12話 クラスメイトと交流。男子だらけのダンジョン探索。

週明けの月曜日。

今日からは通常授業がある。学園に入学して1ヶ月以上経ったが、ようやく普通の授業である。

まあ普通の授業があるのは〈戦闘課7組〉までで、それ以降の〈戦闘課8組〉から〈戦闘課127組〉まではまず戦闘訓練でLv上げの授業が組まれているらしい。

〈戦闘課〉の中でも7組までの210名ほどしかLv上げをしていないということだな。

8組以降は職業ジョブに就いただけでLv0の学生たちだ。

つまり、それだけですでに授業に開きが出来ていることに他ならない。

この学園ではクラスの番号が若くなるほど優秀な者が集められる。その筆頭が1組だな。それ故に授業の質が変わってくる。1組に近づくほど授業の質は高くなり、127組に近づくほど低くなるといった案配。

127組に近いほうが授業は楽だが、就活は難航するということだな。

今後の人生をより豊かにするためにも、8組以降の学生たちはこの差を覆そうと日々邁進しなければならない。何しろ授業の質に差が有るのだ。何もしなければ上の組との差はどんどん開いていくだろう。

また現在は上位のクラスに在籍している学生も油断は出来ない。

今回1年生のクラス分けはまだドングリの背比べに過ぎないのだから。

努力を怠れば簡単に転がり落ちていくだろう。2年生になった時のクラス分けが今後の人生を決めると言っても過言ではない。

故に〈ダン活〉の学生は非常に勤勉である。というのがゲーム〈ダン活〉の設定だった。

しかし、そんな背景をものともしない輩が約4名、朝から俺に絡んできた。

「ダンジョン攻略を一緒にする?」

「そうだ。我は確かに今の貴様よりLvが低い。認めよう。だが実力なら貴様以上だと自負している」

そう語るのはその4人の男子学生の中で最も職業ジョブLvが高いサターンだ。

なぜそこまで自信があるのかが俺にはさっぱり分からない。

いや、さすがに差は歴然だと思うぞ?

「ふふ、驚くのも無理はありませんね。ですが彼だけではありません。僕も実力ではあなたを凌駕していると思っています。その証拠に、僕はこの数日で【大剣豪Lv20】に昇華しています」

不敵に笑うのは【大剣豪】に就いているジーロンだ。

Lv20になったから、なんだと言うのだろうか?

「先に言われてしまったな。俺たちはここ数日、地獄の特訓を重ねてきた。今なら負けはない」

続いて腕を組みながら自信満々に言うのは【大戦斧士】のトマ。

すでにLvが負けているのですがそれは?

「俺様を忘れてもらっちゃ困るな。先頭に立つのはいつだって戦士の役割だって事を教えてやる」

俺様が一人称のちょっと忘れられやすい彼は【大戦士】のヘルク。

いや結構です。絶対俺のほうが詳しいし。

今日の朝、朝礼もまだの時間にいきなり俺の席を囲んだかと思うと、彼らは切り出した。

「どうだゼフィルスよ。今日は我らと共にダンジョンへ行かないか?」

今日の放課後、一緒にダンジョン攻略しようという内容のようだったが、彼らの話を聞く限り自分の力を見せ付けてマウントを取りたいだけに見える気がするな。

というかプライド高いな!

アレだけの差と失態を経験すればへし折れるかと思っていたが、元気バリバリのようだ。ずいぶんと、図太い。プライドが。

まあ、へこまれるよりは良いのだろう。猛特訓したみたいだし。良い方向に転がっている様子だ。

聞いてみると、サターンが【大魔道士Lv22】に、他の男子は全員Lv20に上がり二段階目のツリーが開放されたそうだ。

なるほど。それで自分は強くなったと増長した彼らが絡んできたのだろう。

だが、残念ながら二段階目ツリーと三段階目ツリーの間には越えられない壁がある。どうやっても俺に勝てないと思うぞ?

「どうしたゼフィルス。我らとダンジョン攻略したくないのか? 俺たちさえ組めば初級ダンジョンなど恐れるに足りない」

サターンが代表して言う。

まあそりゃあそうだろう。俺は昨日の探索で【勇者Lv51】になったし、すでに初級ダンジョンを卒業した身である。むしろ俺1人で無双出来るから君たちいらないまであるぞ。

まあ本当のことを言うと傷付けてしまうかもなので言わないけど。

ふむ、そうだな、何で俺とダンジョン攻略したいと言い出したのか考えてみよう。

うーん。……パッと考えつくところだと、俺と交流、ないし仲良くしたいのかな?

