その余波は俺とカーラにまで及び、あっという間にマントが焼け落ちていく。幸いなことに、破壊は俺達が無事なうちに収まり始めた。
「すっげぇ威力……これほどかよ!」
「異なる属性の魔法が干渉し合って、暴走したエネルギーが発散されている! こんな現象にまで発展するなんて……っ」
周囲の魔力が落ち着いた頃には、十数匹いたマンティコアの大半は原形を留めない状態で地面に倒れ伏していた。
かろうじて動いているのは、群れよりわずかに俺達に近かったビッキー顔とシルバーバックの二匹のみ。しかも、ほとんど虫の息だ。
「やったなカーラ! 一気に形勢逆転だぜ!!」
「……は、離してください。恥ずかしいっ」
カーラが耳まで顔を赤くしているのを見て、俺は彼女を抱きしめていたことを思い出した。
慌てて離れた時には、彼女は頬を膨らませていた。
「こんなとっておきがあったなんて、カーラも人が悪いな! もっと早く使ってくれれば良かったのに」
「冗談! 爆心地にいる私達をギリギリ避けるようにエネルギーが発散されて運が良かったですよ。見てください、魔法攻撃に耐性のあるマントが焼け落ちちゃってる」
「ひえぇ……。こりゃマジでギリギリだったんだな」
薄氷の勝利だったわけか。いやでも、運も実力の内って言うし……。
「それにまだ二匹生きています。早くトドメを刺しましょう」
「そ、そうだな!」
その時――
「蒼穹の彼方、いと高きところにおわす法の裁定者よ――」
――シルバーバックが声高に呪文を唱え始めた。奴の全身に尋常でないほどの魔力が高まっていく。……しまった、緊張が緩んで油断した!
「あれは光属性の高位魔法!? 唱えさせちゃダメです!」
「攻撃魔法も使えるのかよ!?」
俺が杖を構えるのと同時に、シルバーバックの手前にいたビッキー顔が突撃してきた。
リーダーが呪文を唱える時間を稼ぐための捨て身の特攻か!? 化け物のくせに、どれだけ忠実なんだよ!
「カルエル、〝二重詠唱〟いきますよ!」
「えぇっ!? そんなの試したこともないぞ!!」
「いいから!!」
〝二重詠唱〟――それは、二人で同じ呪文を文節ごとに並列詠唱するという、いわゆる呪文の短縮効果を狙った高等技。親子ほど息が合わないと成立しないと言われるくらい難易度が高いとされているが……だったら何も問題ないじゃないか!
「大地に吹く風」「避けること知らず」
「カーラの」「カルエルの」
「指し示す――」「壁を穿て――」
息もぴったり。さすがは親子!
突進してくるビッキー顔を前に、俺とカーラは鏡写しのように同時に杖を振り下ろした。
「「――〝破砕〟!!!!」」
俺達の杖から放たれた少しばかり大きめの光の玉は、突っ込んでくるビッキー顔の顔面を粉砕した。その威力はそれだけに留まることなく、奴の胴体を貫いてさらに背後へと達した。シルバーバックにまで届くかと思いきや――
「〝太陽の断罪〟」
――奴もすでに詠唱を終えていた。
俺達の〝破砕〟は奴が顕現した白い光球と衝突し、魔力同士が反発し合って拮抗状態へと陥った。剣士の戦いに例えるなら鍔迫り合いの状態だ。
「くっ。顕現されちゃいましたか……」
「あの魔法はあの後どうなる!?」
「加速度的に熱を増していき、最終的には爆発して付近一帯を蒸発させます!」
「聖職者が使う魔法かよ!?」
「幸い、今は拮抗状態。私達がさらなる魔力を上乗せすれば、〝太陽の断罪〟を破れるかもしれません!」
白い光球が太陽のように眩く輝き始める。光が強まるにつれ、俺は焼けるような熱気に肌がさらされるのを感じた。それに、息をするだけで喉が焼けるように熱い。あの光球が周囲の熱を異常に高めているのか……?
