「そりゃ杖だからな。
「……でもこれ、どこからどう見ても剣だよな?」
「だから魔法の杖だって言ってんだろう。二度言わせるな」
「どこからどう見ても剣じゃねぇか!!」
……いかんいかん。思わず怒鳴り散らしてしまった。ここは落ち着いて冷静にゴードと話し合おう。
「お前はわかってねぇなぁ」
「な、何がっ!?」
「魔法の杖は、本来は決まった形なんてありゃしないんだ。素材も形状も、手にする
「だからってなんで剣!?」
理解に苦しむ。
「わしは
「それは……
「魔慧眼でお前さんの魔力を観察した結果と、お前さんの選択――それらを総合して、剣の形がお前さんの魔力にとってベストだと判断した」
「な、
「戻る必要ないだろ。わしがお前さんに
「ぐぬぬ……っ」
「文句があるなら返してもらうぞ」
「……わ、わ、わかった、よ……っ」
くそぅ。これで杖を受け取らずに帰ったらカーラに顔向けできない。かと言って、こんなもん持って帰ったところで何を言われるか……。
「例のオリハルコンもちゃんと使われてるんだろうなっ!?」
「もちろんだ。分量が少なかったんで、
「俺には確かめようがないぜ……」
「ちなみに、その杖の製作料は77万アープだ。あとでギルドに
「ななっ!?」
こんなもんが77万? 刃引きされたロングソードが77万アープ!? 武器屋でそんな額を請求しようものなら、系列の商人ギルドから追放されるぞ!!
「よし、帰れ。わしは別件の作業が残ってるからな」
「……」
俺は半ば放心した状態で店を出た。
……やっぱり剣じゃねぇか!!
「おい見ろよ。ラルフだぜ」
「うっそ。こいつ、まだ王都にいたんだ」
「〈
「あの人、戦力外通告受けたんでしょ? もう
「でも、未練たらしくロングソード持ってんじゃん。だっせぇなぁ~」
「くすくす」
「ゲラゲラ」
くそぅ。心機一転、
「ラルフ! 仕事が
「アハハ。マジでやりそう」
「くすくす」
「ゲラゲラ」
すれ違っただけなのに、奴らは散々俺を馬鹿にして去っていった。
あいつら、俺よりも一回り年下のくせに目上の人間への態度がなっていない。もう少し若かったら
しかし、ラルフか……。魔導名を名乗ってまだ一週間しか経ってないのに、もう
〈
それに比べて、俺は……。
「おかえりなさい、カルエル。どんな杖を作ってもらったんです?」
「た、ただいまカーラ……」
ギルドに入って早々、カーラが
「あら。その剣、どうしたんです?」
「え? ああ、これ? はは……」
「護身用ですか?」
「いやぁ、えぇと……」
「早く魔法の杖を見せてください。ワンド型ですか? もしかしてシガー型?」
「もう見せてる」
「はい?」
「その、これが……魔法の杖……です」
「……はぁ?」
ま、予想通りの反応だな。
◇
その日の昼過ぎ。俺はカーラと共に、王都から北に3
「ここらへんならちょうどいいかな。それじゃ、今日から魔法を直に
「やっと本格的な修行が始まるのか……」
「何を言っているんです。カルエルには、この一週間で魔導書を勉強してもらったじゃないですか。知識の吸収も立派な修行ですよ?」
勉強とは言うけど、細かい文字がびっしり詰まった分厚い本を四六時中読まされて、目と脳みそがしんどかっただけだぞ。内容も難しい文章で書かれていて、俺の知らない単語ばかり。せめて
「魔法の基礎は重要なんですからね。
「わかってるよ。本に書いてあったから」
「魔法を
「一応」
「……心配だなぁ」
カーラが
「まずは私が目の前で
「わかった」
カーラは肩に背負ったポーチからワンド型の杖を取り出した。
「
「それは覚えてる」
「属性の種類は?」
「えぇと……火、水、風、地、光、
「正解です。そして、七門の属性の中で
「え? それは……」
「もうっ。ちゃんと魔導書を読んだんですか!?」
「よ、読んだに決まってるだろっ」
流し読みだけど……。
「属性には
「上流にでかい
「魔力効率が悪過ぎるでしょ! ……まぁ、それも
「効率かぁ……。俺、そういうの苦手」
「そして、岩ばかりのこの場所では、風属性による岩砕きの魔法を実践します!」
言いながら、カーラは近くに転がっている岩石へと向けて杖を構えた。
「岩を砕く魔法ねぇ」
「
「ごめん……」
カーラは
「それじゃいきますよ!」
カーラは杖の
「大地に
杖の先端にはぼんやりと緑色に
「――〝
カーラが発声した瞬間、光の玉が流れ星のように空中を走る。それが岩にぶつかると、まるで
「これがもっとも初歩的な風属性の攻撃魔法です」
「初歩的って言うけど、俺が前にパーティーを組んでた
「そうですか? まぁ、練度によって魔法の威力は変わりますから」
「そういうものなのね……」
カーラは杖をしまうと、砕かれた岩の
次は、俺にあの岩を砕けって言うのか。……この剣で。
「魔法を使ってくださいね?
「わかってるよっ」
剣を見るカーラの怪訝な表情は相変わらず。俺自身、今もこの剣を魔法の杖だとは思えない。こんなもので魔法を使えるのかすら疑わしい……。
「始めの一歩ですし、気負わないで。ただ思いきりやってみてください!」
「そうする」
岩と向かい合って、剣――じゃなかった、杖を
魔法の顕現とは、次の四つの動作から成る――
一つ、体内に魔力を実感。
二つ、精霊に働きかけるための
三つ、意識下で対象を選定、あるいは杖で標的を決定。
四つ、
――これらを
杖を頭上に
「大地に吹く風、避けること知らず。カルエルの指し示す壁を穿て――」
体内を何か不思議な感覚が巡っているのを感じる。もしかして、これが魔力ってやつか? それに、視界の外から何か光が注いでくる。
「――〝
魔名を唱えるのと同時に、杖を岩に向かって振り下ろす。杖の先から光の玉が飛んでいくのが見えた直後――
「えっ」
――大地が斬れた。
岩は真っ二つに割れ、その後ろの木々ごと地面に巨大な
……これ、俺がやったのか?
ちらりとカーラの様子をうかがってみたところ、岩だなの方を見たまま
「だ、誰がここまでやれって言いましたっ!? 馬鹿じゃないですかっ!?」
思いきりやれって言ったじゃん……。
◇