彼らもあの自己紹介でやらかした手前、〈エデン〉のメンバーとは気まずい溝が出来てしまっている。ギルドマスターと対立(?)したのだから当然だ。

しかし、このクラス1組はその三分の一以上が〈エデン〉のメンバーである。これではクラスで肩身が狭いだろう。

故に和睦わぼくという意味で俺と仲良くしている風に見せたいんじゃないか?

教室で話しかけてきたのがその証拠だ。絡みづらい相手に勇気を持って遊びに誘ってきたのだと思う方がしっくり来る。

言い方はプライドが高すぎて素直になれなかっただけだろう。まだ16歳だしな。

そういうことならば俺も遊びに行くのはやぶさかではない。クラスメイトとは交流しておいた方がいいだろうしな。

「いいぞ。一緒にダンジョンに行こうか」

「! ふふ。決まりですね」

ジーロンは頭に「ふふ」と付けるのがクセなのだろうか?

でも笑っているし、少し嬉しそうだ。と思う。

「あ、そうだ。ついでにあと1人誘っていいか?」

「ぬう? この5人でパーティだ。これ以上は人数オーバーだぞ?」

トマの言うとおり、俺を含めれば5人パーティの完成だ。

〈ダン活〉はパーティの人数は5人まで、普通ならもう1人増やすことなんて出来ないが、何事も例外はある。

「いや〈採集課〉の知り合いも誘おうかと思ってな。どうせ行くなら採取は出来た方がいいだろ?」

「なるほど。〈『ゲスト』の腕輪〉だな。俺様に異論は無い」

お、ヘルクは〈『ゲスト』の腕輪〉のことを知っていたらしい。何気に博識だ。

他の3人は知らないようなので軽く説明して了承してもらった。

「戦いに参加しないのならば構わない。せいぜい我の足を引っ張らないことだな」

「ふふ、ではまた放課後に」

そう残して彼らは席に戻っていった。

さて、金曜日から間が空いてしまったが、早速モナを誘ってダンジョンに行くか。

俺は懐から〈学生手帳スマホ〉を取り出した。


「あの、本日はお誘いいただきありがとうございます! 感激です!」

「おう。よろしくなモナ」

授業も終わって放課後。場所は〈戦闘課〉と〈採集課〉の校舎の中間あたり。ここでモナと合流していた。

先ほどチャットを交わして無事オーケーがもらえたので、モナとも一緒にダンジョンへ遊びに行くことになった。

ちなみにだが、今日の授業は通常授業だった。国語、数学、歴史が2時間ずつである。

正直、超面白かった。

特に国語と歴史、俺の知らない〈ダン活〉の設定がてんこ盛りだった。

もうむしゃぶりつく勢いで教科書を読破してしまったよ。

特に歴史が最高だった。今度〈大図書館〉でそっち系の本をたくさん読ませてもらおうと決意する。むしろ決定事項。データベースとしてこれは譲れない!

しかしそれに比べ、数学は大したことなかったな。小中学生レベル? まあ今まで村人だった一般人には難しいかもしれないが、現代日本で受験なども経験した俺の敵ではなかった。ハンナ大丈夫かなぁ。少し心配だ。

確か、村は学校こそなかったが一般教養を教えるための施設はあったらしく、ハンナもそこで勉強はしていたらしいが。まあ、泣きついてきたら教えてあげよう。幼馴染だからな。

ふう。学校の授業が楽しすぎて少しはしゃいでしまった。

そして楽しい時間はまだまだ続く。今度はダンジョン攻略だ!

「そいつがさっき言っていた〈採集課〉の学生か?」

俺の後ろについてきていたサターンが聞いてくる。

「ああ。モナって言うんだ、少し引っ込み思案だが仲良くしてくれ。──モナ、こいつはサターン。少し変なやつだが気にしないようにな」

「は、はい!」

「おい! 変な奴とはどういう意味だ!」

サターンがなにやら叫んでいるが、華麗にスルーして残りの3人も紹介していく。

ちなみに言葉の通りの意味である。

「とりあえず今日はこれから初ダンに向かおうと思うんだ」

「おい! さっきの話がまだ終わっていないのに何を先に進もうとしているのだ。いや、むしろ仕切るのは我の仕事だ!」

「ふふ、待ってください。仕切るのはどう考えても僕の仕事でしょう」

「おいおい寝ぼけたことを言うな。俺こそがリーダーだ」

「俺様を忘れてもらっちゃ困るぜ。俺様こそが真のリーダーだ!」

なんかいきなりリーダー争いをし始めた俺のクラスメイトたち。何をやってるんだろうか?

