第三章



 着信の音が、聞こえてくる。でも、なんだかいつもより遠くから聞こえるような……?

 寝る前にはいつもと変わらない場所に置いたはずなのに、どうしてだろう……?

「あっ……!

 そんなこと思ってないで、早くベッドから出ないと!

 慌てて起き上がって、スマホを探す。スマホは、いつもと同じ場所にあった。

 あれ、じゃあなんで遠くから……? だ、だからそれどころじゃないの!

 ルルカがせっかくモーニングコールしてくれてるんだから、早く出なくちゃ!

「ル、ルルカおはよう! ごめん、出るのが遅くなっちゃって」

『リリカ、おはよう。ううん、私のことは気にしないで。それよりどうしたの? なんだか息があがってるけど、大丈夫?』

「あ、えと、その……」

 ルルカは勘が鋭いから、うそをつくとすぐに嘘だって見抜かれてしまうだろう。でも今は本当のこと……昨日は魔法少女のことで興奮してあんまり眠れなかったことを言うわけにはいかない。なんて言えばいいのか分からなくて、口元には苦笑が浮かんでしまう。

「えっと、あの」

「どうしたの? もしかして……すぐには私にも言えないくらい、大変なことをしたの?」

「ううん! そ、そんなことないよ! ただ……」

「ただ?」

「き、昨日の宿題でちょっと戸惑っちゃって……」

 嘘じゃないけど、眠れなかった原因じゃない。これで疑われてしまったら、なんて返せばいいのかまったく思いつかないよ……どうしよう……。

「そうなんだ。もうやってるの? もしやってないなら、学校で教えるよ」

「頑張って全部解いてはいるんだけど……ちょっと中身だけ見てもらっていい?」

「いいよ。それじゃあ、また学校でね」

「う、うん。また後でね」

 そのまま通話は切れてしまった。嘘だと見抜かれなかったから、逆にすごく驚いてしまう……。心臓がドキドキしているのが分かる。

 嘘をついてしまった後悔と、見抜かれなかった驚きが入り混じっている感じだ。

 で、でも、嘘をつくのだってしょうがないよね。ルルカを魔法少女の戦いに巻き込むわけにはいかないし……。

 ルルカならもし巻き込まれても、うまく対処出来るかも?

 魔法だって、いっぱい使えたりするんじゃないかな……?

 いやいや、もしそうだったとしても、危ない戦いに巻き込むわけにはいかないよ。

 わたしが、頑張らないと。

「オハヨー☆ もしかして、誰かと話してたノ?」

「あ、うん。友達にモーニングコールしてもらって話してたよ」

 ハピポンが起きた。AIのはずなのに、どこか眠たそうだ。けれどモーニングコールという言葉を聞いた途端、険しい表情になる。

「……モーニングコールって、キミたちの世代でってたりするノ?」

「どうだろう? 分からないけど、他にもやってるって子の話は聞くよ?」

「……まぁ、そんなに珍しいコトでもナイヨネ」

「うん、普通のことだと思う」

 そう返すけど、まだ険しい顔をしていた。どうしてそんな表情をしているんだろう。何か気になることでもあるのかな?

 そのまましばらく見つめていると、やがてハピポンはため息を吐き出した。……なんに対するため息なんだろう?

「考えても仕方ないことを考えてしまうくらい疲れてるミタイ! もう少し寝るネー☆」

「寝るの……!? お、おやすみ……?」

「オヤスミー☆」

 そんなことを言って、ハピポンは画面を消灯させた。どこまでも自由だ。

 ちょっとうらやましい。

 でも、これから魔法少女として付き合っていかなくちゃいけないって考えると、難しさを感じる。

 ずっとこんな感じだったら、大変かもしれない……。

 そういえば、昨日寝る前にもハピポンのことを考えてたんだっけ。

 この子のことっていうよりかは、マスコットキャラクターについてっていうか。

 小さい頃にアニメで見た、こういう……魔法少女の変身をサポートしてくれるマスコットは、別の世界のふわふわとした生き物だったはずだ。

 それで、性格もそんなに変じゃないっていうか……少なくとも、こんな風に何を考えているのかよく分からないってことはなかった気がする。

 お互いを信頼して、鼓舞しあえるような仲間といってもいい存在。

 それがわたしから見たアニメのマスコットキャラクターだった。

 だから今、この子の姿と性格には驚かされている。

 今時って言えばそうなのかもしれないけど、急にアプリがインストールされたのにはビックリしたし。

 ……いずれはわたしたちも、アニメのマスコットキャラとヒロインみたいになれるのかな? 分からないけど、そうだといいな。

 まずは私がそれくらい、戦い続けられるといいんだけど……。

 役に立たなくてやめさせられないように、しっかりしなくちゃ。

「リリカ、どうしたの? もしかして、今日は休み?」

 おかあさんが慌てた様子で部屋に入って来て、そんなことを言った。わたしも慌てて首を振る。

「えっ、そ、そんなことないよ!」

 そのまま視線を動かして、壁にかかっている時計を見た。すると、最近家から出ていた時間に近づいていた。

 え、いつの間にこんなに時間がっていたんだろう!

