13話 〈エンペラーゴブリン〉戦再び。やべぇなドロップ3連発!

「やべぇな」

〈野草の草原ダンジョン〉のレアボス〈エンペラーゴブリン〉と久々に遊ぼうかなと思ったのだが、その出現率の高さに思わずそんな言葉が洩れた。

レアボスの出現率を高める〈笛〉をもちいても、レアボスが出る確率は70%。

8回も吹けば5回か6回は出る確率だ。

しかし今回はなんと、8回吹いて8回出現した。もうビックリだよ。どんだけ遊びたいんだ〈エンペラーゴブリン〉は!?

ゲーム時代を思い出しても8回連続というのは、あまり記憶に無いぞ!?

しかも、そのドロップもやばかった。

〈ビューティフォー現象〉は残念ながら出なかったが。〈金箱〉が2回も来た。

つまり合計4箱。ソロなので全部俺のものだ! ふはは!

さらに、その内2箱にまた〈レアモンの笛(ボス用)〉通称〈笛〉が入っていたのだからマジやばい。

これで合計〈笛〉は4本。〈エンペラーゴブリン〉ってこんなに〈笛〉落とすっけ?

ゲーム時代を思い出しても〈笛〉をこんなにドロップした事は無い。何かリアルの補正のようなものが働いているだろうか?

〈エンペラーゴブリン〉で〈金箱〉がドロップしたとき何故か片方に必ず〈笛〉が入っている件。

ちなみに後の2箱の〈金箱〉には〈エンペラーゴブリンの魔杖〉と〈エナジーフォース〉という装備が入っていた。

〈エンペラーゴブリンの魔杖〉の方は前回ドロップした〈魔剣〉と同じボス装備だな。

こいつはとりあえず倉庫行きだ。

〈エナジーフォース〉はアクセサリーだ。能力は〈魔法力22、『MP+100』〉という魔法職に非常に有用なステータスを持っている。

誰かに貸与してもいいが、今回はソロ攻略なので俺が装備することにした。〈シルバーバングル〉を外して代わりに〈エナジーフォース〉を装備する。

俺、パワーアップ! ふはははは!

さて、これからどうしようか。

時刻は19時。予定では〈笛〉を8回吹いたら帰ろうと思っていた。

時間的にもそうだが初級中位ショッチューボスでは経験値にならないし。

しかし、〈笛〉がドロップしてしまった。あと8回出来ます。さあどうしよう。

悩むまでもなかった。

俺はゼフィルス。〈ダン活〉をこよなく愛する者。

8回吹けるのなら、吹くのが〈ダン活〉プレイヤーだ!

ということでバッグに入っていた軽食で腹ごしらえしたのち、ボス戦を再開したのだった。


「やべぇな」

本日2回目の「やべぇな」である。

俺の目の前には1本の───〈笛〉。

またドロップしちゃった!?

さらにレアボスのツモ率───やはり100%。

いつの間に〈笛〉の成功率は100%になったのだろうか。

現在16連続である。〈エンペラーゴブリン〉出すぎ!?

これは検証しなければならない。

幸いにも〈金箱〉がまた1回出て〈笛〉がドロップした。

あと4回出来る。

ならば使うのが〈ダン活〉プレイヤーだ!


「やべぇな」

本日3回目の「やべぇな」入りました!

現在20戦目。目の前には〈エンペラーゴブリン〉。

20回連続レアボスツモである。

ゲーム時代を思い出しても20回連続は経験したことの無い領域だ。

何が起こっているのか、本当に〈笛〉の効果が変わったのだろうか?

なぜ〈笛〉がこんなに落ちるのか、誰か説明して!

