次の日、たっぷり睡眠をとって昨日のしゆうたいなかったことに清算した俺は、簡単な朝食をすませてすぐにログインする。

 視界が暗転から明転すると、そこは木製の粗末なベッドが二つ並んだ部屋──はじまりの町の宿屋だった。

 少し遅れてダリアも現れる。

「おはよう」

『おはよ』

 目をゴシゴシしながら答えるダリア。

 あぁ、朝のあいさつを言い合うなんていつぶりだろう……こんな幸せがあっていいのだろうか?

 身振り手振りで伝えてもらっていた今までのコミュニケーション方法も好きだったが、会話ができることで正確につうできるし、彼女の好きなもの、嫌なこと、思っていることをなんでも聞くことができる。

「さーて、まず何をしようか」

『ダイキのご飯が食べたい』

 聞いた? 聞いたね?

 ダリアが俺のご飯食べたいって言ったよ。

 もうなんでも作りますとも。

『牛のやつがいい』

 朝からハードだけどヨシ!

「OK、任せとけ」

『野菜は抜きがいい』

「それはダメですよ……」

『お肉は牛二頭分くらいがいい』

「食べすぎだよ……」

『あーんで食べさせてほしい』

 あれ、ワガママが爆発してる。話せることをいいことにワガママ増してる気がする。

 服の袖をクイクイしながら、ダリアは上目遣いで俺を見上げた。

『ダメ?』

「ダメじゃない!」

 シンクロ恐るべし……。


*****


 山のようなステーキを食べさせながら、俺は運営からのメールに目を通していた。



[第3回運営イベントについて]06/06/20:00


こんばんは、Frontier World Online運営チームです。来る7/7 19:00から第3回運営イベントとなる[トーナメント戦]を開催いたします。客席にはあのエヴァンス王の姿も──?


○開催場所 石の町 コロシアム

○参加条件 原則制限なし、どなたでも


個人戦/混合戦/団体戦


これらのいずれか、または全てに参加できます。日程は7/7→開会式、個人戦 7/8→混合戦 7/9→団体戦、閉会式を予定しています。なお試合時間に現れなかった場合、5分経過後に不戦敗扱いとなりますのでご注意くださいませ。


豪華賞品について

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その他詳細なルールなど

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トーナメント戦Q&Aはこちら

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 これは以前、デルグブルーのイベントがあった日に送られてきたメールで、次回イベントの告知が主な内容だった。そして今日、新たに送られてきたメールがこれだ。




[第3回運営イベント賞品について]06/29/7:00


 こんにちは、Frontier World Online運営チームです。来る7/7の第3回運営イベントについての追加情報をお届けします。


 豪華賞品情報① 着ればあなたも王都の騎士に!? 参加者全員に《王都騎士のよろい》のセットを配布します。見た目だけのオシャレ装備ですが、手に入れられるのはイベント参加者だけ!


 豪華賞品情報② 個人戦上位入賞者には《王都騎士の武器》を配布! 自分の職業・スキルに合わせて選択できるオシャレな武器! 武器には王都の紋様がしようされています。


 豪華賞品情報③ 混合戦上位入賞者には《王都上級騎士のマント》を配布! 王に認められた数少ない上級騎士にのみ与えられる名誉あるマントです。これを着ればあなたも王都の守護者になれる!?


 豪華賞品情報④ 団体戦優勝賞者には《王の冠》《王女のテイアラ》を配布! エヴァンス王の無骨な冠と、おてん王女マリーが被っている可愛かわいいティアラです。友人や恋人と参加してみてはいかがですか?


 その他、各部門の優勝者、準優勝者、3位には更なる豪華賞品が!? 詳しくは下記URLから確認できます→ http://**********


 ※これらはイベント終了後に配られます。



「豪華賞品かぁ……」

 参加者全員ということは、もちろん召喚獣と共に参加すれば召喚獣用の鎧なんかももらえると考えていいんだよな? ということは、ダリアに王都騎士の鎧を着せることもできるわけだ。

 王都騎士の武器やマントも魅力的だな。

 けど一番はやはり──

「ティアラが欲しいな」

 ダリアに絶対絶対絶対被せたいんだが?

 王都の城をバックに写真撮りたいんだが?

