「ロバート卿との婚約も近日中には王都に知らせが届くでしょう。おそらくもっと面倒になるんじゃないですかね」
「どうして?」
「オルソン令嬢はアヴァロンの社交界で知らない人はいない有名人です。貴重な光属性の治癒魔法が使えるため、聖女のような扱いを受けているんですよ。過去の不幸な事件も彼女の美貌が原因ですし、隣国への嫁入り準備として王妃が直々に淑女教育を施されたことも知れ渡っています。そんな女性とグランチェスター家の嫁として比較されるんですよ?」
「なるほどね。それはちょっとキツイかも。それにしても、よくそんな女性がお父様に嫁いでくれたわね。相手なんて選び放題じゃない」
実際、レベッカはとてもモテる女性だった。能力、美貌、貴族としての優雅さはもちろん、資産も持っている。国王が皆の前で『結婚したいと思えるまでは好きに生きるがよい』と言ってくれたからこそ、彼女は自由で居続けることができたのだ。
「ちょっと待って。イヤな予感がする」
「どうされました?」
「お母様がそれだけ注目されるのであれば、必然的に私も見られちゃうんじゃない?」
「気付いていらっしゃらなかったのですか?」
「子供だし地味に隅っこにいれば良いかなって思ってた」
「ははは。サラお嬢様、それは絶対に無理です。いま、侍女長とメイド長を含む多くの使用人たちは、ロバート卿からの命でサラお嬢様の衣装を用意しまくってますよ?」
「ぎゃー、私も散財してる側だった!!」
サラの社交界プレ・デビューの支度は、本人の知らないところで着々と進められていた。それだけではない。サラの容姿を知っている従姉妹のクロエも、サラの隣に立つことを避けられないことに気付き、必死になってドレスや宝飾品を買い求めた。そういう意味では、狩猟大会に向けた小侯爵夫人とクロエの散財は、サラとレベッカも原因であったことは間違いない。ぐったりとした気分になったサラは、早々にセドリックたちを追い出して眠りに就くことにした。
『明日は素敵な人と会えると信じて今日は寝よう』
見事な現実逃避であった。