「ほへぇ。仲が良いんですねぇ」

どうやらモナにはこの口論がじゃれているように見えるらしい。

そう考えると遊んでいるように見えるような気がしてくる。

まあ、落ち着くまで放っておこう。とりあえず足だけ動かして俺たち一行は〈初ダン〉へ向かう。

「あ、そういえば僕ようやく【ファーマーLv2】になりました!」

「お! おめでとう!」

有言実行。モナも訓練を頑張っているらしい。

スラリポマラソンは身内ギルドメンバーにしか教えていないので悪いがモナは対象外である。

そのため訓練でLvを上げるしかないが、Lv2まで上げるのは結構キツイ。俺も経験したから分かる。それをこの短期間に上げてきたのだからモナの努力は本物だ。

これからも頑張ることができればその時は専属契約を交わしてもいいと思っている。

ま、全てはモナの頑張り次第だな。〈採集課9組〉という低い位置にいるが、1組にも負けない採取マスターになれることを祈っている。少なからず俺も手伝う予定なので多分負けないだろうと思うが。

とそこへ、俺たちの会話を聞いていたサターンが話し掛けてきた。

「ちょっと待て。俺たちがこれから行くのは初級中位ダンジョンだぞ。Lv2じゃ入れないだろう?」

「ん? ああ、そこは安心してほしい。〈『ゲスト』の腕輪〉で問題なく入れるから」

〈『ゲスト』の腕輪〉は装備した者のLv関係なく、パーティの平均Lvと同等の扱いを受ける。

つまりモナはLv2だがこのパーティの平均、Lv26相当と認識され、ダンジョンについていくことが可能なのだ。そうじゃなきゃモンスターと戦えない生産職や採集職はダンジョンに潜れないからな。

もちろん攻略者の証も必要ないぞ。

ただ一点、条件を満たしていないダンジョンに入ると、出るまで〈『ゲスト』の腕輪〉は外せなくなるので注意だ。モンスターを攻撃して故意に破壊することは出来るがあまりオススメしない。だって普通に危険だから。モンスターに狙われるようになる。

そんな話をサターンほか、〈『ゲスト』の腕輪〉のことを知らない2人にも説明した。

サターンはモナの腕に装備してあるそれを感心したように見つめて言う。

「ほう。便利なアイテムなのだな」

「だなぁ。これ下手な〈金箱〉産より価値があるからな。──あ、当然破壊されたら学園に弁償だから。ウン百万請求されるだろうから絶対壊すなよ」

「も、もちろんですよ」

モナが表情を引きつらせて壊れたおもちゃのようにブンブンと頷く。

「まあ、そんなわけで俺たちはモンスターを蹴散らすからモナは採取を頼むな」

「ま、任せてください! それで、今日はどこに行くのですか?」

「今日は採取も出来る初級中位ダンジョン。〈野草の草原ダンジョン〉に行こうと思う」

というわけで、本日はゴブリン狩りだ!


「フッハハハハハハ! これが我の力、【大魔道士】の力だ! 受けてみよ軟弱なゴブリンめ、『メガフレア』!」

「ゴビュ!」

高笑いをしながらサターンがゴブリンを一撃で屠る。

「次は僕の番でしょう。あなただけに良いところは渡せませんよ。『三斬みかぎり』!」

「ギャギャギャ!?

「は! 一撃で屠ってこそ強者の証! 故に斧こそが最強だ! うぉぉぉ『大斧割だいふわり』!」

「ビュッ!?

「俺様を忘れるな! 俺様が敵を引きつけるからこそお前たちが安全に戦えると理解しろ! さあザコ共俺様の下へ来い、『ファイトー』!」

ジーロンが〈ゴブリン〉を三連続斬りで切り捨て、トマが大きな振りかぶりからの一撃で屠り、そしてヘルクが無駄に挑発スキルを使って残り1匹になったゴブリンを引きつける。

「はわわ。1組の〈戦闘課〉ってこんなに凄いんですか!?