「このままじゃ爆発前に蒸し殺されちまう!」
「距離が近過ぎるんです。本来、あの魔法は上空高くで爆発させるものですが、拮抗状態に陥ってしまったから……」
「どうすればいいんだ!?」
「このまますべての魔力を〝破砕〟に注いで!」
「低位魔法の〝破砕〟で高位魔法を破れるのか!?」
「〝重奏魔唱〟が発生すれば、あるいは」
「〝重奏魔唱〟?」
「私達の魔力を同調させるんです。実現できれば、その威力は何倍――いいえ、何乗にも飛躍します。借り物に過ぎないマンティコアの魔力など打ち破れるはず!」
ダンジョンD-17で、スターとレイブンが使っていた技のことか!
「でも、失敗すれば……二人とも……」
カーラの声は震えていた。俺の指先がわずかに触れた彼女の手も同様、小刻みに震えている。敗北の予感――死の恐怖が彼女の心を侵し始めているのか。
……そりゃそうだ。ハーリーンも認める金等級魔導士とは言え、まだ12歳の子どもなんだ。切羽詰まった命懸けの戦いで心が揺れないわけがない。
でもなカーラ――いや、ゾフィ。お前は知らないけど、俺達は血の繋がった親子なんだぜ? 俺とお前なら他人以上に魔力を同調させることだってできるはず。ついさっきも、ぴたりと息が合ったばかりじゃないか。
俺が一緒だ。二人なら、どんな困難だって乗り越えられる。今からそれを証明するんだ!
「カーラ!」
「!?」
俺はカーラの名を呼んで、その手を握り締めた。それ以上の言葉はいらない。魔力の同調――それは心の同調も意味する。俺はカーラの気持ちが落ち着いていくのを心で感じた。
不安はない。恐怖もない。不思議と勝利の確信だけがある。
「カーラ!!」
「カルエル!!」
今、俺達は一つに。
「「〝重奏魔唱〟!!!!」」
隣り合う杖の魔力が結びつき、稲光のような眩い輝きが起こった。それは〝破砕〟の魔力を追いかけていき、刹那のうちに光球を貫き四散させ――
「「行けぇぇぇぇぇっ!!!!」」
――シルバーバックの体をも破砕した。
◇
戦いは終わった。
確認できたマンティコアの死骸は、全部で十七体。逃走した形跡はないので、おそらくそれで全部だろう。それだけのマンティコアが群れを成してグラングレイル王国の領土に潜んでいたとは、由々しき事態と言える。
「死骸はどうする? 全部燃やしていくか?」
「いいえ。討伐証明のために死骸の一部を切除して、あとは放置します。私達が討伐依頼の完了を申請した後、王国兵による現場検証があるでしょうから」
「あの卵はどうする?」
「破壊しておきたいところですが、稀有な事例なので持ち帰りましょう。本当にマンティコアの卵かどうか調べておいた方がいいでしょうし」
俺とカーラは斜面を下って窪地の底へと降りた。〝魔導処〟の暴走であちこち酷い亀裂が生じている中、岩だなが崩れなかったのは幸いだった。そんな事態になっていたら、俺達は生きちゃいなかったろうな。
卵は窪地の底に、まるで祭壇に置かれた神像のように安置されている。その手前までたどり着くのに、何十人分もの白骨死体を乗り越えねばならなかった。
マンティコアどもは食い汚い習性のようで、あちこちに食い千切った肉片が散乱している。卵の近くは、特に死肉の臭いが強くて鼻が曲がりそうになった。
「卵は牽引魔法で持ち帰りましょう」
「ああ」
卵に手を伸ばした際、足元に転がる白骨死体につま先が触れた。
視線を落としてみると、その死体が身に着けているマントに目が留まる。このデザイン、どこかで見覚えがあるぞ。
「これは……」
