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「はあああああっ……!」
レシアータの姿が消えたのを見て、リュシアが力が抜けたように地面に座り込んだ。
「なんですかあの人……! 戦場でもなかなか見ないですよ、あんな不気味な人は」
「ああ。かなり得体の知れない人物だったようだな……」
だがこれで確信することができた。
現在ルズベルト帝国も苦難を抱えていて、なおかつなんらかの形で邪神が関わっていること。そしてリュシアの父は、やはりなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性が高いこと。
本音を言うと、ルズベルト帝国に足を踏み入れるのはかなり緊張したが──この選択自体は間違っていなかったようだな。
「おまえたち、まさかこのまま入国するつもりなのか……?」
そんな思索に
「今のでわかっただろう。今のルズベルト帝国は不安定だ。王国民と知られた時点で危険な目に遭う可能性も高い。それでもなお、我が国に入るというのか」
「ええ……。もとよりこの状況を打開するのが目的ですから」
「わ、私もです! せっかくパパの手がかりが見つかったのに、このまま帰るわけにはいきません……!」
「…………そうか」
俺とリュシアの返答に対し、門番兵は黙って頷いた。
「……その、すまなかったな。フレイヤ神を用いた蛮行を働いたのはあくまでフェルドリア国王であって、多くの国民はおそらく関知していなかっただろう。しかもアルフ・レイフォートといえば、そのフレイヤ神から我らを守ってくれた者だというのに……」
「はは、いいんですよ。あんな恐ろしい映像を見せつけられたら、誰だって怖くなりますから」
当時、フレイヤ神は一瞬にして小国を滅ぼしてみせた。
その時の映像は世界中に広がっていたようだし、今度はその攻撃をルズベルト帝国に向けると言われたんだからな。
そんなものを見せられたら、誰だって王国が恐ろしく思えるもんだ。
「……すまんな。国民たちの動きまでは制限できぬが、せめて帝国軍だけは
「ありがとうございます。そうしていただけるだけでも助かります」
そう言って深々と頭を下げる俺。
兵士だけでも態度が軟化してくれれば、こちらとしても非常に動きやすくなるからな。
さて……まず向かうは皇城か。
ラミアから皇帝への〝謁見要請書〟を貰っていたので、まずはリュシアの父について知っていることがないか、訊ねてみるとしよう。
「さて……行くぞリュシア」
「は、はいっ!」
かくして、俺とリュシアはルズベルト帝国での冒険を開始することになった。
そんな俺たちの背中に、門番兵も敬礼してくれていた。