前回までのあらすじ

 会社の同僚けんに誘われ[Frontier World Online]を購入しただいは、きずなを求め召喚士となり、召喚獣ダリアと出会った。ダイキは今は亡き家族との時間を取り戻すかのように冒険をはじめる。

 エリア開拓で目立ったり、ダリアを肩車して掲示板の人気者になったり、一人ぼっちのドワーフを手助けしながら迎えた最初の運営イベントで一位の成績を残し、二人の存在は広く世に知られることとなった。

 その後、ありダンジョンでダリアお気に入りのぬいぐるみをゲットしたり、孤児の盗賊を救ったりしながら日本最大ギルドもんしようのマスターやサブマスターとも交流し、ますますにぎやかにすごす二人。

 転職と進化を経て、二人の絆はより深まった。

 ケンヤに可愛かわいい防具を作ってもらいごまんえつのダリア。そして迎えた二回目の運営イベントで大規模戦闘に参加。しかし即席レイドではチームワークも何もなく、ただ無抵抗に返り討ちされてしまう──しかし一緒だった紋章ギルドサブマスターのTeto-poテト・ポー主導のもと、同じく紋章ギルドサブマスターでトッププレイヤーのぎんかいをはじめ有能なメンバーを集め再挑戦! 見事、日本最速撃破をげたのであった。




 Frontier World Online...




 違いに気づいたのはコロッケを作った時だった。

「レシピが同じでも材料如何いかんで全く違う!」

 目の前にはいもの種類が違う三種類のコロッケがある。

 右からだんしやくいも、メークイン、インカのめざめ。

 見た目では全く分からないが、食べてみると食感がまるで違う。

「これが男爵芋がすいしようされてる理由か……」

 男爵芋は粉っぽくホクホクしているのが特徴的で、コロッケなどに最も適した種類だとレシピにそう書いてあった。メークインは逆にねばりが強く煮崩れしにくいため煮物やカレーの材料などに向いていて、インカのめざめは双方のいいとこ取りだが味が独特かつあまり見かけない。

 普段俺が何気なく食べていたそうざいコーナーのコロッケは、恐らくこの男爵芋を使ったもの。他二つも美味おいしいが〝らしさ〟を最も感じるのは男爵芋だと断言できる。

 食レポをメモ帳に書き記していく。

「……これならダリアもバクバク食べてくれるかもな」

 最近の悩み──それはダリアの野菜嫌い。

 最初は野菜を食べたくない、美味しく感じないから残しているのだと決めつけていた。ワガママが加速しているのだと思っていたが、彼女を責める前に自分自身に問いかけてみた。

 本当にベストを尽くしたのか? と。

 世のママパパは工夫をらして子供にご飯を食べさせている。育児動画を見る限り、盛り付けの工夫であったり、人形を使ったりとやり方は様々。極論「嫌いなものを好きにさせる」方法があるならそれが一番だ。

 嫌いなものの定義も様々だが、ダリアは単純に「味」を苦手としている様だった。様々な料理に野菜を混ぜて様子を見ていたが、もっと根本的なところに問題があるように思えた。

 たとえばこのトマト。

 トマトの種類はなにも大玉、中玉、ミニというサイズの違いだけではない。これらにもじゃがいものように名前や味の違いが存在する。ならば比較的ダリアが美味しいと思える種類を選択して調理すべきではないか……俺はそういう結論にいたったのだ。

 買ってきた本を広げペラペラめくっていく。

「まずはトマトの種類と栽培方法から……」

 満たされないこの探究心。

 ここには、素材が完成品と成るまでの大切な要素──それは気温であり、水分量であり、日光量であると書いてある。素材への深い知識と理解が、料理をより美味しくさせるともある。

「そうか……だから自分で産地巡りをしたり栽培管理する料理人が多いのか」

 これは野菜のみに限った話ではない。

 究極的にいえば、理想の料理のために理想の素材を作れば、至高の味に辿たどく。

 つまりこれが〝食〟というものか──!


