だが、赤色のスマートフォンを構えたとき、決定的なミスを犯したことに気づいた。騙そうと思っていた相手の言葉に引っかかって、「弟」の演技を止めてしまったことに。部屋に置いた姿見を見ると、そこにはプレイヤーとしての自分が映っていた。
──ケルベロ! ケルベロ! ケルベロ!!
《
目の前にいるアバターを「危険」として認識している。
「正直に言って驚いたよ。まさかプレイヤー同士が家族になるなんてさ。でも良かった。俺もみんなも心配してたからさ。後はお前をゲームオーバーにして、元の暦斗に戻せば解決だ」
晴れやかな顔になった優斗は、座っているデスクチェアをレキトの方へ回転させた。両目を閉じて、口元にスマートフォンのマイクを近づける。《小さな番犬》の吠える声が一気に大きくなった。このまま敵プレイヤーにギアを起動されたらまずい。レキトは前へ飛び出して、優斗からスマートフォンを奪おうと手を伸ばす。
だが、優斗は目を開けるだけで、デスクチェアから立ち上がることもしなかった。操作しているアバターがバグを起こしたかのように、青い瞳が左右に揺れる。奪うために開かれたレキトの手に向かって、素早く左手を伸ばして、その指をレキトの指に絡ませた。恋人同士が手をつなぐように、固く手を握りしめて、レキトが逃げられないようにする。
「──《
遊津優斗はレキトの手を握ったまま、低い声でギアを起動するように呼びかけた。