貴方あなた、最近早めに家を出てたじゃない。それなのに部屋からも出て来ないから、休みなのかと思って」

「休みじゃないよ! 急がなきゃ!」

 のんびりしてる場合じゃない!

 急いで着替えて家を出なきゃ!

 何か言いたそうなお母さんには部屋から出てもらって、制服に着替える。

 荷物は昨日の夜に準備しているから大丈夫だけど、顔を洗ったりご飯を食べたりしなくちゃ……!


   ○


 朝に遅刻しそうになっただけじゃなくて、お昼までの授業にもまったく集中できなかった……。

 ほとんどいつも途中までしか書けないノートだけど、今日はその半分も書けなかったような気がする。

 さすがにここまで書けてないと何も分からないから、ルルカにノートを見せてもらわなきゃだよね……。

「うーん……」

 だけど、本当に貸してもらっていいのか悩んでしまう。

 ルルカのことだから、きっとわたしが頼んだら笑顔で貸してくれるだろう。

 でも、申し訳ないことには変わりがない。

 それに今日は、魔法少女についてのことをずっと考えていたせいでノートが取れなかったから……なんていうか、罪悪感が膨らんでいる気がする。

 ルルカにそのまま話せるかっていうと、絶対話せない。

 怒られる……ことはないだろうけど、ちょっと心配されるかもしれない。

 どんな夢を見ているのって、そんな風に。

 夢じゃ、ないよね……?

 お昼休みになったこともあって、かばんからスマホを取り出す。

 ホーム画面には、昨日急にインストールされたアプリがあった。

 これを押したら、またハピポンが画面上に現れるんだろう。

 彼(?)の自由さに振り回されてテンパってしまう自分が想像できるから押さないけど、このアプリがある時点で夢ではないことの証明になる。

 だからこそ、真剣に考えてしまうんだよね……。

 どうやったら、もっと強くなれるかっていうことを!

「リリカ、どうしたの? ご飯食べないの?」

 そんな時、ルルカから声をかけられた。慌ててスマホの画面を閉じる。

 見られてないか心配になるけど、聞いて本当に見たよって言われるのも怖くて、何も言えない。

「あ……ちょっと気になることがあって。もうご飯食べてる? 待たせてたらごめんなさい」

「みんなはこの後で部活のミーティングがあるとかで、もう食べてるよ。私はリリカが来ないし何かし始めたから、気になって待ってたんだけど……」

 な、何も言わないままだったから待たせちゃった!

 ルルカも忙しいはずなのに、優しい! けど、それと同じくらい申し訳なく思う……!

「スマホをじっと見てるかと思ったらぼうっとし始めたから、心配になって。どうしたの? なにかあった?」

「え、な、なんにもないよ!」

 私は慌てて笑って見せるけど、ルルカはやっぱり心配そうだった。

「そうかなぁ。今日の朝も、遅刻ギリギリだったじゃない?」

「そ、それは……せっかくモーニングコールしてくれたのにごめん……」

「ああ、そうじゃなくて……朝も言ったけど、それは本当に気にしなくていいよ。私はただ、リリカが心配なだけだから」

 真剣な表情でそんなことをさらっと言うルルカに、ドキリとしてしまう。

 こんなこと言われたら、一瞬で好きになっちゃうよね。

 ルルカが人気なのって、ただ優しいからじゃないのかも……。

 でも、本当のことを言うわけにはいかない。それが余計に、罪悪感を膨らませてしまう。

「る、ルルカが心配するようなことは何もないから大丈夫だよ」

「本当に……?」

 ルルカがじっと、わたしの顔を見てくる。

「本当に!」

 わたしは、力強くうなずいた。

 ルルカに言えないことはあるかもしれないけど……わたしでも特別になれるかもしれない。だから、大丈夫。

「そっか。でも、なにかあったらちゃんと言ってよね。……っていうか、とりあえずご飯食べよう。お昼休みなくなっちゃうよ」

「う、うん!」

 ルルカに促されて、スマホを閉じてお弁当箱を手に取っていつもの輪の中に入った。

 ……もしかして、特別になるって大変なことなのかな。

 特別の象徴みたいなルルカを見ながら、そう思ってしまう。隠し事なんて、今までルルカにしなかったことだ。特別に、魔法少女にならなければしなかったこと。

 これからもずっとしていくんだよ、ね? それって、すごく大変な……。

 けど、すぐにそうじゃないと否定した。わたしが特別に慣れてないからそう思うだけで、ルルカみたいな人たちにとってはそんなことないんだろう。わたしがもっと頑張ればいいんだ。もっと強くなれば、隠さなくてよくなるかもしれないし。

 あれ? でも、普通の人は記憶を消されるんだっけ? どちらにせよ隠し事になっちゃうのかな。どうしよう……?