*****


「いや、普通はそこまでこだわらないんじゃない?」

 出社後すぐに、ベテランママであるパートのなかさんにその話をしたところ、田中さんはちょっと引いたような顔でそう答えた。

「で、でも味の違いがありますよね? 食感だって違います!」

「確かに違うけどさいな差じゃない?」

 俺はかばんに入れておいた野菜の栽培方法の本をドンと置き、付箋のページを開いてみせた。

「でもこれ見てください! 栽培方法を工夫するだけでこれだけ甘みが増すってデータがあるんです! 比較的糖度の高い品種を選べばもっと……」

 田中さんは面白そうにそのページをながめながら、俺の言葉をさえぎるようにこう言い切った。

「味の違いがわかるのはもう少し子供が大きくなってからじゃない? 子供はね、たとえそれが大好きな戦隊ヒーローの形をしていても、嫌いな野菜ってだけで食べてくれないのよ」

「そんな……」

「〝見た目に警戒して食べるに至らない〟これが最大の難所よね。細切れにした野菜をハンバーグとかカレーに入れたほうがまだ食べるかもしれないわ」

 確かにそう、確かにそれはそうだけど……。

 それでは栄養を摂取できるかもしれないが、その野菜そのものをこくふくしたことにはならない。

 野菜を好きにさせることは不可能なのか?

 背伸びしながらロッカーのほうを眺めていた田中さんは、おーいおーいと人を呼んだ。

「大樹君の理想はよーく伝わったわ。栽培方法にこだわるってことなら、私よりもくさかべさんの方がいいと思うわ」

「清掃員の草壁さんですか?」

「そう。あの人趣味で農業やってるから、保育園のお芋掘りイベントに場所を提供したりしてるの。話してみたら面白いかもよ」

 なるほど! くわしい人に聞けるなら一番だ!

 こちらにやってきた草壁さんは、日焼けした頭を下げてはにかんだ。俺もしっかりおをした後、農業トークに花を咲かせたのだった。


*****


 どんてんの空、白銀の世界。

 風は荒々しく、視界はすこぶる悪い。

「ううう、寒い」

 俺達は吹雪ふぶく雪山の中にたたずんでいた。

 少し前に火山があったかと思えば今度は雪山……そんな非現実的な現象は、ここが「ゲームの世界」であることを再認識させてくれる。

 もちろんVRでの話なので、仮に装備が半袖でも寒さを感じる事はないが、こうも吹雪いていると寒気を感じずにはいられない。

「大丈夫か?」

 肩車されているダリアはペチペチと頭を叩く形いつもので答えながら、「早く進め」とでも言いたげに先の道を指差した。


 スノー・ラビット Lv.43

 スノー・カウ   Lv.44

 アイス・エイプ  Lv.45

 アイス・イーグル Lv.45


 出てくる敵はどれも氷の属性を持つモンスターでレベル的にはいよいよ格上だ。しかし相手は火属性が弱点というのもあり、なんとか進めている。

 ちなみに〝スノー系〟と〝アイス系〟の違いとしては、スノー系だと雪国の生物(分厚い毛皮におおわれていたり、体毛の密度が高いなど)といった見た目で、アイス系は完全に氷細工の像のようなものだ。