 腕を組んでドヤ顔でティアラを被ってるダリアの姿が容易に想像できるな。

「やるか、団体戦……」

 正直俺一人では何もできないから個人戦は参加する気がなくて、やるとしたら団体戦と混合戦かなぁと思っていた。

 ただ、二人でエントリーする混合戦なら問題ないが、団体戦は6人での登録が必要となる。

 つまり他プレイヤーと共闘は必至だ。

「でも共闘してくれそうな人がいないんだよなぁ」

 俺の知り合いで戦闘にけた人達となると、そのほとんどがもんしようギルドのメンバーだ。当然彼等は彼等でギルド単位で参加するだろうし、ましてや部外者の俺が、アリスさんやぎんかいさん、テトさんやてんさんというギルドトップクラスのメンバーにアプローチするなんてできない。

 ケンヤは参加しないだろうな……むしろかせどきだとか言ってイベントのために必死で装備をこしらえてる頃だろう。

 デルグブルー戦で一緒になったうどんさんは参加するだろうか? いや、でもこちらの都合的に彼女を誘うと被ってしまうからダメだ。

『何を悩んでるの』

「あ、ごめんごめん」

 ステーキを運ぶ手が止まっていたことで、俺が別のことを考えていると察したようだ。自分でムシャムシャと肉を食べだすダリアに事情を説明する。

『なら菖蒲あやめを誘えばいい』

「菖蒲さんかぁ」

 戦力的には申し分ない。

 申し分ないが、果たして彼女はダンジョンから出てきてくれるのだろうか?

「確かに青龍が参加した時点で勝ち確定みたいな気もするけど……」

 なんせレベル100はシンプルに強すぎる。

 しかし彼女を説得できそうな材料がない。

「菖蒲さん達が乗ってくれるかどうかはさておき、とりあえず先にこちらの参加メンバーだけは確定させておこうかな」

 ダリアが完食したのをはからい、俺達はとある場所を目指す──そこは俺とダリアにとって、最も大切な場所だった。


*****


 町から出てしばらく歩き、洞窟にたどりつく。

「この場所のこと覚えてる?」

『うん。忘れるはずない』

 そうつぶやくダリアは懐かしむように微笑ほほえんだ。

 ここは俺の人生を変えた場所。

 ここは俺とダリアが初めて会った場所だ。

 俺は今日、この大切な場所で新しい召喚獣を迎える。今後召喚獣を仲間にする時も、俺は絶対にこの場所を召喚の場に選ぶと思う。


 召喚可能数:3(残り2)


 召喚獣は召喚士がレベル1の時に1枠、以降はレベル20ごとに呼べる数が1枠増えていく。なので現在のレベル47で呼べる総数は3枠ということになる。

「とりあえず呼ぶのは1枠かな」

『わくわくどきどき』

 肩車されながら足をバタバタさせるダリア。

 ダリアもこの瞬間をびていたようだ。

 呼ぼうとすればダリアの他に2枠呼べるが、回復役ヒーラーが来ればひとまずの目標は達成なので欲張らずに抑えようと思う(俺の許容量がオーバーしかねないし)。

「さて、どうしようかな」

 召喚の部分をタップすると、召喚獣の種類を決める画面が現れる。

 選べるのは主に役割で、物理近距離アタッカーをはじめ、攻撃距離によっても細かく設定できるのは魅力的だ。ダリアは魔法遠距離アタッカーなので、物理近距離アタッカーなどを呼べばポジションが被ることはないだろう。

 とはいえ今はヒーラーだ。


 召喚獣タイプ指定中

[メイン:回復魔法]

[サブ :    ]


 ヒーラーを選ぶと、サブポジションというのも選べるようになる。ここにたとえば盾役タンクを選択すれば、回復メインで立ち回りつつ、自分を守れるような戦闘スタイルができるだろう。

「俺はタンクと強化バフ弱体化デバフで、ダリアが遠距離魔法だからなぁ……」

 足りてない戦力を補うなら物理攻撃もできるヒーラーということになるが、本来のヒーラーとしての力が落ちるのは本末転倒だ──だからサブは選ばない。

 俺は純粋なヒーラーを求む。

『ダリアのおやつキープしなきゃ』

 取り出したきんちやくぶくろをひっくり返すと、数十個の魔石が落ちてくる。背中をするすると降りたダリアがいくつかポケットにしまいながら、興味津々な様子で見上げてくる。



