「おお……」
なんだかドタバタと音が聞こえ始める中でイナリはテキパキと指示を出していく赤井を頼もしそうに見るが……これから大変になるのはイナリ本人で。フォックスフォンの中にある撮影スタジオに移動すると、赤井が中心になって指示を出していく。
「今度出す商品のモックは何処!? メイクは!?」
「メイクいらないです! ヤバいです!」
「モック持ってきましたー!」
ドタバタと走り回る社員たちだが、大分慣れた動きで続々準備が整っていく。撮影用のスクロールの目の前に立たされたイナリが覚醒フォンの試作品を手に微笑むとカメラのフラッシュが光る。どういうものかはイナリには全く分からないが、どうにもそれでいいらしい。
「いいですね! あと何パターンかいってみましょう!」
「のう、赤井や。儂はよく分からんが、こういうものかのう?」
「こういうものです! とにかく撮れるパターン全部いきますよ!」
「代表! ウェブページ用の写真も撮ったほうがいいのでは!?」
「狐神さんのご都合次第です! いかがですか!?」
「まあ、ええがのう」
「よし、どんどんいきますよー!」
フォックスフォンの面々のボルテージは上がっていくばかりだが、そこに水を差さないようにイナリも「おー」と声をあげる。
(なんだかめいどの店に雰囲気が似ておるのう。元気で良いことじゃ)
使用人被服工房の面々と、色々と違う部分はあるが似ている部分もある。もしかするとこれが秋葉原の人間の持つ独特の空気なのではないだろうか、と。イナリはそんなことを思っていた。
(しかし、何枚撮るのかのう? そんなに使うところがあるのかの……?)
イナリには分からないが、撮った写真全部を使うわけではない。こうしてたくさん撮った中には当然ボツになるものもあるのだろうが、それはそれで別の何かに使用される可能性もある。とにかくたくさん撮って後から当てはめていく以上、素材の数は多ければ多いほど良い。そこに関しては、後からイナリに迷惑をかけないためのフォックスフォン側の配慮である。
そうして撮影された写真を元にフォックスフォンの公式ページのあちこちにイナリの姿が載ることに……新商品のPR画像を含め載ることになったのは「なんかこうなる予感はしたのじゃ」であったらしい。
ともかく、こうしてイナリは「フォックスフォンのイメージキャラ」として盛大にデビューを果たしたのであった。