 要するに前者は食べられて、後者は食べられない。

 頭上でボリンボリンとみような音が響く。

「それあめじゃないぞ?」

 どうやらダリアが氷をかじっているらしいので、俺は魔石を数個取り出しダリアに渡した。

 カロカロと音が聞こえてくる。

しようもうひんにはまだ余裕があるけどなぁ……」

 目を細めて道の向こう側をえる。

 先に進むにつれ視界の悪さは更に増してゆくばかりで、モンスターからの奇襲に気付かず、一撃もらう事も増えてきている。

 このまま進むのは無謀かもしれない。

 それに厄介なのはモンスターだけではない──

「継続ダメージが絶妙にツラいな……」

 問題は環境特性による〝dotダメージ〟。

 装備には防寒機能や防暑機能が備わっているものがあるが、こんな雪山をそれらなしで進むのは厳しいと言わざるを得ない。

 数値にして5秒間に1%の体力減少。

 その上、どんの呪いが付与されてしまうため、体の動きにかなりの制限が課せられる。

 具体的にはパリィが確定で失敗してしまう。

 寒さが原因なのは明白だし、火山の時のようなケンヤのバックアップ対策はないので、本格的に進むならしっかりと寒さ対策を講じた方が良さそうだ。

「ちょっと休憩しようか」

 俺の言葉にダリアがペチペチと同意する。

 俺は控えスキルから[野営術]をセットし発動する──と、視界の横に、こぢんまりとしたログハウスが姿を現した。


*****


「は──生き返る……」

 野営術の中はかなり頑張って改造したおかげもあり、安らぎの空間が広がっていた。

 広いキッチンと外の景色が見える大きな窓、そしてパチパチと音を立てるだん

 窓からはもう吹雪ふぶきが見え、風の影響でガタガタと音を立てて揺れている。

 ダリアを着替えさせた後(れてはないが気持ち的にそうしたかった)暖炉に近い席へと座らせ、俺は調理服へと着替えキッチンに素材を並べた。

 俺達の休憩といえばイコール腹ごしらえだ。

 材料は先ほど狩ったスノー・ラビットとスノー・カウの肉。二種とも白い体毛に覆われており、肉が引き締まっているのが特徴的だ。

 まずスノー・ラビットの骨とあぶらずんどうに入れ、にんじん、玉ねぎ、長ねぎなどを入れてあく取りをしながらじっくりコトコト煮込んでいく。

 待っている間に鉄板でスライスしたニンニクとスノー・カウの肉を焼いてステーキを作っていくと、リビングにこうばしい香りが広がった。

 ダリアが鼻をひくひくさせながら、フォークとナイフを手に「いいぞいいぞ」と盛り上がっている。

 ステーキが完成した頃、あっという間に出汁だしも準備完了。そこへ肉と人参、じゃがいも、ほうれん草を入れてホワイトソース、そしてスノー・カウの牛乳を入れて煮込めば完成だ。


[スノー・カウのステーキ]

評価:91点

説明:れいな焼き色に仕上がりました。ガーリックの風味が食欲をそそりますね。

効果:物理攻撃力+10/魔法攻撃力+10/獲得経験値量+7%/氷属性攻撃強化/効果時間:20分間


[雪山のホワイトシチュー]

評価:95点

説明:しっかり出汁を取って味に深みが生まれました。これを食べたら体の芯までポカポカ。

効果:物理攻撃力+12/魔法攻撃力+13/獲得経験値量+8%/氷属性防御増加/効果時間:25分間


 評価点も上々、狙っていた〝防寒〟は付与されなかったが、これを食べればこの先25分間は氷属性に耐性がつく(効果の高いものが優先されるため今回はシチューの効果が適用される)。先ほどよりも少ないストレスで雪山を進むことができそうだ。

「いただきます」

 二人並んで料理をパクつく。

 同時に、口内に広がる肉のうまと香り。

 シチューは濃厚で温かく、そして旨い。

 隣には幸せそうにステーキを齧るダリア。

 ん──至福のひと時……。

 カレーやシチューの強みは、野菜も肉も一緒に食べてくれるというところ。好き嫌いが激しくなる最近では、混ぜてもバレない料理が主なメニューとなりつつある。

「あっ!」

 少し目を離したすきに、ダリアが野菜類を俺の皿に引っ越しさせ終えていた。そして自分の皿を抱えるようにしてニヤリと笑い、こちらを警戒しながら食事を続けている。

 まさにを見るにびん──

 シチューでも野菜を残すとなるといよいよだな。

 それにしても、

「細かい種類が用意されてないとは……」

 Frontier World Onlineでは農業・漁業などひと通り遊ぶことはできるものの、リンゴを例にするとわずか二種類(赤いリンゴか青いリンゴかの違いしかない)だし、トマトやじゃがいもなんて数種類しか存在しない。

