??? おぼろの夢


 夢を見ている。

 夢は記憶の整理をするために見るのだと、誰かが言っていたが。

 なるほど。確かに今の俺が見ている光景にはどこか覚えがある。

 ただ、それはひどくおぼろげで、不明瞭だった。

 おかげで、これは俺が本当に体験した出来事なのか、判断しづらい。

 ただ、これだけは確実に言える。

 俺はこの夢を、決して忘れてはならないのだと。


 ………………

 …………

 ……


 俺は手を伸ばす。

 ほとんど、無意識の行動だった……

 どこまでも続く無窮の闇の中……少女がポツンと一人、虚空を見つめて座り込んでいる。

 俺は、彼女の横顔を見つめていた。

 その瞳に光は無く、ただただ悲しい色だけを濃く宿している。

 銀の長髪が闇色の大地に広がり、透けるような白い肌が、こんな何もない場所であるにもかかわらず、良く映える。

 ここは、彼女の心の中……いや、心そのものだ。

 俺は命の潰える一瞬に、彼女の心と繋がった。

 まるで底無しの闇の中、一人で座り込む少女の姿は、あまりにも物悲しく、美しかった。

 不意に、俺の心臓は高鳴りを覚えて、少女に手を伸ばす。

 意識などしていなかった。俺はただただ、彼女の魅力に引き寄せられて動いたに過ぎない。

 俺はそっと、彼女の肩に手を置いた。

 すると、少女は小さく反応し、こちらに顔を上げる。

 しかし、振り向いた彼女の瞳は、まるで宝石の紫水晶アメジストのように無機質で……この空間同様、どこまでも深い闇を宿していた。