さして珍しくもないマント。しかし、その表面に残るツギハギの跡がたしかに俺の記憶に重なる。マントをめくってみると、裏地にビクトリアの文字が刺繍されていた。
「……久しぶりだな。ビッキー」
首から上は見当たらなかったが、マントにわずかに残る魔力の残滓を感じて、俺はそれがビッキーであることを確信した。仲間の成れの果てを見るのは、相変わらず慣れない。
「カーラ。持ち帰る荷物が少しくらい増えても大丈夫だよな?」
その時、不意に窪地が明るくなった。ずっと雲に隠れていた太陽が顔を出したのだ。
◇
王都への帰還後、ギルド管理局でマンティコアの討伐報告と戦利品の提出を済ませた俺達は、すぐにブルーの入院している医療院へと向かった。
「ラルフ! カーラさん!」
医療院の病室を訪ねると、ベッドの上で包帯だらけのブルーに迎えられた。
ベッドの傍では女性がリンゴの皮を剥いていて、キョトンとした顔で俺達を見据えている。……この女性、誰かと思ったらドナじゃないか。戦闘用の武装じゃなくてスカート姿だったから一瞬気付かなかった。
「元気になってよかったよ、ブルー」
「迷惑かけたな。また無事に会えてホッとしたよ」
「メラは来てないのか?」
「今は最寄りの教会に顔を出しているよ。それより、マンティコアの件はどうなった?」
「しっかりと全滅させてきたぜ」
「本当か!? よくやってくれたな! ……って、全滅させてきた?」
「マンティコアは一匹だけじゃなかったんだ――」
俺が討伐までの顛末を説明すると、ブルーもドナも目を丸くして驚いていた。あんな化け物が群れを作っていたことを知れば当然の反応だ。
「――ってわけで、なんとか全滅させることができたんだ」
「そうだったのか。あれが群れで王都の近くにいたなんて、信じ難いな……」
「ギルド管理局の役人もビビってたよ。おかげで討伐報酬は増額されそうだ」
「報酬は全部あんた達に受け取ってほしい。十分その資格がある」
「そんなわけにはいかねぇよ。契約通り折半でいいさ」
「本当にいいのか……?」
「傷が治ったら冒険者に復帰するだろ? 次はもっといい武具を揃えろよ。もう一度マンティコアと戦り合っても負けないくらいに」
「そうだな。でも、その前にまた一から鍛え直さないと!」
「だな!」
ブルーと笑い合った後、俺は背負っていたリュックから包みを取り出した。その包みにはビッキーの亡骸と遺品が納められている。
「それは?」
「お前に渡したくて回収してきた。医療院に持ち込むのは憚られたんだが……今回は特別ってことでまぁいいだろ」
「おれに渡したいものって一体……」
俺はブルーに包みを渡した。彼は包みを受け取って早々、訝しそうな表情で結び目を解き始める。
はらりと包みが開かれた時、ブルーが最初に目にしたのはビッキーのマントだった。予想通り、彼はそのマントが誰のものであるかを一目で察したようで、躊躇いながらも生地をめくり上げた。
裏地にビクトリアの名を見つけて、ブルーは身を震わせる。
「ありがとう……ありがとう、ラルフ……!」
「弔ってやりなよ。それはきっと、お前の役割だと思う」
「……ありがとう……っ!!」
ブルーから感謝の言葉を受けて、肩の荷が下りた思いだ。それはカーラも同じようで、ホッとした表情を浮かべている。
「あんた、いい男じゃん。ラルフ!」
ドナは目にいっぱいの涙を浮かべながら、俺に笑いかけてくる。女性からの好意的な笑みは、ちょっとばかり気恥ずかしい。
「いつまでも過去に引っ張られんな。前向いて歩けよ!」