「リリカ。ちゃんと食べないと本当にお昼休み終わっちゃうよ?」

「あ、うん!」

 どうやら、またぼうっとしていたみたい。また心配されたら、ルルカの目をしっかり見ながらうそをつかなきゃいけなくなっちゃう!

 今もう一回聞かれて嘘をつける自信がないから、出来る限り急いでご飯を食べる。

 途中でき込んでしまって、結局ルルカに心配させることになってしまったんだけど……うう、なんでいつもこんな感じなんだろう。

 こうなったら、何がなんでも頑張ってルルカたちをよく分からない怪物なんかから守らないと! そんな使命感に駆られる。

「ルルカ、わたし頑張るからね!」

「え、何を?」

「べ、勉強とか、全部……!」

 まずは魔法少女と学校の勉強を両立させられるようにしなくちゃ!

 意気込んで答えると、ルルカの顔が曇った。

 いつもみたいに応援してくれると思っていたわたしは、ちょっと悲しくなってしまう。

 どうして一番リリカを応援してくれるルルカが、そんな反応をするんだろう。

「もしかして、この前先生に言われたこと気にしてる?」

「えっ、そ、そんなことないよ!」

 魔法少女のことで、すっかり忘れてしまっていたくらいだ。

 でも確かに、あんな風に先生から言われることがあったせいで、わたしがいつもと違うっていう見方もできるかも?

 実際、言われた日にはへこんでいたわけだし……。

「あ、あんなの気にしてないから! ルルカが反論してくれたし……!」

「そう? でも、言い過ぎって思ってたでしょ?」

「そ、それは……」

 そう思ったのは確かだけど……そう思ってたことも、すっかり忘れちゃってた……。

「なになに? 先生に何言われたの?」

 部活に行こうとしていたキョウカちゃんが興味を持ったみたいで、そんなことを聞いてくる。

 時間は大丈夫なのかな? ちょっと心配。

「んー……リリカの頑張りを否定するようなこと」

 わたしがどう答えようか悩んでいたら、ルルカが先に答えてくれた、

 キョウカちゃんは、特に驚くこともなく、けれど嫌そうにあぁと言った。

 どこかため息混じりだ。

「あの先生って成績至上主義みたいなところあるよね。私たちも、部活なんかしてないで勉強しろみたいなこと言われたことあるし。意味分かんないし、いつの時代の価値観だよって思うけどね」

「みんなもそんなこと言われたことあるんだ? じゃあ私の反論って、間違ってなかったのかも?」

「えっ、反論したの? ヤバ。めっちゃ気になる! その話、後で詳しく聞かせてね!」

「うん。ミーティング頑張ってね」

 ルルカは笑顔で、キョウカちゃんを見送った。いつの間にか、残っているのはリリカとルルカだけになっていた。

「反論するのも変じゃないから、心配する必要なんてないよ」

 ……もしかして、全部気にしなくていいって言ってくれてるのかな?

「そ、そうだよね。あの先生ってちょっと厳しいから、仕方ないよね……ちょっと気にしてた。してごめん」

「そうやって無理してでも元気に振る舞おうとするのも、リリカのいいところだよ。だから、リリカは何も心配しなくていいんだからね」

 そんなことを言うルルカの表情は、なんだか少しだけ曇っている。心配しなくていいって言ってるのに、そんなルルカを見て心配してしまう。

 っていうか、まだなにかあるんだろうか?

「……まだ、なにか心配するようなことがあるの?」

 素直に聞くと、ルルカはハッとしたような顔になった。それから少しだけほおを赤らめながら、「なんでもないよ」と言う。

「なんでもないの? ルルカこそ誤魔化してない?」

「そんなことしてないよ。それよりリリカ、なにか頼みたいことがあるんじゃないの?」

「うあっ」

 図星なので、変な声が出てしまった。やっぱりルルカは、なんでもお見通しだ。

「の、ノートを見せてください……」

「あはは。そのくらい、そんなにかしこまる必要なんてないのに」

 そう言って、ルルカは予想通りに笑った。うう、その笑顔がとてつもなくまぶしく感じられちゃう……。


   ○


 そして、放課後。

 今日もルルカは部活があるにもかかわらず、わたしを見送ってくれた。

 これもお手洗いに行くことを心配されることと同じように、ルルカじゃなかったら周りの人からからかわれてることなんだろうな……。

 ルルカだからこそ、周りもそうするのを変だと思わないっていうか。

 それとも、変じゃないのかな? でも、他の子たちが同じことをやってるところを見たことないし……。

 うーん、なんだか分からなくなってきちゃった。

 そんなことを考えながら学校の玄関を出て帰ろうとしていたら、スマホの通知音が鳴った。

 一度立ち止まって画面を見てみると、ハピポンがこちらを見て微笑ほほえんでいる。

「キミに、魔法少女としての活躍の場をあげるヨ☆」

 それって、つまり……!?