 これでは時季ごとに材料を変える工夫なんてできない。

 俺は山盛りになった野菜達をスプーンでつつきながら、今後のメニューと工夫について考えを巡らせるのだった。


*****


 そんなこんなで雪山産の料理をたんのうした俺達は、まいになる前に来た道を引き返していた。氷耐性こそ手に入れたものの、戦闘する上での不便さは残ったままだし、視界の悪さは改善されていないからだ。

「この視界じゃボス戦なんて戦い抜けないよな」

 雪山攻略に必要なのは、視界を守るゴーグル的な装備と防寒具。

「目ぼしいスキルもないしな……」

 そうぼやきながらスキル欄をスライドさせていくと、一つのスキルが目に留まった。


[スキル:シンクロ]

※ 条件が満たされていないため発動できません


 そういえばこんなものもあったな。

 確かいにしえの召喚士に転職した際に得たスキルだけど、いまだに使うことはできないようだ。

 条件が満たされてない──

 要するに俺かダリアに何かが足りてないってことなんだろう。ノーヒントだなんて運営も意地悪だ。

「これ、どんなスキルなんだろな」

 ダリアはただ前を見つめている。

 シンクロは訳すと「同調」という意味になる。

 名前からして現状を打破できるたぐいのスキルではなさそうだが、召喚士のクラスアップで得たスキルということをかんがみるに、ダリアと俺の何かを同調させる効果があるのかもしれない。

 たとえば視界とか、思考とか、ステータスとか。

 視界が同調されれば単純に死角が減る。

 思考が同調されれば連携の練度が上がる。

 ステータスが同調されれば、俺の魔力分、ダリアの火力が上がるかもしれない──これらいずれか、もしくは全ての効果があるのだとしたら破格の性能を誇るスキルだ。

 間違いなく戦闘の幅は広がるだろうな。

「あるいは召喚獣を増やす、か」

 火力が上がれば戦闘は楽になるし、盾役タンクが増えれば長期戦もなんのその。特に回復役ヒーラーを仲間にできれば防寒グッズも不要になる。

「お、出口が見えてきた」

 そんなこんなで無事出口に辿り着くと、ダリアがスルスルと肩車から降り、珍しく独り立ちして先を歩き始めた。

 気持ちの変化かな?

