの言葉を喋った美桜は、手首を返して包丁を自分に向けた。首をめがけて、血塗られた包丁をぐっと近づける。優斗は目を丸くして、後ろから美桜の手を止めようと飛び込んだ。包丁を近づける手が止まり、美桜の口角がにんまりと上がる。

すかさず操られた美桜は足払いを放ち、急接近した優斗の体勢を崩した。

「ありがとう、お兄ちゃん♪」

美桜は弾んだ声で言って、優斗の胸に包丁を向けた。体勢を崩されて足が浮いた優斗は顔を強張らせた。妹が自殺する演技に動揺して集中力が乱されたのか、青い瞳の揺れは収まっている。

操られた美桜は涙を目に浮かべていたが、彼女の小さな手は包丁を握ったままだった。

「『妹を撃たないでくれ』って話でしたっけ? ──じゃあ、それ以外の方法なら止めても構いませんよね?」

レキトは微笑み、背中に隠していたスマートフォンを構える。優斗が美桜を助けに行っている間、親指でホームボタンを押しつづけていた。対プレイヤー用レーザーは、ホームボタンを押す時間が長くなるほど、威力は大きくなるシステム。電気が溢れているイヤホンジャックには、「煌めく大きな光の球体」が構築されている。

思わず目を閉じたくなる眩しさを感じながら、レキトは親指をホームボタンから離した。優斗と美桜のいる方向めがけて、「対プレイヤー用レーザー砲」を撃った。ライトグリーン色の光の球体は駆け抜けて、彼らの頭上の天井にぶつかった。派手な衝突音とともにリビングが揺れて、直径30センチ以上の風穴が天井に開く。

リビングの上に位置するのは、ゲームの拠点となる自分の部屋。この世界での生き残りを賭けて、優斗と5分前まで戦っていた対戦ステージ。後片付けをせずにリビングへ向かったため、散らかった床には洋書やテラコッタ鉢の破片が転がっている。掛けカバー付きの羽毛布団も落ちており、血で汚れたカーディガンも投げ捨てられている。

レキトが優斗に斬られたときに流れた、「シアン色の血」も床に広がったままだった。

リビングの天井の風穴から、固まりっていないシアン色の血が降ってくる。レーザー砲で血だまりから散り散りになって、ゲリラ豪雨のように落ちてきた。青く染まった血の滴は、美桜のフリル袖のブラウスを汚す。天使の羽のヘアピンでサイドを留めた髪を濡らした。彼女の目の中にも、目薬を差すように入っていく。

美桜は目をぎゅっと閉じた。あどけなさの残る顔を背けて、「いや!」と悲鳴をあげた。操られた手で包丁をぶんぶんと振り回すが、空を切る音だけが響く。美桜をギアで操作しているプレイヤーは、体勢を崩した優斗がどこにいるのかを見失ったらしい。

レキトは美桜の背後に回り込んで、包丁を持った右手の手首をつかんだ。後ろに手を引っ張って、美桜の腕を締め上げる。血塗れになった包丁が手から落ちる。レキトは包丁の柄を踏み、できるだけ遠くへ滑らせた。

「えー! いいところで邪魔するなよ! お兄ちゃんが妹を助けようとして殺される、素敵な家族愛を見れるチャンスだったのにさ!」

操られた美桜は頬をわざとらしく膨らませる。心の底からいじめを楽しんでいる子どものような口調だった。体勢を崩した優斗は立ち上がり、暗い目をしてスマートフォンを握りしめている。背後から締め上げたレキトの手には、美桜が震えているのが伝わってきた。

「おいおい、なんか返事してくれよ。それともアレかな? 暦斗くんも家族を傷つけられて、怒ってる感じなのかな? だとしたら、君は全然わかっていない! こういうリアルなゲームの醍醐味と言えば、『NPCを殺すこと』じゃないか! しかもギアの力で人を操ってやらせるから、僕自身が警察に捕まることはない! 超絶で最高の完全犯罪だ!」

操られた美桜はケラケラと笑い始めた。にやついた顔で上を向いて、屋根を突き抜けるくらいの大きな声で笑っていた。《小さな番犬リトル・ケルベロス》の吠える声が少し大きくなる。

レキトは美桜を締め上げるのをやめて、五人掛けのソファに座った。

「おいおい、暦斗くん! 大切な家族の一大事に何をやってるんだよ! 可愛い妹がどうなってもいいのかい?」

「考え事をしたいので、お好きにどうぞ。ただ、あなたはそんなことしませんよね?」

「は? 人の話を聞いてたのか? このゲームの醍醐味は、NPCを殺──」

「無理しなくていいですよ。もうとっくに気づいてますから。あなたの言葉、全部『フェイク』ですよね?」

レキトは挑発するように問いかけた。片手をチノパンのポケットに突っ込み、ライムミント味のフリスクケースを引っ張り出した。優斗は美桜に近づいて、彼女の小さな手をそっとつかむ。操られた美桜から笑みは消えていて、真顔でレキトを見つめていた。

「中途半端なんですよ、やることが。あなたは妹を操って、父親に包丁を刺しただけで、致命傷を与え切れていない。母親にいたっては、傷一つつけていないんです。本当にNPC殺しを好むプレイヤーなら、もっと残虐な手口を選びます。ゲームの醍醐味と言ってるのに、一人も殺してないのはおかしいでしょう?」