いや、犯人は目の前にいるんだけどさ。

「〈エンペラーゴブリン〉よ。戦うのが楽しいか?」

「ゴブ」

ボス部屋。中央付近で足を止めた俺と〈エンペラーゴブリン〉。

俺はなんと無しにそう聞くと、〈エンペラーゴブリン〉はしっかりと頷いた。

頷くのを見た。

「意思疎通が出来るのか? え、マジで?」

ゲーム〈ダン活〉時代、言葉をしゃべるボスはいるが、〈エンペラーゴブリン〉と意思疎通が出来るなんて要素はなかった。

いや、なんとなく戦っている時から意思のようなものは感じていたけど、まさか質問に答えが返ってくるとは思わなかった。

ボスには明確に意識がある?

いや、無いボスもいるだろう。

少なくとも獣や植物系は本能のままに行動している節がある。意思は感じられなかった。

だとすれば〈エンペラーゴブリン〉が特別なのか?

そういえばゲーム時代はこうしてプレイヤーがボスに話しかけるなんてコマンドはなかった。

もしかすれば、元々意思疎通の出来るボスだったのかもしれない?

ヤバイな。もっと知りたくなってきた。

「なあ〈エンペラーゴブリン〉。もうちょっと話をしないか? ちょっと、いや、山ほど聞きたいことがあるんだけど」

「ごっぶ」

俺の問いに対して〈エンペラーゴブリン〉は首を横に振る。

そして高まる威圧感。戦闘の構え。

むう。どうやら答えてはもらえないようだ。

俺も盾を前に出す格好で構える。

なるほど、そこで俺は理解する。

ボス部屋ではボス戦をするのが常道。

そこに言葉による会話は無い、ということか。

むしろ拳で感じろと言わんばかりだ。

なんかバトル漫画っぽい。

そういうのも嫌いではないが、もうちょっと知識欲を満たしたかったな。

「ゴッブォォォ!!

「おっしゃ、再開だー!」

そしてまたバトルが始まった。

〈エンペラーゴブリン〉とはずいぶんLvに差が出来てしまったが、相変わらずワクワクさせてくれる。

〈エンペラーゴブリン〉戦は何度やっても面白い。俺は、もしかしたら対人戦が好きなのかもしれないな。

そして、今回も俺の勝ちだった。

ドロップしたのは〈銀箱〉。

どうやら、今日はここまでのようだ。

俺は名残惜しむように「じゃあな! 〈笛〉、ありがとよ」と言って転移陣に乗り込んだのだった。


学園が始まってからの日常は瞬く間に過ぎていった。

月曜日、なんかサターンたちに遊びに行こうと誘われて、せっかくなのでモナもつれてダンジョンへ挑んだ。

しかしサターンたちの戦闘があまりに初心者だったので、俺が少し基本的なことを教えてやると約束した。彼らは感涙にむせび泣きながら打ち震えていた(?)のが印象的だった。

その後は、レアボス連続20周という未だ経験したことのない未知の現象に遭遇。

レアボス〈金箱〉6個ドロップして全部俺のものになった。ふはははは!


火曜日。授業も楽々進み、むしろもっと〈ダン活〉を学びたいまであったため〈大図書館〉で色々と借りる事にした。特に歴史が面白いです。

放課後は約束通りサターンたちに少し教えることにした。何故か脂汗を出しながら我に練習の必要は無い、とか言い出したサターンたちを無理矢理引っ張って練習場に連れていき基礎を教えてあげた。

なかなか上達しなかったので少しスパルタ気味になってしまったが、おかげで多少は命中率が上がった。その調子だサターン、頑張れ!

ただ、やはり1日では焼け石に水なので明日も練習すると告げると彼らは感涙していた。

泣くほど嬉しがってくれて俺も嬉しい。

夕方にはマリー先輩の下へ昨日のドロップを売りに行ってツッコミを頂いた。

レアボス素材20体分はマリー先輩もどう扱ったらいいのか分からないみたいだ。ちょっと気持ちよかった。

しかし、その後〈私と一緒に爆師しよう〉ギルドで笛の回数を回復させようとしたら、お値段50万ミール×20回、計1000万ミール請求で撃沈。さすがにポケットマネーで今すぐ全ては払えないので、当初予定していた8回分(2本)だけ回復してもらい、残りは〈エンペラーゴブリン〉素材の査定が終わり次第回復する予定だ。


