「愛しているよ。俺の心を動かしてくれるのは、後にも先にも、君ひとりだけだった」

 知代は鹿嶋を見つめながら、不思議に思う。

 どうしてこんなにも、彼は自分を好きになってくれたのだろう。好きになった経緯は聞いたけれど、仕事のフォローをしただけで、こんなにも強い恋心を持つものなのだろうか。

 強い独占欲があって、嫉妬深い。彼の愛は、おそらく知代の愛を越えている。

 しかし知代は、それを『悔しい』と思った。

(仕事で負けて、更に愛の深さまで負けるなんて、さすがに恰好悪いよね)

 何かひとつでも勝ちたい。知代が今できることといえば、鹿嶋の気持ち以上に彼を愛せるよう努力することくらいだ。

 ふっと知代は笑って、鹿嶋の頬に触れる。

「言っておくけど、私もあなたが大好きなんだからね。この気持ちだけは絶対に負けるつもりはないから、覚悟しておきなさいよ」

 本当に、どうしてこんな面倒臭い男を好きになってしまったんだろう。でも、恋なんてものは、そんなものなのかもしれない。

 理由も根拠も原因もなく、その人だけに心が動いてしまう。きっと、それを恋と呼ぶのだ。

「私はね、なんでもできて、恰好よくて、素敵で――でも、どうしようもなくネガティブで、愛したがりの利央さんを……愛しているの」

 これはきっと、どこにでもある、なんでもない恋。

 特別なものはなく、ただ同僚として出会って、互いに想いを寄せ合った。

 鹿嶋は嬉しそうに目を細め、優しくキスをする。

「嬉しい。君が傍にいるからこそ、俺の日常は当たり前のように色がつく。だからずっと離れないで。――どんなに言葉を重ねても、足りない。君を、愛しているよ」

 ワインの味がするキスは留まるところを知らず、深く、深く、重なり合って。

 まるで本能のように、ふたりは互いの身体を求め続けた。