「すごく人のために貢献したいみたいだから、キミにでも倒せそうなくらいの強さの怪物はキミに回すことにしたヨ☆」

「あ、ありがとう……?」

「どういたしまシテー☆」

 人のために貢献したいっていう建前で特別になろうとしているから、人のためにって言われると自分の中で違和感を覚えてしまう。

 でもそんな自分を知られてしまうと困るから、ありがとうと言っておく。

 変な言い方になってしまったような気がするけど、ハピポンは気にしてなさそうだから大丈夫だと思いたい。

「今から戦いに向かうヨ☆ 覚悟はいい?」

「う、うんっ!」

 覚悟が決まっているとは思わなかったけど、ここで行かなかったらきっとすぐに辞めさせられちゃう。そう思ったから、頑張らなくっちゃという一心だけでうなずいた。

「それじゃあ、駅前のビルに急いで行ってくれるネ? 今はそこに、ディジェネレーターがいるんダ」

「駅前のビルってことは……」

「左!」

 言われた通り、左を向いて走る。そんなに遠くはないけど、走って移動するとなると疲れる距離だ。

 こ、この速度で間に合うのかな……!?

 心配になりながらも、走るしかない。

 もしかしたら魔法少女っぽい移動も出来るのかもしれないけど、出来るんだったら最初から言ってくれてるだろうし……。どうなんだろう?

「……もしかして、魔法少女みたいに移動しようと思ったら出来たりする?」

 目的地の近くについてから、わたしはダメ元で聞いてみた。

「それくらいなら使えると思うケド……どうして?」

 どうやら、使おうと思えば使えたらしい。それなのに、教えてくれないなんて……!

「さ、先に言ってくれてもいいのに!?

「走ったほうが気合いが入るのかなって思ってサ……」

「そ、そんなこと……!?

 もしかしてこの子、聞かないと答えてくれないのかもしれない。聞くっていっても分からないことばかりだから、聞くにも聞けないんだけどなぁ……やっぱり、付き合っていくのは難しそうだ。

「アレが今回倒すべき敵だヨ」

 息を切らしながらも、ハピポンに促されてディジェネレーターの姿を確認する。

 この前みたいに大きな怪物ではなく、おおかみのような、犬のような姿をしている怪物が今回の相手のようだ。

 しかも色は真っ黄色で、よく目立っている。

 そこまで大きくないからか捕まえようとする人もいるみたいだが、素早い動きで相手をほんろうしてから大きな口を開いてみついている。体よりも大きな口は、一体どうやって現れているんだろう……!? そして、さらに気になることがある。

「あれ、噛みつかれた人はどうなるの……!?

 この前のは建物を荒らすのが主な行為だったけど、今回はどうやら違うらしい。

「噛みつかれたりしたは、さすがにボクも元には戻せないからネ☆ そのまま怪我をすることになるカナ☆」

「そんな……!」

 許せないという思いが、わたしの中で膨らんだ。

 それがキッカケとなったかのように、全身が光り輝く。

「リリカル☆マジカル!」

 前回と同じように、叫んで変身する。

 二回目だけどやっぱりかわいいと思う衣装と、重たいと思うステッキが現れる。

「魔法少女リリカ! みんなのユメを奪うなんて、許さないんだから!」

 以前と同じ名乗りが、思わず口から飛び出てくる。

 そういう仕組みになっているんだろうか?

 どういう仕組みなのかは、まったく分からない。

 ちょっと恥ずかしいけど、こんなセリフを大きな声で叫ぶことってない。だからうれしい気持ちも、少しだけある。

 とか言ったらハピポンからはからかわれるかもしれないから、言わないでおこう。

 今はとにかく、戦いに集中しないと。

 叫んだことで、怪物がこちらに注目した。ジリジリと警戒をしながら、近づいてくる。

 そんな怪物がいきなり飛びかかってきても対処が出来るように、目をらさずにじっと見つめる。でも、ちょっと見ただけでも充分すばしっこい相手にどうやって立ち向かえばいいんだろう。

 ステッキから光を出してもいいかもしれないけど、そうしたら勢いよくこちらのほうに来てしまいそうだ。別の攻撃方法があればいいんだけど……もしかしたら教えてくれてないだけかもしれないけど、それをハピポンに聞く余裕もない。

 そんな風に内心で焦っていたら、向こうから飛びかかってきた!

「きゃっ!?