水曜日。その日はダンジョン攻略の専門授業があった。

ただ、まだ座学だな。本当に基礎的なことのおさらい、ダンジョンの心構えなんかを教えてもらえた。

うーむ。ゲームで知っていたこととはいえ、改めてリアルで言われると気がつくことも多い。ためになる授業だった。

放課後はサターンたちと練習場だ。

今日も何故か言い訳をしていた彼らだったが、時間も限られているので昨日同様引っ張っていき、最初からスパルタで教え込んだ。そのおかげでサターンも10回に9回は的を外さずに撃てるようになった。すばらしい進歩だ。

他の男子たちの成長も目覚しい。まあ、今まで正しいやり方を知らなかっただけなので教えてやればこのとおりである。とは言っても、ここからさらに成長するのが難しいんだけどな。

「フハハハハハ! どうだ! これほどの遠距離でも外さなくなっているぞ! これこそ我の真の力だ! だからもう練習は必要ない」

「ふふ、ふふふ。初めて気が合いましたね。僕も強くなりました。練習はもう十分だと思います」

「ああ。俺も異論は無い。これほど成長をしているんだ。練習は必要ないと思うぞ」

「俺様としても準備万端だ。十分強くなったしいつでもダンジョンに行けるな。だから練習はもう必要ない。無いと思う」

何故か口を揃えて練習は必要ないと言う4人だが、俺からすれば正しいやり方を知ったばかりの素人なので練習は続行だ。

またも感涙する4人と共に青春の汗を流した。


木曜日。今日の授業は職業ジョブについて今判明しているこの世界の常識的なものを教わった。

ただ、近頃その常識が大きく変わったばかりなので教科書の大部分が役立たずになってしまった。それ故、先生も学生からの質問にたじたじになっていた。

まったく、誰だ常識を変えたのは。おかげで授業がなかなか進まなかったではないか。

しかし、まだまだ高位職の波紋は広がり続けているようで研究所も先生方も事態を飲み込むだけで精一杯の様子だ。新しい情報をリークするのはもう少し後にしたほうが良いかもしれない。

またパーティの連携についても授業があった。これについてはまだ基礎の部分なので省略。

放課後は、サターンたちの強い希望でダンジョンに行くことになった。

もちろんモナも連れてきている。

ただ今回行くのは〈筋肉殺し〉と名高い〈幽霊の洞窟ダンジョン〉だ。〈採取〉の出番はあまり無いので今回モナは〈ポーター〉として経験を積んでもらおうと思う。

これだけでも【ファーマー】には経験値が入るのでモナも喜んで〈ポーター〉を引き受けてくれた。

しかし〈幽霊の洞窟ダンジョン〉を攻略する上で大切なことがある。

属性武器だ。〈幽霊ゴースト特性〉に属性無しの物理攻撃は効きにくい。

それ故に属性武器の使用が推奨されているが、あいにくジーロンもトマも属性武器は持っていないとの事だった。それでは役に立てない。

サターンは魔法を使うので相性は抜群。【大戦士】のヘルクはタンクなので属性武器は必要無いが、アタッカーのジーロンとトマが属性武器を持っていないというのはいただけない。

ということで、今日のダンジョン探索限定だが〈エデン〉の武器を貸してあげることにした。

「ふふ、ふふふ、ふふふふふ。よ、よくも僕にこんな装備を……」

「ブハァ! ジーロン、よ、よく似合ってるぞ。ブハハハハ!!

ジーロンが持っているのは〈燃えるキノコソード〉。

火属性を持つネタ武器の大剣だった。まさか出番が来るとは思わなかった。

完全に見た目がキノコなそれを構えるジーロンに、サターンが腹がよじれるくらい笑う。

トマにもどこで出たか思い出せない〈銀箱〉産〈斧〉装備を貸してあげて、そのまま攻略。〈デブブ〉も無事倒したのだった。

なんか〈エデン〉と違ってこういう、同級生と一緒に狩りをするのも良いもんだと、そう思った1日だった。