4話 You are ready!
いつも真っ暗闇の中で目覚めるたび、まるでゲームのロード中みたいだと思っている。頼助は枕元のヘッドボードに手を伸ばして、目元の「アイマスク」を外して「スクエア型眼鏡」をかけた。窓際のレースカーテンから朝日が差し込むベッドの上で、充電していたスマートフォンを手に取る。明るくなったスマホ画面にはカレンダーアプリの通知が届いており、今日がイベント当日であることを知らせていた。
「……いよいよか」
頼助はベッドから起き上がり、ユニット洗面台で顔を洗う。作り置きした青豆のポタージュをIHコンロで温めて、路地裏のパン屋で買っておいたベーコンエピと一緒に食べた。空になった鍋やスープ皿などの食器を洗って、布巾で水気を拭いて食器棚に戻す。冷蔵庫が空になっているのを確認して、電源に挿さっているコードを引っこ抜いた。
──今日ここから出て行けば、しばらくは帰ってこられないだろう。
頼助は高校の制服に着替えて、口の中へライムミント味のフリスクを一粒放り込んだ。奥歯でガリッと噛み砕き、「『Fake Earth』プレイヤー招待状」と題されたメールをスマートフォンから開く。
世界時価総額のトップを誇るIT企業のアーカイブ社が秘密裏に運営しているゲーム、『Fake Earth』。招待状のメールによれば、ネットの掲示板に書かれていた都市伝説のとおり、このゲームは仮想世界に入り込むフルダイブ型のVRゲームだそうだ。もしゲームクリアすることができれば、「賞金10億円」もしくは「どんな願いも叶えられるアイテム」を報酬としてもらうことができるらしい。ただし、万が一ゲームオーバーになった場合、「現実世界へ帰れなくなる」と注意書きが記されていた。
人間が仮想空間にフルダイブすることは本当にできるのか? 死ぬことと同等のペナルティーとは何なのか? まだ『Fake Earth』がどういう仮想空間を舞台にしているのかもわからない。なぜ運営のアーカイブ社が「能力の高い人」をプレイヤーに選んでいるのかも疑問だ。
頼助はLINEを起動して、凛子とのトーク画面を開いた。既読の文字がメッセージの上にないことを確認して、親指でスマホ画面を上にスクロールしてトークを遡る。1年前のやり取りまで戻ると、二人で撮ったプリクラの画像が貼られていた。写真の凛子は満面の笑みでピースしていて、頼助は照れ臭そうな顔で眼鏡をかけ直している。