ルルカのまくあい



「ルルカは、魔力が多いヨネ?」

「え……何、いきなり。どうしたの?」

「いや、その、サ……☆」

「何よ。歯切れが悪いわね」

 寝ようと思っていたところで、スマホが光り輝いた。

 勝手にアプリが開いて、マスコットに声をかけられる。

 いつになく真剣な表情をしていて、こんな表情も出来たんだと感心する。

 もちろんその技術に感心するだけで、特に本人に対して感情が動くことはない。

 いつも思うけど、このマスコットはAIにしては表情が豊かだ。

 こんなすごい技術が使われているコイツを作ったのは、一体どんな人間なんだろうか?

 ロクなやつじゃないってことだけは分かるけど、一度くらいは顔を見てみたいような気がする……。

 単純に怖いもの見たさかもしれない。

 まるで着ぐるみが中に人はいないと主張するように、作った人間なんていないっていつもはぐらかされるけど……無からこんなのが発生するわけない。

 だから、開発者くらいはいるはずだ。

 まず、自然に発生してほしくない。

 犯人がいてほしい。

 というか、このAIはほとんどのことをはぐらかすから生意気なんだよね。

「用があるなら、手短に済ませてよ。私は明日も学校で忙しいんだから」

「全然そんな風には見えナイ……待って、寝ないで、頼むカラ」

「珍しい、そんなに頼んでくるなんて」

 なにか、よほどのことでもあったんだろうか。

「いや、ちょっと諸事情で魔力がまるでない人間と契約したんだけどサ☆」

「……どうしたの? もしかして、もう私たちの戦いも終わりに近づいてるの?」

「え? そんなことはないけどモ」

「じゃあなんで、魔力がない人間と契約なんてしたの?」

 もう魔力にそこまで頼る必要がないくらい、弱いディジェネレーターしか残ってないのかと思った。

 どうやら、そうじゃないらしい。

「その場に来られる魔法少女がいなかったカラ……って、そもそも元はと言えば、ルルカが現場に来なかったのが悪いんだヨ!」

「知らないわよ。好き勝手に開いたり通知鳴らしたりするくせに、今日はなんにもなかったじゃない」

「だからさ、それはバグなんだってバ☆」

「バグ……?」

 むしろこのAIアプリ自体が、バグでしかないと思うんだけど……。

うそじゃないヨ! 本当に今日のデータを調べたら、送ったはずの救援信号が全部届いてなかったんだってバ!」

「はいはい」

「信じてないノか!?

 よほど興奮しているのか、口調がいつもより荒くなっている。

 でもこうすることで信じてもらいやすくするための『フリ』だって分かっているから、私は感情を動かされることはない。

「信じるもなにも、なんにも教えてもらってないからそういうことを考えたことがなかった」

「そ、そりゃあ機密事項ばかりダカラ……」

「それに、肝心な時に役に立たない通知なんて意味がないなーって思うし」

「う」

「その上、魔力がまるでない人間と契約して、私に泣きついてくるなんて」

「な、泣いてないしネ!」

「え……?」

 冗談でからかったつもりなのだが、いつもの合成音声が涙声のようになっている。

 こんな風に話せるんだったら、同情を買って変身してもらうことも出来るんじゃないの……?

 魔法少女なんてまだ人の悪意にも触れたことがない女の子ばっかりなんだから、AIの泣き声だって分かっていても可哀かわいそうに思えるだろう。

 本当に出来がい……いや、そんな簡単な言葉で片付けてしまっていいんだろうか?

 やっぱり、底が知れない……。

 もしも大切なリリカが関わったりなんかしていたら、コイツの存在を絶対に許せないと思う。

「……なに考えてるノ?」

「別に」

 涙声をやめているから、私に涙声は効かないって理解したらしい。

 ここまでの付き合いなのに、やらないと分からなかったんだろうか。

 それとも、素で泣いて……まさかね。このマスコットに限って、そんなことは絶対にないと断言出来る。

「とにかく! もうボクの気の迷いってことにしていいカラ! どうしてそんなに魔力が多いのか教えて……!」

「知らないわよ、そんなこと。魔力がどうやって増えるのかも教えてもらってないんだから」

「ソウダッター!!!

 そのままマスコットは、流れるようにバックライトを落として見えなくなってしまった。

 ……底が知れないとかなんとかって、私の考えすぎだったのかしら……。

 ただのバカな気がしてきた。

 自分で言ったことと言ってないことの区別もつかないくらいだし。

 あんなことなら、きっと今日の通知も本人が入れたって思ってるだけで、入れられてなかっただけなのかも。

 だとしたら、たまたまその場に居合わせた魔力のない子っていうのは、たまらなく可哀かわいそうね。