レキトは口の中へフリスクを一粒放り込み、奥歯でガリッと噛み砕く。緊張で乾燥していた口の中がわずかに潤うのを感じた。《小さな番犬》の吠える声がさらに少し大きくなる。改めてリビングに目を配ったが、異変らしき物は見当たらない。

人が何かを演じるとき、そこには何らかの「思惑」が存在する。たとえば、紫藤は「初心者プレイヤーからアイテムを奪うため」に、「運営のチュートリアルを担当する社員」のふりをしていた。優斗は「レキトを油断させて正体を見抜くため」に、「何も知らないNPCの兄」のふりをしていた。

どうして敵プレイヤーはNPC殺しを楽しむプレイヤーを演じたのか。

操られた美桜から武器を取り上げても、演技をすることを止めなかったのか。

《小さな番犬》の吠えている声が少しずつ大きくなっていることが不気味だった。


ピンポーン、と玄関のインターホンが鳴った。緊迫した空気が漂うリビングに、明るい電子音が響き渡る。室内にドアホンモニターはないため、誰がインターホンを鳴らしたのかはわからない。ピンポーン、と玄関のインターホンはもう一度鳴った。間延びした音の余韻が耳に残る。

失神していた母親の紀子は目を覚まして、ぼんやりとした表情で起き上がる。

「きゃああああああああああああ!」

居留守でやり過ごそうとしたとき、美桜は大声で悲鳴をあげた。命の危険が目の前に迫っているかのような激しい叫び方。優斗は慌てて妹の口を押さえたが、操られた美桜は必死に抵抗して暴れ出した。「助けて! 助けて!」と敵プレイヤーの言葉を喋らされている。

玄関のドアをノックする音が強くなった。鍵のかかったドアノブをガチャガチャと回す音が聞こえてきた。インターホンの電子音が何度も鳴る。強引にドアを開けようと、体当たりするような音が響いてくる。

やがて玄関のドアを押し破ろうとするような音はピタッと止んだ。ドアノブを回す音もインターホンの音も鳴らなくなった。嫌な予感がしたレキトは、庭の掃き出し窓の方を見る。掃き出し窓の前のカーテンに人影が映っている。

そして、《小さな番犬》の吠える声が一際大きくなった瞬間、庭の掃き出し窓が割れる音が響いた。不気味な手の影が大きくなり、内側の鍵をガチャッと外す音がする。

勢いよく掃き出し窓が開けられる音が響いて、遮光カーテンが一気にめくられた。


「失礼します! 『警察』です! 近隣の住民より通報を受けました!」

体格のいい二人組の男性警察官たちが、警察手帳を掲げてリビングに入ってきた。育ちが良さそうな若手警察官と捜査一課に配属されていそうなベテラン警察官のペア。二人の警察手帳の顔写真の下には、「巡査 蔵内栄司くらうちえいじ」「警部補 淀川善よどがわぜん」と階級と名前が記されている。若い警察官は血相を変えて、包丁で刺された父親の元へ駆けつけた。渋い顔立ちのベテラン警察官は業務無線らしきものをつかみ、「重傷者1名、腹部に刺し傷あり──」と淡々と状況を報告する。

操作系のギアを使うプレイヤーと戦っている最中に、「拳銃を持ったNPC」がリビングにあがっていた。

──美桜が操られてから10分も経っていないのに、警察が来るのは早すぎる。

──敵プレイヤーがギアを使う前に通報したとしか考えられない。

急いでレキトが優斗に警告しようとしたとき、錆びついた歯車を動かしたような音が聞こえた。天井から吊られた糸が、若い警察官の頭から手足につながっているのが一瞬だけ見える。若い警察官は目を丸くして、フリーズしたかのように硬直した。瞬き一つしなくなる。

そして、右手の感覚を確かめるように握って開くと、拳銃を納めたホルスターに手を伸ばした。

「蔵内くん、何をやってるんだ!?

「ち、違うんです、淀川さん! 体が勝手に動いて!」

若い警察官は叫んだが、彼の右手は落ち着いた手つきで拳銃の安全ゴムを外した。真円の銃口を優斗に向けて、引き金に人差し指をかける。

「おい、人の家でなに物騒なものを手にしてんだ」

若い警察官との間合いを一瞬で詰めて、優斗は拳銃の銃口を握った。操られた警察官が引き金を引く直前、握った銃口を上に引っ張って、天井に向けて発砲させる。素早く銃口から手を離すと、若い警察官の顔面に拳を叩き込んだ。そして、制服の胸ぐらをつかみ、後頭部をリビングの壁に叩きつける。

だが、次の瞬間、スカーット色のレーザー光線が優斗の背中を撃ち抜いた。リビングから至近距離で放たれた一撃。背後から撃たれた優斗は吐血して、フローリングの床に倒れた。レキトは目を疑って、対プレイヤー用レーザーを放ったアバターを見つめる。

「ふう、なんとか筋書きどおりだ」

渋い顔立ちのベテラン警察官は制帽を脱ぎ捨てる。「業務無線を模したケース」を外すと、地球のロゴが彫られたスマートフォンが中から現れた。