「いや。あれはまだまだ初心者だぞ」

全員MPの配分が全然出来ていない。それぞれが好き放題ぶっ放しているだけだ。

まあ派手には見えるが、ゴブリン相手にはオーバーキルだな。

ヘルクなんてもうヘイトを取る必要も無いのに過剰に取っている。ほら、すぐにジーロンにゴブリンが斬られて戦闘終了だ。最後の『ファイトー』を使った意味が無い。

しかし、ふむ。これがこの世界の普通の戦闘なのだろうか?

確かにこんな戦い方をしていれば中級ダンジョンで手をこまねいているというのも分かる。

いやいや、そんなはず無いな。スタミナ配分なんて初歩の初歩だ。

つまりまだ彼らが職業ジョブを使いこなせていないだけだろう。

まだ職業ジョブに就いて長くても一ヶ月だからな。

どうしようかなぁ。教えてやろうか迷う。しかし、どうせ学園の授業でも習うだろうし、俺が教える必要は無い。

でもなぁ。クラス対抗戦ギルドバトルなんかがあるからなぁ。クラスメイトが弱いとそのしわ寄せが俺たちに来るんだよなぁ。

俺がサターンたちの事について思い悩んでいると、一仕事終えてきたといった風に髪をかき上げてサターンが言う。

「ふっ、どうだったかな、我の戦い方は。何か参考になったなら嬉しいな」

「くっ!?

サターンの顔がピエロとダブった! 笑いを耐えるのが大変なんだぞ。いきなりボケをかまさないでくれ!

ふう、なんとか落ち着いてきた。少し参考になったな。こういう初心者がクラス内に多いかもしれないと分かったし。

とりあえず聞かれたので答える。

「サターンは全くの初心者だな」

「な、なにおう!?

まさか初心者呼ばわりされると思っていなかったのか、サターンが目を見開いて頓狂とんきょうな声を上げた。

自覚がなかったかぁ。

あれだけやっていて自覚がないとか相当だが、しかし高火力の職業ジョブだとよくこういうことがあるらしい。何しろ全部一撃だからな。自分がどの程度の強さなのか分かってないことが多いのだ。多分聞いたら、俺は最強だと答えるだろう。間違いない。

しかたない。クラスメイトのよしみで少し教えてやろう。

「ゴブリン相手に『メガフレア』の連発しかしないし、というかINT凄く高いみたいだから『メガフレア』の二つ下の『フレア』で倒せるからMPの無駄遣いだ。もう8層まで降りてきているのに改めようともしないし、そんなんでは最下層に着く前にMP切れを起こすぞ。とても賢い攻略とは言えないな」

「な、な、なん、だとぉ!?

「あと後衛の【大魔道士】なのに前に出すぎだ。なんで前衛に近い位置にまで前に出てるんだ、もっと後衛にいろ。あと倒すばっかりに傾倒しすぎだ、もっと他のメンバーのフォローもしろ、パーティ戦だぞ。あとあんなに近くで撃っていたのに何回か外していたな。射撃の練習が足りていないんじゃないか? 遠くから撃って回避されるなら分かるが、サターンのは狙いがズレている。調整した方が良い。まだあるぞ──」

少し教えてやるつもりが、言い出したら止まらなくなってきた。

サターンは職業ジョブの強さに引っ張られすぎて戦闘訓練を怠っていた様子だ。

その心意気は買うが、最低限の練習はした方がサターンのためだろう。

ここは心を鬼にしてサターンに直すべき場所を伝える。別にクラス対抗戦ギルドバトルの足手まといを減らしたかったというわけではない。

「う、うう。ううう──」

俺に改善点を言われている間、サターンは妙に静かだった。

ふと我に返って彼を見つめると、何故か膝を地面に突け、顔面をめり込みそうになるくらい強く地面に押しつけているサターンがいた。

何をしているんだろうか? 何故かすすり泣くような声が聞こえてくる気がしたが、多分気のせいだろう。

「ふ、ふふ。お、おかしいですね何故か足に震えが」

「あんなになるまで説教するなんて、鬼かよ」

「ありゃひでぇ。凹みすぎて顔面が地面にめり込んでやがる。プライドへし折る気かよ」

何故か風評被害を受ける俺。他の3人から何か恐ろしいものを見たような視線を受けた。

おかしいな。まるで俺がしでかしたみたいな言い方だ。

ちなみにモナは今さっき見つけた採取ポイントで採取している最中で聞いてはいない。

「さて、サターンはこんなところだろう。──次は」

「「「次……、次ぃっ!?」」」

最初理解を拒むかのように俺の発言を繰り返し、その後意味を理解して驚愕する3人に俺は向きなおる。

ついでだ。これから1年間同じクラスなのだし、俺も彼らとは仲良くしたい。

〈ダン活〉については任せてくれ。誰よりも知識はあると自負している。

「君たちにも山ほど修正点があるぞ。教えてやるからよく聞いてくれ」

「「「いいっ!?」」」

その日、少年たちは成長した。俺のアドバイスのおかげだな!