 驚いて声が出てしまったものの、ギリギリのところでけられた。

 でも、本当に危なかった……。もしもう少し油断していたら、間違いなくまれていた。

「今ダ! ステッキを振って!」

 飛びかかるのを避けたおかげで、相手に少し隙が生まれた。

 言われたようにステッキを振りかぶって、光を放つ。

 すると、相手は慌てて逃げようと後ろを向いて走り出した。

「に、逃がさないんだから……!」

 そう言って追いかけると、今度はこちらに向かって牙をき出しにして向かってきている。なんてせわしない動きをする怪物なんだろう。

 この怪物もまた、誰かから生まれたのかな……?

 そんなわたしの疑問など関係なく襲ってくる怪物に対して、必死にステッキを振るう。

 当たっている感触はあるけど、ダメージを与えられていない気がする。もしかして、光じゃないとダメージを与えられないんだろうか? だとしたら困る……!

「くっ……!

 防いでいる一方で、光を放っての反撃が出来ない。

 そう分かっても、防ぐのをやめてしまったら噛みつかれてしまうかもしれない。それが怖くて、ずっとステッキを振り回す……。

「ギャンッ」

「アッ、相手のいいところに当たったみたいダ!」

 ハピポンの言う通りらしく、怪物はひるんだ。この瞬間しかない!

「今こそキメるんダ!」

「う、うん! えーい!!

 ステッキを出来るだけ高く持ち上げて、それから勢いよく振りかぶって怪物に光を当てる!

 相手は犬のような悲鳴をあげると、そのまま黒い怪物と同じように砂のようになって消えてしまった。

「ヤッター! ピースピース☆」

「ピ、ピース……?」

「あ、ニンゲンたちの記憶を消さないと!」

 静かな空間は、やっぱり違和感がある。

 一人だけはしゃいでいるハピポンにも、なんだか違和感……。

 やっぱりこれから先が不安だけど、また怪物を倒せたんだ。

 何もないと思っていた自分に、特別な意義が出来たような気がしてうれしい。

 わたしには、魔法少女としても特別な素質があったんだ。それ自体も特別なのに、頑張って戦えている……それがすごく、すごくすごく嬉しい。


   ○


「そもそもあの怪物たちは、どうしてこの世界に現れているの?」

 帰宅してから、ハピポンのアプリを開いてそう問いかけてみる。

 ハピポンはだるげにしていたが、やがて「そのくらい答えないとだヨネ☆」と言うとどこからかホワイトボードとメガネを取り出してきた。メガネに至っては、一瞬で装着された。

 まるで変身みたいだ。この子が変身を促しているから、そういうことも出来るのかな?

 それとも単純に、AIだからなんだろうか?

 一つ一つ聞いていたらキリがないくらい、疑問が浮かぶなぁ……。

「怪物たちは、人間が一人では抱えきれないような欲望なんかから生まれてるんダヨ☆」

「欲望なんか?」

 欲望だけじゃないってことなんだろうか?

「人によっては、罪悪感だったりするんだよネ☆」

「そうなんだ」

「だから、とにかく抱えきれないくらいの感情から生み出されるって思っていいネ☆」

「なるほど……」

 スマホから怪物を生み出したあの女の人は、一体どんな感情を抱えきれなくなってしまったんだろう。

 もしかして、誰にも話せなかったのかな……?

 だからこそ抱えすぎてあんなものを生んでしまったとしたら……なんだか悲しくなって、心臓の辺りがキュッてなってしまう。

「悲しそうな顔をしているけど、最初に欲望って言った通り身勝手な感情で生まれることも多いんダ☆」

「え、そうなの?」

「そう。それに、怪物が元の人間を飲み込むと、その人間自体がディジェネレーターとしてちてしまうんダ☆」

 そういえばディジェネ……なんとかは大した理由もないのに暴れてる、みたいなことを言ってたっけ? 怪物に飲み込まれるって、確かに悪いほうに向いちゃいそうだ……。

「だからこそ愚かな人間には警告をしなきゃっていうことで、キミたちの戦いはアニメとして放送されてるんだよネ☆」

「アニメとして……!?

 愚かな人間っていうのも気になったけど、それよりも気になってしまう。

 え、どういうこと?

 アニメって、何のことだろう?

「知らないノ? 結構前から、放送しているはずだケド☆」

「し、知らない。最近はアニメ自体、見ないことも多いし……」

「そういう人間が多すぎル!」

 急にハピポンがホワイトボードをたたいたので、驚いてしまう。

「アニメを作る人間の技術力はすさマジイ! それなのにアニメを見ないだなんて、とんでもなく損ダヨ!」

 すごい熱量で言われてしまった。

 技術はすごいんだろうけど……特に興味を持たない私としては、そうなんだとあいづちを打つことしか出来ない。そんな風に打っていたら、アニメのすごさについてひたすら語られてしまった。

 うーん……そんなにすごいのなら、動画サイトで公開されているアニメを後で見てみようかな?

 ……なにかを忘れているような気がするんだけど、一体なんだろう……?