「我が呼び声に応えよ 召喚サモンモンスター!」



 足元に魔法陣が現れ、まばゆい光を放つ。

 空から何かのシルエットが魔法陣にポタリと落ちると、そこから生まれた光が四本足のけものの姿へと形を変える。

 シルエットは犬よりも小さく、猫よりは大きい。ずんぐりむっくりとした体型である。

 光が収まると、呼び出された召喚獣はのそのそとフィールドを歩き、俺の足元でゴロンと横になった。

 茶色の毛におおわれた愛らしく丸々とした体。

 眠たそうにうるむつぶらなひとみ

 黒い毛で覆われた手足は細く短い。

「か、かわいいー!」

『もふもふだぁ』

 新しい仲間を前に二人して大盛り上がりである。

 げつるい最大の体を持つとされる、かなりユルい外見のねずみ──カピバラ。

 定番のもふもふ。

 ダリアのようないやしもアリだが、見てよし触ってよしの癒しも欲しかったのは本音だ。

 獣タイプである分、コミュニケーションはづらいかもしれないが、そこは昨日会得したシンクロがあれば全く問題ないだろう。


召喚獣 Lv.45

親密度 5/200

化鼠族

満腹度 85%

体力_274

魔力_2,675

物理攻撃力_54

物理防御力_64

魔法攻撃力_54

魔法防御力_64

回復魔法力_576

支援魔法力_74


スキル

[回復魔法 Lv.1][魔力強化 Lv.1][薬剤師 Lv.1][アイテム効果上昇 Lv.1][分配 Lv.1][回復魔法の心得 Lv.1][緊急睡眠 Lv.1][超回復 Lv.1][め Lv.1]未解放 Lv.


 うれしいことにレベルが俺とダリアの平均をとっているらしく、わざわざレベリングする必要がないのは助かる。

 回復一本に絞ったため攻撃力や素早さに期待はできない。ただ、その点かなり強力なスキルを備えているのがわかる。

 ヒーラーの心臓部分とも言える回復魔法に加え、魔力強化や回復魔法の心得などのサポートスキルも充実している。

 薬剤師はその場にあるモノで即席の回復薬を作れるようになるらしい。

 アイテム効果上昇は文字通り、自身へのアイテム効果を上昇させるpassive常時発動型のスキル。薬剤師と組み合わせたらかなり使いやすそうだ。

「これが特に凶悪だな」

 中でもひときわ異彩を放つスキルを指ででる。

 分配は自身のLP・MPを任意の数値をメンバーに分け与えるactive任意発動型スキルだ。

 自身の限界数値以上は分け与えることができないものの、味方のLPだけでなくMPの管理までできるのは本当に強い。ダリアがMPを際限なく使っても、分配でMPを分け与えればMP切れの心配がなくなるわけだからな。

「そしてそれを支えるのが睡眠系の数々か」

 緊急睡眠はLP・MP切れを残り1で抑える効果と、強制的に睡眠の状態異常になる代わりに、自身を急速回復させるスキル。このスキルで睡眠した場合、耐久が上昇するおまけ付きだ。

 そして睡眠状態だと超回復が発動し、自然回復がめちゃくちゃ早くなる。更に寝溜めスキルは睡眠時間をストックすることができるようになり、きたえれば緊急睡眠→コンマ数秒で全回復! なんていう芸当もできそうだ。

「これは選択できないんだな」

 そして未解放とかいうのがひとつある。

 これはシンクロの説明とは違い、全く詳細すら見ることができないようだった。

「しかしなんというか……」

 緊急睡眠、超回復、寝溜め。

 なんかダラけてるスキル多くないか?