「ふふ、ふふふ、フフフフ──」

「悪魔だ。あいつは悪魔だ」

「マジ鬼だぜ……。俺様にここまで言うなんて。親にすら怒られたことないのに……」

何故かアドバイスを送ったら他の3人もサターンの後を追った。

こいつら、メンタルが凄く弱いな! びっくりしたわ!

挙げ句の果てには、そこまで言うなら実力を見せてみろ、とか言い始めたのでちょうど襲ってきたゴブリン3体相手に通常攻撃のみで秒殺したら大人しくなった。地面に膝を突いたとも言う。

ふう、俺もだいぶ成長したなぁ。Lvだけじゃなく、プレイヤースキルもだいぶ上達してきた気がする。

自分の戦果に満足している俺とは違い、彼らの凹みっぷりは地面にめり込むレベルだった。

ちょっと、初心者に言い過ぎたか?

「ゼフィルスさん。これはいったいどうしたんですか?」

採取の旅から帰ってきたモナが、大の男4人が膝と頭を地面に付けている光景を見てキョドる。

職業ジョブを効率よく運用出来るようアドバイスを送ったら、自分がいかにへっぽこなのか自覚してこうなった、みたいだ」

「ありゃぁ~。ゼフィルスさんって本当に凄いですから。僕もあのメモを最初に読んだ時、雷に打たれた思いでしたし」

何か経験があったのかモナが納得顔で彼らを見る。

しかし、元々プライドが高くなりすぎた彼らだ、この程度で折れはしなかった。

歯を食いしばるような顔をしてこちらを向く。

「へっぽこ……。このサターンが、へっぽこ、だとぉ!」

「ふふ。その言葉は、聞き逃せませんね」

「俺を舐めたこと、後悔させてやる」

「俺様をここまで凹ました奴は貴様が初めてだ!」

おお! さすが1組男子。負けん気が強い。もう復活したぞ。

そうこなくっちゃな!

「よしその意気だ! 今日は俺がビシバシ指導してやるからな。頑張って上手くなろうぜ!」

俺も彼らのやる気に応えようとしっかり指導することを約束する。

しかし、約束された彼らに一瞬凄い影が差した気がした。なんだろう、絶望感? 悲愴感? そんな感情が表情に表れた気がしたがきっと気のせいだろう。

証拠にサターンが決意を込めて言う。

「くっ!? いや、この我が、このサターンが負けるものか! いいだろう、その指導とやら、耐えきってみせるぞ!」

サターンが言えば他の3人も続く。

「ふふ、ふふふ。僕だって負けませんよ。サターン、君にだけ先に行かせるわけがないでしょう」

「俺だって負けん! この中で俺こそがトップの強者だと思い知らせてやる!」

「俺様を忘れてもらっちゃ困るな。俺様こそが真の強者だとすぐに分かるだろうぜ」

ライバルには負けられないと言ったところか。3人が奮起する。青春を感じるなぁ。

いいだろう。初の野良パーティだし少し彼らに合わせようと思っていたが、彼らが全力で学びたいというのなら俺も応えてやろうと思う。同じクラスのよしみだ。

まあ野良だからさほど時間も無いし、色々詰め込むのでハードかもしれないが頑張ってほしい。

じゃ、続きと行こうか。


「ほらサターン、狙いが甘いぞ! ちゃんと狙え! デカい魔法に頼るな!」

「ぐおおぉぉぉぉ! 『フレア』ぁぁぁ!!