   ○


 それから私はハピポンからの戦ってほしいという知らせがあったら、出来るだけ戦いに向かうようにしていた。

 その日は学校は休みだったけど、戦いに向かっていた。

 ステッキを使って移動して、ディジェネレーターがいるという場所に向かう。走ったほうが速いような、ステッキのほうが速いような……そんな速度だけど、息切れをしないっていうだけでうれしかったりする。

 戦う前から息切れなんて、カッコ悪いもんね!

「今日の怪物は、あれ?」

 目線の先には、ドロドロとした液状をしている濃いピンクの物体がある。それらから逃げるようにして人々が動いているので、きっとそうだと思うが……。

「そうだネ。……なーんかちょっと、想像と違うナ☆」

「え?」

 いつもは言わないことを言われて、嫌な予感がする。

「いつも出来るだけ単純な暴力型のみに絞ってキミを呼んでいるけど、調査不足でなんらかの特殊な能力を持ってたらマジでごめん☆」

 謝罪の言葉なのに、ウインクがつけられる。

 しかも、AIだからか妙にい。

「そんなに軽く謝られても……」

 相変わらず、どういう反応をするべきなのか分からないリアクションばかりで困惑してしまう。

 それに、そういうことを言うとあんまり良くないことが起きるような気が……!

「……ううん」

 嫌な予感を振り払う。

 被害はいつものように出ているので、戦うしかない。今回は建物や道路の汚染が中心みたいだ。微妙に変な匂いがするのも、ディジェネレーターのせいなのかな? 香水の……甘いけどちょっと強い匂い。匂いを放つ怪物ははじめてだから、ちょっと変な気持ちになる。

 けど、いつもと同じように倒さないと。

 ステッキを構えながら、徐々に対象の怪物に近づいていく。

 最近は筋トレだけじゃなくて、出来る限りプロテインを摂取している。お小遣いで買える範囲のものでいいものをってことで、運動部の子にアドバイスをもらったりした。優しく教えてくれて、すごくうれしかったのは記憶に新しい。

 そんなみんなのためにも、頑張らなくっちゃ。

「よし、頑張るぞ!」

 声に出して自分に活を入れてから、ステッキを大きく振り上げる。

 そして、勢いよく振り下ろすと光がピンクの液体に当たった。

「……えっ!?

 しかし、当たる瞬間にそれは消えた。

 まるで最初から砂の状態になっているみたいだ。

 どうなっているんだろう……?

「やっぱり単純な暴力型じゃなかったっポイ☆ ごめん!」

「謝ってないで、対処法を教えてくれると嬉しいんだけど……!」

「えっと、このタイプは見たことあるから……今思い出すから待ってテ!」

「えっ!」

 まさかの、今から思い出すって。

 そもそも本当に覚えているのかどうかも分からないし、不安だ。

 このままぼんやりしていても仕方ないので、自分でも対処法を見つけることにした。

 といっても、何も思いつかない。攻撃が当たらないんじゃ……。

 とりあえず、もう一度試してみることにした。

 今度はさっきよりも力を込めて、ステッキを振るった。するとまた消えてしまって、そのままの勢いでお店の看板に当たってしまった!

 どうしよう! これも直せるのかな!?

「魔法少女の攻撃も直せることには直せるけど、あんまり壊されるとボクが大変だから気をつけてネ……☆」

 わたしの考えを読んだように、ハピポンがつぶやいた。

「今回みたいに事故ならしょうがないケド、故意に壊されたら困るからそう言ってるだけで、あんまり気にしなくていいヨ」

 さらに先回りをして、そんなことを言う。

 わたしはあんまり使えないみたいだけど、強くて激しい攻撃魔法とかが使えたらあたり構わず使っちゃうかもしれないし……そう言われるのも、仕方ないかも。

 でも、やっぱり攻撃が通じないのは痛い。

 そうこうしている間にも、ピンクの怪物は地面のアスファルトを溶かしている。このままだと、穴が開いてしまうかもしれない……。

「……んん?」

 怪物をじっと観察していると、背中のくぼみに大きな赤いマルがあるのを見つけた。

 もしかして、そこが弱点?

 それなら相手に弱点を見つけたと悟られないうちに倒せたほうがいいのかも……?

 そう思ったわたしは、怪物に近づいてひとまず攻撃をする。消えても、現れたうちに光を放つ。そうして、赤いマルがこちら側を向くまで攻撃を続ける。

 追いかけるのはちょっと大変だったけど、幸い向こうから攻撃してくることはないからなんとかなった。

「今だ! その赤いマルを……!」

 そう言われた瞬間に、赤いマルが表面に露出してきていた。わたしはステッキを振り上げて、出来るだけ強くたたきつける。すると、確かに当たる感触があった。

 ピンクの怪物はドロドロと溶けてみずたまりのようになった後、いつもみたく砂のようになって消えていった。

「危ないところだったネ」

「わたしは危なくないけど、溶けたお店や道路が心配だよ……」

「これは仮の姿で、もう少ししてたらリリカじゃ絶対かなわない相手になってたところだからネ」

「えっ、そんな!」

「良かったね、早めに倒せテ」

「う───」

 安心感で、よく分からない声が出てしまう。体から力が抜けて、をしないくらいの勢いで足から地面に倒れ込んだ。

「ただ、これでかなり怪物を倒して実戦の経験値も積めてるし、ちょっとは魔力も上がってるネ。今度からちょーっと強い、ディジェネレーターと戦ってみようカー」

 ……わたしって、もしかしたらすごいのかも!?