 寝ること前提なスキルが3つ。しかも体力満タンなのにもかかわらず、召喚後に速攻で寝てるし。

「おーい起きてー」

 新人カピバラをユサユサ揺らす。

 しかし不機嫌そうにうなるばかりで、全く起きようともせず、しまいには寝返りを打った拍子にゴロゴロと遠くの方へと逃げ転がっていった。

「さぁて、手のかかる子が増えたぞ」

 新人を抱きかかえながら洞窟を出て、木陰の芝の上にソッと置く。相変わらず気持ちよさそうに寝息を立ててるので、頰をつつきながら気長に起きるのを待つとしよう。

『ダリアは手のかからない子?』

「ダリアも十分手がかかる子だよ」

 そう答えるとダリアは得意げな顔をした。

 まぁ手がかからなすぎても遠慮してるのかと不安になるし、ふてぶてしいくらいが丁度いいかもな。

 しばらく頰をふにふにしていると、流石さすがに鬱陶しかったのか、新人が欠伸あくびをしながらムクリと起き上がった。

『なーにー?』

 間伸びしたような声が響く。

 声から判断すると女の子のようだ。

「突然呼んでごめんね。俺はダイキ。俺が君を召喚したんだ」

『ダリアはダリア。おねいさんだよ』

 俺達が挨拶すると、新人は『ご丁寧にどうもー』などと言いながらちょこんと座り、鼻をひくひくさせながら俺達を見た。

 動物園で見たことのあるカピバラよりは小さく、まだ成体ではないのかもしれない。

『わたしの名前、あれ……わたしの名前はー?』

 うーんうーんと唸っている新人。

 そうだ、名前をつけてあげなきゃだな。

 唸りながら船をぎはじめたこのきつすいの眠り魔にどんな名前をつけてあげようか──



『──お父さん。なんでこれは〝眠り草〟って名前なの?』

『いいかだい、よく見とけよ?』

『わ! 葉っぱが閉じたよ!』

『ネムリグサ。別名オジギソウはね、こうやって刺激を受けると葉っぱが閉じるって性質があるんだよ。面白いだろう?』

『なんだか臆病なやつだね』

『そうか? お父さんはこの子好きだけどな』

『ちょっと触っただけで隠れるなんてかっこよくないよ』

『でもな大樹。葉っぱを閉じることで外敵から身を守れるし、葉の開閉で日光の量を調整することもできる。この子はすごく合理的で賢い植物なんだ──』



 不思議な植物にも、その構造にはれつきとした理由がある。だからこの新人の睡眠にだって、本人しか知らない理由があるのかもしれない。

「それじゃあ君の名前は〝ネム〟にしよう」

 ネムリグサの優れた自己防衛能力は、パーティ生存のかなめであるヒーラーにとって不可欠な要素。そして常におねむな彼女の名前にピッタリだ。

 新人はうんうんとうなずいている。

『ネムかぁ。いいかもー』

 どうやら気に入ってもらえたようだ。

 それにしても、名付けのタイミングで父とのエピソードが思い浮かぶのはだろう。それも今まで忘れていたような、一度だけ連れて行ってもらった植物園でのわいない会話だ。

「さて、新人歓迎会でもやりますか!」

 うちがいかにホワイトでアットホームで素晴らしい環境なのかをアピールするため、俺はさっそく野営術を発動しログハウスを呼び出した。

 ダリアがネムを抱っこして中へと入っていく。

『これはいい家だー』

 ネムの反応も上々だ。

「ネムはどんな食べ物が好きなの?」

 まずは好みの把握からいこうじゃないか。

 俺は料理人の服に着替えてをする。

『んー、わかんないなぁー』

「おっと、一番困る返答」

 それなら品数を増やすまでよ。

 ストレージから様々な素材を取り出し、刻み、たたき、いて、洗い、つぶし──色々と奮発しながら料理の準備を進めているその途中、俺はとある違和感を覚えた。

 あれ? 果物がない?

 デザート用に用意していた果物類がなくなっており、刻んでおいた野菜も減っている気がする。しかも残ったリンゴにはご丁寧に二本の鋭い歯形が残っており、キッチンを背に丸くなっている犯人を見つけた。

「つまみ食い禁止!」

『体が勝手にー』

 持ち上げられたネムは、抵抗する様子もなくだらりと体を垂らしながら、太々しくリンゴの残りをかじっている。

 そうだ! こういう時は俺が教えるよりも、先輩であり姉であるダリアに指導してもらう方がいいかもしれない!

「ダリ……」

 言いながらダリアを探すと、魔石をボリボリ食べながら自分の部屋に入っていくダリアを見つけた。

 ダリアが顔だけ出して、ニタリと笑う。

『果物に目をつけるとはいい趣味だ』

『姉様もねー』

 などと、ネムも悪戯いたずらな笑みで返している。

「二人ともマイペースとは思わなんだ」

 手がかかると言われてドヤ顔していたくらいだし、もはや今更か。しかしこれだけは言える──欲張って最大数召喚しなくて本当によかった。


*****


「ということで、新しく家族になりましたネムです」

『お手柔らかにー』

 そんなこんなでトーナメントの勧誘も兼ねて、菖蒲さんの所へやって来た俺達。今回はアーサーに襲われることもなく、安全に辿たどくことができた。

「ふむ、また違うベクトルで可愛い子を仲間にしたのう」

『マーシーと話が合いそうだ』

 歓迎ムードで出迎えてくれる菖蒲さん──と、青龍。

「あれ……対侵入者用に待機してなくていいんですか?」

わがはいがその気になれば殺気を飛ばすだけで侵入者の動きをさせることも可能。それからゆっくり戻って倒せばいいだけの話』

 レベル100の殺気はさぞ恐ろしいだろうな。

〝私の畑を案内します!〟

『オラの牧場も案内するズラ』

『え? 嬉しいー行く行くー』

 アニィとマーシーがネムを畑に連れて行ってくれる様子をながめていると、菖蒲さんが神妙な面持ちで話しかけて来た。

「ダイキ君。折り入って相談があるんじゃが……」

「はい? なんですか?」

 気まずそうに指を合わせながら彼女が呟いたのは、まるで想定外の言葉だった。

わしらと一緒に次のイベント──団体戦に参加してはくれないだろうか?」

 向こうから持ちかけてくるとは予想外だ。

 こちらとしても願ってもない話だけど、なんでまた俺達を?

