ルルカのまくあい



「リリカ」

「どうしたの、ルルカ?」

 なんでもない顔でリリカは、私に笑いかけてくる。この笑顔を見ていると、魔法少女なんて物騒なものからは遠いところにいるんじゃないかと思わされる。

 でも、気になることはちゃんと確かめなきゃいけない。

 それに、万が一ということがある。

 もしも関わっているんなら、早めに遠ざけたほうがいい。

「何か、私に隠してることない?」

「えっ、え、急にどうしたの……?」

 リリカの顔が、一気に曇る。

 私のせいで笑顔が消えてしまったことに胸を痛めながら、話を続けた。

「ほら、最近のリリカっていつもをしているから……なにか、危ないことをしているんじゃないかと思って」

「そ、そんなにしてるかな?」

「毎日見てるんだもん。それくらい分かるよ」

 リリカのこと以外どうでもいいって思ってる私が言うんだから、間違いない。

 私が真剣な表情をしながらそう言うと、リリカは両手の指を絡めはじめた。

 リリカがうそをついている時なんかにする仕草だ。魔法少女に関わっているかどうかはともかく、何か後ろめたいことがあることは間違いない。

 けれどこの表情のリリカをこれ以上問い詰めるのも可哀かわいそうだし……何より、自分のタガが外れてしまうんじゃないかって怖くなる。可哀想はかわいいって言うし、実際それは事実だし。

 可哀想はかわいいって言葉を考えた人はすごい。

 じゃなくて。

 今はこれ以上、追及しないほうがいいのかな……?

「えっと……最近、もっと動けるようになりたいから運動をはじめてね!」

「うん、それは知ってるよ」

「そ、そうだよね。ルルカが一番、リリカの近くにいるんだもんね」

「そうだよ」

 リリカもそう思ってくれてると知っちゃうと、口元が緩みそうになる。

 うーん、リリカと話してると、シリアスになるのって難しくなっちゃうのかも……。

 もちろん、それがリリカのいいところなんだけどね。

 そして運動をしているのは一番近くにいる以上知っている。

 リリカはおっちょこちょいだから、それで怪我をしてしまったとしても無理はない。いつもそばにいてあげられたらいいけどそういうわけにもいかないから、最近はクラスの人をリリカの近くに引き寄せて様子を見てもらうって形にしてはいるけど……それでも、心配なものは心配。それに、どうして急に運動をしようと思ったのかが気になる。

 だって、魔法少女のステッキは重いから。

 私は魔法でなんとかしているけど、そういうわけにもいかない魔力の子もいるっていうのはハピポンから聞いている。そういう子はどうしているかっていうと、やめるか……体力をつけようとするらしい。

 嫌な予感が、さっきからずっとしてしまう。

 そうじゃない、そんなことないって思っているのに、どうして嫌な方にばかり思考が動いてしまうんだろう……。

「……運動をはじめたのは、どうして?」

 何も反応しないでほしいと思いながら、そう言った。

 きょとんとした顔で、どうしてそんなこと聞くのって言ってほしかった。

 けど現実は違っていて、リリカはスッと私から目をらした。

 そんな、そんなことって。そんなことってあるの?

「リリカって、魔法少女なの?」

 思わず、ストレートに聞いてしまった。多分もう、そうなんだろうと思いながら。

 案の定、リリカの表情がうそをつく時と同じゆがみ方になる。

「な、何それ。リリカ、そんなの知らないよ」

 ……思考が、真っ白になる。

 何も考えられないんじゃなくて、何も考えたくない。

 だって、そんなことってないよ。私は、一体なんのために戦ってきたの。

「……知らないんなら、いいんだけどね」

 今の私には、そう返すことしか出来なかった。