俺がブルーに送った言葉は、彼を慮ってのことだった。だけど、それは俺自身にも言えること。俺もいつかは過去と向き合わなきゃならんよなぁ……。
◇
〈虹孔雀〉に戻ると、ギルドメンバーが拍手で俺とカーラを迎えてくれた。すでにマンティコア討伐の件はみんなに伝わっていたらしい。
「お帰りなさい。危険度A級モンスターの討伐、ご苦労様でした」
「ハーリーン様!」
「頑張りましたね、カーラ。後でたくさん話を聞かせてちょうだい」
「もちろんです!!」
ハーリーンはカーラの頭を撫でた後、俺に向き直った。
「カルエル。この短期間にずいぶん魔導士らしくなりましたね」
「えっ。そ、そうすか?」
「魔力が充実しています。今回のマンティコア討伐は、あなたの自信にも繋がったようですね」
見ただけでわかるなんて、さすがはハーリーン。
「ふっ。俺に眠ってた天賦の才がいよいよ目覚めてきたって感じかな。ま、大船に乗ったつもりでいてくださいよ! 俺が〈虹孔雀〉を王都ナンバーワンのギルドにしてやるからさ!!」
「あら。なんて頼もしい言葉かしら。期待していますよ、カルエル」
冗談半分で言ってみたら、ハーリーンが寄り添うように俺の胸へと手を置いてきたので、驚いてしまった。しかも、すぐ目の前に彼女の顔があり、その気になれば唇に触れられそうな距離にまで――
「待って待って待ってぇ!!」
――なんて思っていたところ、カーラが俺達の間に割って入ってきた。
くそっ。ハーリーンの良い匂いが俺から離れて行ってしまう。
「ハーリーン様、あまりカルエルを甘やかさないでください。マンティコアをやっつけたとは言え、まだまだ〈虹孔雀〉が求める水準の魔導士には遠いんですから!」
「カーラも俺をもっと褒めてくれていいんだぞ?」
「カルエル、調子に乗らないでください! 打倒魔王を目指す〈虹孔雀〉において、あなたは魔導士としてはまだまだ未完成! 発展途上なんです!!」
「お、おう」
「今後は、あなたの得意を徹底的に鍛えていきますからね。それが形になった時、ようやく〈虹孔雀〉に在るべき魔導士となるんですから! それまで慢心禁止!!」
カーラがムキになって俺をたしなめようとしているけど、これって期待の裏返しだよな。そう思うと、ガミガミ言われることも嬉しくなってくる。
「近づきましたね、カルエル」
「えっ」
「今後とも、カーラをよろしくお願いします」
「は……はいっ!!」
今のって、俺とカーラの距離が縮まったことを言ったんだよな? ハーリーンから見てそう感じたのなら、この数週間、頑張ってきた甲斐があったってもんだ。
「マンティコアを倒した程度であんまでかい顔すんなよ、オッサン!」
「まぁまぁ。マンティコアだって危険なモンスターなんだから、討伐できたのはいいことじゃないの」
げっ。誰かと思えば、スターとレイブンじゃないか。
「仲間が死ぬ思いして手柄を立ててきたんだから、少しは労いの言葉をかけてくれてもいいんじゃないか?」
「はっ。野郎にかける言葉なんてないね!」
相変わらずスターはつれないな。傍にいるデュエラが申し訳なさそうな顔をしているぞ。
スターの言い分にムッとしたのか、今回ばかりはカーラが割って入ってくる。
「そうは言いますけど、カルエルも頑張ったんですよ? 彼がいなかったら、私も死んでいたかもしれないくらいにマンティコアは強敵でした」
「へぇ。カーラがそこまで言うほどの相手だったんだ」
スターのやつ、相変わらず俺とカーラじゃ対応がまるで違う。これは差別じゃないのか?