「今日メールが届いたろう? あれに添付されていたURLに賞品の画像が貼られていたんじゃが……」

 そう言いながら、声をひそめる菖蒲さん。

「アニィがすごく気に入った様子でな。でもあの子は遠慮するから〝別に欲しくないです〟なんて言うんじゃ」

 なるほど、そういう事情か。

 ティアラくらいならマーシーが作れそうに思えるけど、何か特別気に入るようなデザインだったのかもしれない。

「無理にとは言わない、そもそも出場する気がないなら──」

「やりましょう! ぜひとも!」

「ほえ?」

 人数分貰えるということなので、ダリア、ネム、アニィがおそろいのティアラを被った姿が見られるかもしれない。

 それを見るのは義務で、使命で、なんとしても取りに行くべきだ。

「イベントは今日でしたっけ? 絶対勝ちましょうね!」

「待て待て、イベントは来週じゃ」

 そうだっけ? あぁそうかもしれない。そうだよ、イベントは来週だったな……なんだよ来週か。

「参加に意欲的でありがたい。こちらは儂とアーサー、そして青龍で出ようと思う」

『足を引っ張るなよ』

 迫力のある顔面が近付いてくる。

 青龍がいるなら俺達は単なる数合わせで棒立ちしてても良さそうだな……。

「ならうちは俺とダリア、ネムでいきますね」

「最強メンバーじゃな」

「この3人しかいませんからね」

 菖蒲さんチームはアーサーと青龍。その二人に比べるとアニィとマーシーは戦闘面では少し劣っているのかもしれない。

『最強メンバーか』

 青龍は目を細めて小さく笑った。

『〝姫〟がいるなら最強という言葉もあながち間違ってはないかもしれん』

 姫? あぁ、菖蒲さんのことをそう呼んでるのか。しかもダンジョンにこもる前はバリバリの攻略勢だったと言ってたし、もしかして菖蒲さんも相当な実力の持ち主?

…………

『ファッファッファッ!』

 ジト目のダリアに見つめられながら青龍はズリズリとその場を去っていった。

「でも今のままでは俺達があまりにおんぶに抱っこ状態です。トーナメント開催までに少しでも実力を近づけられるように調整してきます」

 青龍達の強さに便乗した勝利では何か違う。

 全員一丸となって勝利をもぎ取りたい。

「そんな気負わんでもいいんじゃぞ」

「いやいや、できる限りのことをしておきたいですから」

 この主張を譲る気はないことが伝わったのか、菖蒲さんは小さく頷くと、ひとつアドバイスをしてくれた。

「ふむ──レベル上げというなら〝レイドダンジョン募集〟に参加してみるのが一番かもしれんの。連動するクエストを受けながらクリアすれば、かなりの経験値が見込めると聞いたことがある」

「レイドダンジョン募集ですか……」

 かつてデルグブルーのメンバーを募った時に、銀灰さんがやってくれたのがそのレイド募集だ。

 あの時はボス戦で、今回はダンジョン。

 俺達にとっては未知の領域だ。

 でも菖蒲さんが言うなら試してみる価値はあるだろう。

「菖蒲さんも利用しているんですか?」

「儂は緊張しいだから他の人とは遊ばんよ」

 そう言って彼女はわっはっはと豪快に笑う。

 話している限りそんな雰囲気はないけどなぁ。

 そう言いながら、菖蒲さんはメニュー画面から募集掲示板へと進みレイド募集一覧を見せてくる。そこには参加可能レベルやすいしようレベル、集まっている人数や役割ごとのマークが記されていた。

 それを眺めながら菖蒲さんが呟く。

「この中なら剣王の墓ダンジョンがダイキ君の適正か。この〝初見専用〟と書かれている募集には、ダンジョンの構造や敵の詳細について未予習のプレイヤーでも安心して入れるのが魅力じゃよ」

 大人数参加のダンジョンを未予習かぁ……。

 全く無知では少し怖いし、参加前に軽く動画で予習してから臨んでみるか。