 うれしさに、思わず立ち上がって飛び跳ねてしまった。

 だって、確実に特別になれてきているんだ。強くなってるって、認めてもらえたし……そんなに嬉しいことってない! これからも魔法少女として、頑張っていきたい!


   ○


 魔法少女として戦いはじめて、ちょっとだけ期間がった。ちょっとっていっても、思ったよりも戦いに行く頻度が高かったから、体感としてはちょっとに思えない。

 ほぼ毎日って言ってもいいかもしれないくらい、ディジェネレーターが現れていた。

 こんなに魔法少女って大変だったんだと、かつて見ていたアニメのヒロインたちを尊敬する気持ちが強くなった。

 疲れもあるから休みたい気持ちもあるけど、そういうわけにもいかないよね。人を救わなきゃいけないんだし……! 何より、その間にもっとやる気と魔力がある子が現れてしまったら大変だ。わたしが行く意味がなくなってしまう。

 意味が少しでも出来るように、魔力が少しでも増えるようにと、無理のない範囲での筋トレも続けている。だからか、ステッキを握る力も強くなったような気がする。重さはあんまり変わっている気がしないけど……それでも、強くなったっていう自信がある。

「ルルカ、ここはわたしに任せて」

 だからわたしは、ルルカにそう告げた。

 体育の時間、最後の片付け。

 ストレッチで使ったマットを片付ける時にルルカが一緒に運ぼうと言ってくれた。けど、わたしは鍛えているからそのくらい一人で出来るはず。

「え、どういうこと?」

「リリカが一人で運ぶよ!」

「えっ!?

「ふふん!」

 ルルカは驚いた顔で、わたしとマットを交互に見ている。

 これから一人で運ぶのを見せたら、もっと驚いた顔になるかな? ちょっと楽しみになってきちゃった!

 よーし、頑張って持つぞー!

 わたしはマットを両手でつかんで、立ち上がった。

 ……が、重くてその場で固まってしまった。こ、こんなにマットって重いの?

 ステッキよりは軽い気もするけれど……その大きさのせいもあって、一人で持つには重たすぎる。

 そのまま動くことも出来ずに、その場で固まり続けてしまう。

 は、恥ずかしい……。笑って余裕があるように見せるくらいだったのに、全然余裕がなかったなんて。こんなのってないよ……。

 ルルカはというと、ものすごい笑顔でわたしのほうを見ている。まるでおかあさんみたいな……すべて分かってたみたいな……うう! 余計に恥ずかしくなってきた!

「リリカにも、そういう時期ってあるよね」

 そう言いながら、ルルカはマットの反対側を持ってくれた。もう少し頑張ってカッコよく決めたかったけど、このままだと着替える時間がなくなってしまう。

 だからわたしは黙ったままルルカの助けを受け入れた。

「ありがとう……ごめんね、変なこと言っちゃって」

 運び終わって、更衣室に向かいながらルルカにそう言った。ルルカはいやのない笑顔で、大丈夫だよと言ってくれる。

「リリカの新しくてかわいい一面が見られて、うれしかったから」

「な、何それ! かわいくなんかないよ!」

 むしろなんてマヌケなんだろうって思ってもおかしくないのに……!

