ルルカのまくあい



 後日、私もリリカにお手洗いへついてきてもらうことにした。

 これまでもタイミングが重なったりリリカが怖がったりして一緒に行くことはあったけど、リリカから提案されて一緒に行くっていう事実にドキドキしている。

 何より、うれしい。

「リーリカ♪」

 そのせいで、それが声色にもにじみ出てしまった。

 状況としてはただお手洗いに行くってだけなのに、あんまり浮かれてると変に思われちゃうよね。気をつけなきゃ。

「どうしたの? ルルカ」

「一緒にお手洗い行ってくれる?」

「う、うん! この前言ったもんね!」

「そうそう。だから、お願いしようかなって思って」

「うん! 任せて!」

 いかにも任せてって感じで胸を張っているリリカ、かわいい……!

 リリカの机の前に隠して置いてあるカメラで、ちゃんと今の撮れてるかな?

 本当は今すぐにでも確認したいけど、目の前にいるリリカを肉眼に焼き付けるほうが大事だから、それは後の楽しみにとっておこうっと♪

 二人一緒に、並んで教室を出てお手洗いに向かう。

「でもね、あれからリリカ考えたんだ」

 いつになく真剣な表情で、リリカがそう切り出した。

「ん? なにを考えたの?」

「七不思議って、本当にあるのかなって」

「……どうなんだろうね?」

「なにかの見間違いっていう可能性も、あると思うんだ」

「そっか。そうかもしれないよね」

 怖いことを想像するだけでおびえてトイレに一人じゃ行けなくなっちゃうくらいなのに、そんなに気にしちゃうなんて……。

 それだけでも充分にかわいいけど、もっとかわいいリリカの表情を見たくなる私がいる。

「確かめてみる?」

 お手洗いに入って誰もいないことを確認した私は、リリカに提案してみた。

「えっ?」

 キラキラとしたリリカの目が、大きく見開かれる。

「ど、どうやって……?」

「例えば、そうだなぁ……」

 私は奥の個室を向いて、瞬時に作り話を考えた。

「誰もいないって分かってる扉を、たたいてみるとかどうかな? そしたら、はなさんとか出てくるかも」

「ひぇ……」

 ちょっとおおざつな話にし過ぎたかなと思ったけど、リリカは生唾を飲み込みながら話を聞いてくれた。

 その表情は、真剣そのものだ。

 どうやら、しんぴようせいを持たせられたようだ。信じやすいところは少し不安だけど……話している相手が、私だから安心出来てるってことだよね?

 うん、きっとそうだ。それに、リリカをだますようなやからは私がぶっ潰せばいいだけだし。

 そうなるともっと監視できる時間を長く出来るように、もうちょっと細工を施したほうがいいのかな……?

 この前の一人で掲示物を貼り替えようとしてた時も、ちょっとどころかかなり危なげだったし……。

「る、ルルカ?」

 そこで少しだけ震えたリリカの声が聞こえて、一気に我に返った。

 これ以上リリカの前で考えることじゃなかった。危ない、危ない。

「大丈夫?」

「ごめん。ちょっとボーッとしちゃってた」

「もう! ビックリするよ!」

 顔にある不安は残したまま、ちょっといじけたようなねたような表情になるリリカもかわいい……!

「取りつかれたかと思ったんだからね」

「まだなんにもしてないんだから、現れたりしないよ」

「そ、それでも現れたら困るから……」

 出ようとしていたのか、リリカは扉に手をかけた。けどそこで本来の目的を思い出したのか、リリカは固まった。

「……待ってるね。ルルカ」

 ぎこちなく笑顔を作りながら、リリカはそう言った。私はお言葉に甘えて、お手洗いを済ませることにした。

 その間にリリカは、沈黙が怖かったのか小さな声で歌い始めた。

 かわいい……。

 タイミングが悪くて録音出来ないことを悔やみつつ、個室から出て手を洗う。

 個室から出た瞬間に見たリリカの顔は、まるで神にでも会ったかのようにうれしそうだった。

 ……ちょっと怖がらせ過ぎたかもしれない。反省。

 かわいい顔見たさに、リリカをあんまりいじめるわけにはいかない。

 もっと加減に気をつけなきゃ。

 それか、私が除霊を出来るようになればいいのかな?

 私自身が霊的な存在を信じてないから、ピンとこないけど……リリカのためなら、出来るようになってもいいかもしれない。

 帰ってから調べてみよう。

 急ぐリリカにつられて、私もお手洗いを出る。

「教室に戻りながらは、た、楽しい話がしたいな」

「うーん。リリカがかわいい話とか?」

「もう! 冗談やめてよー!」

「冗談じゃないよ! リリカはいつでもかわいいよ?」

 本当に冗談じゃないんだよ、リリカ。