「危ないからあんまり先に行かないでくれよ」

 ダリアはその場で足を止めこちらを振り返る。

「──え?」

 彼女の顔はどこかさびしそうに見えた。


*****


「お。れいほうふもとまで進んだのか」

「知ってるのか?」

「知ってるさ。攻略のために防寒具をつくろってほしいって依頼も何件か来たことあるからな」

 手慣れた動きで注文品を納品していくケンヤは、汗をぬぐいながらこちらに向き直る。

「先に言っておくけど、霊峰を登るのはまだ早いぜ」

「え、難易度高いの?」

うわさによると適正レベル70~80とかなんとか。正規ルートは洞窟を抜けた先で、その辺なら適正レベル45くらいらしい」

 確かにそっちが正規ルートっぽいな。

 今度は何かの皮をなめしながらケンヤが続ける。

「雪山を攻略するのは諦めて、麓から洞窟へと抜けることを考えた方がいいかな。氷耐性があるならゴーグルだけ用意するけどどうする?」

「いや、せつかくだし防寒具一式ほしいかな」

 主にダリアが着たところを見たいだけだが。

 俺の思考を見透かしたかのようにニヤつくケンヤは、首を伸ばすようにして、その辺の展示品を見つめるダリアに視線を向けた。

「時にダイキよ。ダリアじようとなんかあった?」

「何もない、と思うんだけどなぁ……」

 雪山からダリアの態度が少し変わった。

 分かりやすいところでいうと、以来ダリアは肩車をせがまなくなった。それだけでなく、先導するように自分の足で歩くようになっている。

「何もないってことはないだろ。あんなにベタベタだったのに、反抗期か?」

「反抗期? 反抗期なんてあるのか……?」

「デジタルの存在とはいえダリア嬢も精神的に日々成長してるならあり得るんじゃね?」

 そうか……考えてもみなかった。

 見た目の年齢は変わらなくても、冒険する中で彼女も成長しているのかもしれない。

「単に怒らせてるなら早めに仲直りしておけよ。俺なんてこの間、嫁さんに装備品を定価で売りつけたのがバレて、二日間口きいてもらえなかったからな」

 などと笑うケンヤ。

 ケンヤの奥さんもFrontier World Onlineをはじめたらしく、最近は二人で綺麗な景色や美味しい料理を食べて旅行気分を味わっているのだとか。

「と、話を戻すけど、防寒具一式を二個セットでいいか? それと、もろもろの事情があってしばらく遊べないから、渡すのは明後日あさつてになるかも」

 申し訳なさそうに頭をくケンヤ。

 諸々の事情とはもちろん奥さんの事だろう。

「うん、それで大丈夫。よろしく頼んだ」

「あいあい。というか、その都度装備をそろえるのも面倒だろうし、いっそヒーラーを仲間にする手もあるぞ?」

「装備屋にあるまじき発言だ……」

「ま。友人からのアドバイスだと思ってくれ」

 確かに、火山や雪山だけでなく、毒の沼や菌の森など対策が必要なエリアは無数にあると聞く──そこで活躍するのがヒーラーだ。

 ヒーラーは体力の回復はもちろん、状態異常の回復、環境特性への防護や強化も得意としている。それに、パーティ戦闘では一人は必須というのが相場らしい(今のところダリアの火力ゴリ押しでここまで来られたけど)。

 俺がスキルを取得してヒーラーをになってもいいけれど、タンクと強化役バツフアーにヒーラーの仕事まで増えるのは流石さすがに自信がない。その上、耐えながらえいしようができない関係上、手数の多い相手にはジリ貧となる。

 その点、ヒーラーを召喚獣にゆだねられるならきっと戦闘も楽になる。俺とヒーラーでダリアを強化できれば火力も更に上がるだろう。

 戦力の増強はメリットしかない。

「実はそれも考えてる。毎回誘うのも気が引けるし、いっそ新しい召喚獣をヒーラーにしようかなと思ってたところなんだ」

 ただし、問題点がひとつ。

「ただ……ダリアがどう思うかな」

 これまで気ままな二人旅をしてきた。ここにきて仲間が増えると聞いたら、ダリアはどう考えるだろう。

「ふーん」

 何かを察したようにニヤつくケンヤ。

「ダリア嬢が怒ってるのって、お前が召喚獣を増やそうと考えてるからじゃねえの?」

「あっ」

 そう言われてみると心当たりがある。

『あるいは召喚獣を増やす、か』

 ダリアの態度が変わったのはその言葉の直後だ。つまり、何の相談もなしに新しく召喚獣を迎えるのが納得いかなかった可能性がある。

「ダリア、ちょっといいか?」

 妙なかぶとを被っていたダリアを呼び寄せる。

 しゃがんで顔をのぞむと、彼女の目線は別の方を向いているように見えた。

「相談もなしに新しい召喚獣のことを口にしたのが嫌だったのか?」

 ダリアからのリアクションはない。

 無表情のままうつむいている。

「ただ、将来的に俺達だけではどうにもならない敵が出てくる可能性がある。さっきみたいに進めない道が出てくることもある。トーナメント次のイベントに備えるためにも、回復要員の召喚獣を迎えることは考えてる」

 正直に自分の考えを伝えた。

「不安にさせてごめんな」

 ダリアはしっかりと俺の目を見てうなずいた。

「家族が増えるのは不安か?」

 ダリアは大きく首を振る。

 不安は解消されたかな?

 俺はダリアの頭をよしよしとでた。

 ついでなので、ケンヤから見せられたカタログを広げ、防寒具を選んでもらうことにする。

「さて、ダリア用のデザインなんだけど──」

 一瞬目を離した隙に、ダリアは再び別の場所で展示品の物色を再開していた。

 機嫌は直った、のか?