「かわいいよ。……あ、バカにしてるわけじゃないんだよ?」

「う……ルルカがリリカのことバカにするわけないことくらい、分かるけど……」

「うん。そうだよね。だから本当にかわいいと思ったんだよ?」

 今日のは褒められても恥ずかしくなる一方だから、それ以上の反応に困った。

「でもリリカ、なんで急にあんなことしようと思ったの?」

 そう聞かれて、思わず肩を震わせてしまった。

「な、なんとなく……」

「そっか」

 曖昧な答えをすることしか出来なかったけど、特に追及されることはなかった。

 魔法少女としての活動を続けているうちに、変な自信がついただなんて言えない……。

 言ったら、今回こそ怒られるかもしれない。

 でも、あんまり自分に自信のなかったわたしに自信がついてきたんだ。悪いことばかりでもないと思いたい……。


   ○


 委員長としてもっとわたしが頑張れば、ルルカが楽になる。

 前にそう考えたけど、くいかなかった。

 でも魔法少女になった今なら、本当に実現することが出来るかもしれない。

 体育に使うマットと違って、筋力が必要ってわけじゃないけど……心意気とかの気持ちみたいなものって大事だと思うし。

 魔法少女になれるわたしなら、きっとそのくらい出来るはずだ。

 ルルカはそんなこと考えなくていいって言ってくれたけど、楽になるんならそうしたほうがいいと思う。

「リリカが一人で出来そうなことは、ルルカに知らせないでリリカに知らせてほしい……?」

 そう思い立って自分で色々考えてから、先生のところに行ってそう告げた。先生はげんそうに繰り返すので、わたしはうなずく。

「どうしてそんなことを?」

「ルルカは部活の部長をしているし、それ以外にもみんなに頼られることが多くて忙しいと思うんです。だから……」

「だが、前にルルカからは出来る限り二人で一緒にするから、自分に言ってほしいと言われたし、そのほうがいいと思……」

「せ、先生は……ルルカの負担がこのままでいいと思っているんですか!」

 前もってシミュレーションをして考えていた言葉を、先生にぶつける。

 こう言えば、きっと先生はそうか、それならって頷いてくれるはず……!

「このままでいとは思わないが……リリカが一人で無理をするほうが、ルルカの負担が増えるはずだ。だから、今のままにしておこう」

「え、あ、う」

 頷いてくれなかったし、わたしじゃ頼りないってことを言われてしまった。

 そんなに頼りないのかなぁ……。

 それに、そんなに率直に言われると悲しい。

 何よりこんな展開になるとは思ってなかったから、何も言葉が出てこない。

「リリカ、こんなところにいたんだ」

「あ……」

 ルルカには内緒にして昼休みに来たのに、見つかってしまった……!

「先生。教室に忘れ物してましたよ」

 なんてタイミングなんだろう。

 率直に辛口なことを言われるよりも、先生を嫌いになってしまいそうだ。

「ああ、ありがとう……?」

 先生はかさっきと似たようなげんな顔で、ルルカからノートを受け取った。どうしてそんな顔を……?

 いや、そんなことどうでもいい!

 今はとにかく、この場をなんとかしてきり抜けなくっちゃ!

「そうだ。ルルカが決めたほうがいい」

「なんのことですか?」

 この場を……きり抜けなくっちゃ……。

 ……無理かも。

「いや、リリカが自分一人で出来そうなことは、ルルカに言わないでほしいって言ってきてな」

「そうなんですか!」

 ルルカは、わたしのほうを見ながらうなずく。うう、ルルカの視線が痛いよ……。

「リリカがやる気っていうんなら応援してあげたいけど……最近ずっとこんな調子なんですよね。だから、一回話し合ってみます。いいよね、リリカ?」

「う、うん……」

 有無を言わせないルルカの目に、頷くしかない。そんなルルカの対応に満足したのか、頼んだぞと先生は言ってそのまま席に座り直した。

「リリカ、最近どうして一人で全部やろうとするの?」

 ルルカに促されて職員室を出てから、そう聞かれる。

「もしかして、私から離れたかったりするの?」

「そ、それは違うよ!」

「そう? それならいいんだけど……それでも、やっぱり心配だよ。急にそんなこと言い出すんだもん。何かあったとしか思えないよ」

「えっと、あの、心境に変化があったっていうのは本当なんだけど……」

「そうなんだ。どうして?」

「どうしてって言われると、言葉にするのが難しいっていうか……」

「ふぅん……?」

 ルルカの疑うような視線ですべてを見抜かれてしまいそうで、すごく怖い。

 でも、それでも言うわけにはいかない。変に言っちゃったら、ルルカまで危険な目に遭っちゃうかもしれないし……。だとしてもわたしが助けられたらいいんだけど……! でも、本当に助けられるか分からない。もしかしたらその時だけ、ものすごく強い怪物が現れるかもしれないし……そんなことになったら、きっと今のわたしじゃ助けられない。

 うん。言うとしてももっと強くなって、どんな怪物からもルルカを守れるようになってからにしよう。

「リリカ。もうすぐ昼休み終わっちゃう」

「えっ、あ、ごめん!」

 言われて、予鈴が鳴っていることに気がついた。二人で急ぎ足で教室に戻る。

「……そんなに考え込んじゃうくらい、言えないことなの?」

 不安そうなルルカの声に、言えないことに対する罪悪感をひしひしと感じる。でも、言っちゃったらルルカが危険になるかもしれないし、それを助けられるか分からないし……助けられるようになったら、一人でマットを運んだりも出来るようになるかもしれない!

「ルルカ、リリカ頑張るからね!」

「……勉強とかを?」

「勉強とかを!」

 不安そうなルルカを励ますように、明るく言った。わたしがもっと強くなれば、一人で色々出来るようになって、ルルカを心配させることもなくなるはずだ。

 うん! やっぱり頑張るのが一番大事なことだよね!