「でもね、カーラ。あたいとデュエラだって、ここ数日でしっかり成果出してんだよ」
「成果?」
「先日、王都西の旧市街にあるダンジョンからミノタウロスが抜け出してきたんだ。それをぶっ殺したのが、あたいとデュエラの師弟コンビさ!」
「凄い!! あのミノタウロスをやっつけたんですか!?」
旧市街のダンジョンに棲むミノタウロスと言えば、俺も聞いたことあるぞ。たしか牛の顔した馬鹿でかい半獣半人のモンスターだ。
「ちょっと待って。成果って言うなら、スターとデュエラだけじゃないわよ」
「まさかレイブンもですか?」
「あたしとアイヴィーも、ついこないだ南の湿地帯で猛威を振るっていたコカトリスを仕留めてきたんだから!」
「あのコカトリスを!? 凄いっ!!」
その名前も聞いたことあるな。雄鶏と蛇が組み合わさったような姿で、致死性の猛毒を放つモンスターだったはず。そんな怪物相手に、よくぞまぁ無事でいられたもんだ。
「ね。アイヴィーが大活躍だったのよね?」
「はひっ!? は、はい。わたし、がが、頑張りまつたっ」
……アイヴィーは相変わらずのようで。
「こんなに早く新人三名がギルドに貢献してくれるなんて、嬉しいわ」
ハーリーンまでもが会話に加わってきた。彼女は満面の笑みをたたえていて、本当に嬉しそうに見える。
「実は、王宮からそれらの件であるお話を頂いています」
「王宮から?」
「はい。カルエル、カーラ。それにデュエラとスター、アイヴィーとレイブンも。あなた達三組に、国王陛下より勲章を授与したいと言付かってきました」
「えぇっ!? そ、それマジっすか!?」
「もちろんです」
急にギルド内がざわつき始めた。まさか勲章の授与とは。
「そりゃありがたいね。勲章もらえりゃ個人的に名が上がるし、ギルドとしても箔がつく。もっといい仕事が舞い込んでくるよ!」
「そうねぇ。貴族の方々にちやほやされるのも悪くないわねぇ~」
スターとレイブンが盛り上がっている。
「信じられない……。まさか僕が勲章を貰えるなんて」
「わわ、わたしなんかがそんな物をいただいて、いいんでひょうかっ!?」
デュエラとアイヴィーも興奮冷めやらぬ様子。
かくいう俺も、心臓がバクバク音を立てている。まさか俺の人生に王宮と関わることがあるなんて、夢にも思わなかったからなぁ。
「授賞式は来月開催される王宮のパーティーで執り行われます。あなた達、式に備えて衣装屋でドレスを借りておきなさいな」
王族や貴族の集まる王宮パーティーで授賞式か。少し前までその日暮らしをしていた俺が、魔導士に職能転向した途端、人生変わったなぁ。まさに俺は今、栄光のロードを歩んでいるって感じだ。
「カルエル。当日のドレスコードはしっかり守ってくださいね?」
「わかってるよ。王侯貴族と見紛うほどの服を着てってやる」
「あなたは口が悪いから心配です。くれぐれも王宮の方々には失礼のないように! 家に帰ったら振る舞いの練習でもしますか?」
「俺は子どもか! 心配すんなって」
「私にとって王宮へのアピールは重要ですから。パーティーで王様や貴族の方々の評価を得られれば、白金等級魔導士への昇格も早まるかもしれません」
そういえば、カーラは白金等級魔導士を目指しているんだったな。たしか白金等級への昇格条件は、弟子を一人前にすることだったっけ。
「前に、白金等級魔導士になって叶えたい悲願があるって話をハーリーンとしてたよな。それって何なんだ?」
「そ、そんなこと知ってどうするんです?」
「カーラには世話になってばかりだし、俺にできることがあれば手伝うよ」
「特にカルエルにできることはありませんよ」
「そう言わずにさ」
「……ここだけの話にしてくれます?」
「もちろん」
「生き別れたお父さんを見つけたいんです。きっとどこかで生きているはずだから」
「……そう、か……」
想像もしていなかった言葉に面食らった。その一方で、俺は胸が熱くなる。
娘も父親に会いたがってくれている――その事実を知れただけで、俺は飛び跳ねたくなるほど嬉しかった。