商業ギルド

打ち合わせを終えてシンディの家を辞したソフィアとレベッカは、それぞれの愛馬に騎乗して領都の中心部へと向かった。

「お母様、グランチェスター領に来てから、領都の中心街には初めて来ました」

「ソフィアさん、誰が聞いているかわかりません。その姿の時は私をレベッカって呼んでもらえるかしら。だけどオルソン令嬢じゃ他人行儀すぎて私がイヤよ」

「ふふっ。ではレベッカ様とお呼びしますね」

領都の中心街はグランチェスター城の城下町ではあるものの、実際には城の城壁から四キロほど離れた場所にある。しかも、城と中心街を繋ぐ街道の両脇は意図的に森が配置されており、夜になれば周囲は真っ暗になる。この森はグランチェスター家から許可を得た者しか立ち入ることが許されていない。この森には外敵を防ぐための罠があちらこちらに仕掛けられており、下手に侵入すると命に関わるレベルで危険なのだ。つまり安全対策である。

こうした事情もあって、グランチェスター城で働く使用人の子供たちは、親から領都に一人で出掛けることを禁止されていることが多い。もちろん過保護なロバートはサラが馬に乗れることを知っても許可は出さず、侯爵も護衛なしで出掛けることには難色を示した。

『うーん。商会のことを考えると、自由に動けないのは不便だな』

などと考えているうちに、ソフィアたちは侯爵が用意した商会の本店に到着した。

それは大商会と言っても差し支えないほどの広さを持った建物であった。頑健な石造りの建物でありつつも、漆喰で優美に装飾されている。正面玄関の上には金属製の看板が掲げられており、大きな文字で『ソフィア商会』と書かれていた。