サターンの魔法がゴブリンに飛来するが狙いが甘く、避けられる以前に当たる軌道にすらなっていない。当然ゴブリンをスルーして飛んでいき、サターンの魔法は無駄に終わる。

先ほどからサターンには後衛から魔法を撃たせているのだが、思った以上に命中率が低い。というか一発も当たってない。

彼が前衛付近まで前へ出ていたのは、この命中率の無さをごまかすためだったみたいだ。

当たれば一撃な『フレア』だが、当たらなければ無意味である。

サターンは今までその圧倒的な攻撃力のみでモンスターを殲滅していたみたいだが、それはザコだから通じる手段だ。今後中級ダンジョンに挑んだら確実に詰むな。

今のうちにちゃんとしたやり方を身につけておいた方が良いだろう。

ちなみに他の3人だが、こいつらは前衛なので攻撃が当たらないなんてことは無い。

そのため俺の指導によりここ数時間でなかなかの成長を見せていた。半ばやけくそみたいに見える時もあるが。

というわけでまったく成長の兆しが見えないのはサターンだけだ。

「クソぉぉぉ! やってられるかぁ! 『メガフレア』ぁぁぁ!」

ついに癇癪を起こしたサターンが二段階目ツリーの『メガフレア』を使ってしまう。

しかし、ゴブリンに当たらない。命中率が悪い。

「ノオオォォォォォ!?

サターンが膝から崩れ落ちた。

渾身の一撃も命中せず、凹み度が進行している。

「我は、サターン、偉大な【大魔道士】、サターンなのだ───」

ついには地面に向かって自己紹介まで始めた。

相当キテいるかもしれない。

「うーん。こりゃダンジョンの前にまず命中率を上げる練習をしなくちゃどうしようもないな」

今のままでは戦力外だ。良くこれでここまで来られたものである。逆に凄い。

あと前衛組の視線が痛い。

「ふふ、また凹ませていますね」

「悪魔かよ」

「俺様だからこそ耐えられるのだ。こんなスパルタ指導をされればああなるに決まっているというのにな」

いや、そんなハードな事言ってないぞ? 

むしろそれ以前の段階だ。

結局MPが底を突いたサターンには休んでいてもらい、前衛組たちだけでその後は進んだ。

そして夕方、俺たちは最奥の救済場所セーフティエリアにたどり着き、少しの休息の後、ボス戦へと突入したのだった。


「ゴ、ゴビュゥゥ……」

ナイトゴブリンが膨大なエフェクトをまき散らして沈んで消える。

ナイトゴブリン戦は簡単に終了した。

俺が本気を出した結果だ。1分持たなかったな。

他の5人は呆然とそれを眺めていた。モナ以外は若干引いていた気もする。

いや、実はボス戦に挑む前にちょっとしたトラブルがあったのだ。

最初は彼ら4人にボス戦をやらせようと思ったんだけどな。だけど気がついた、俺、今日は全然ダンジョンで楽しんでないって。

だから最後のボス戦くらい俺も参加しようと思ったわけだ。

だけど、そこで4人から意見が上がった。

「まず貴様の実力を見せてもらおうか。我に散々ダメ出しをした貴様の実力を、な。もしたいしたことが無ければ相応の扱いをさせてもらおう」

そんなことをサターンが言い始めたのが切っ掛けだった気がする。

さっきまで凹んでいたはずなのに復活だけは早いなサターン。まあ、言いたいことは分かる。

その意見に他の3人も同意を示した。

「ふふ。ちょうどボス戦ですし、いい機会ですね」

「俺たちにあれだけ言ったのだ。まさか口だけでは無いよな?」

「なんなら俺様にリーダーの枠を譲ってくれてもいいんだぜ?」

確かに口だけの人にあーだこーだ言われたくないというのは分かる。ならば証明して見せようではないか! 手始めに俺はサササッと今までの実績を胸に着ける。

行くぜ? 俺の胸に光るこの攻略者の証が目に入らぬか!? キラリ。

「くっ!? だが、それは仲間が良かっただけかもしれないだろう。〈エデン〉は伝説の職業ジョブばかり、だからな!」

俺の耀く証を見つめて一瞬怯んだサターンが苦し紛れに言い訳を放つ。彼の足が震えている気がするのは気のせいだろうか? いや、気のせいでは無い。ふふふ、効いてる効いてる。

ついでに俺がここのレアボスをソロで倒したと知ったらどんな顔をするだろうか、ちょっと見てみたい。

ということで言ってみた。

「俺はここのボスに初挑戦する時ちょうどレアボスがポップしてな、ソロで倒したんだぜ?」

「ふふ!? ふふふ。そんな、ありえませんね。計算するまでもありませんよ」

「つ、くならもっと、マシな嘘を吐いてほしいものだな……」

「俺様もソロは無謀だと分かるぞ。そ、そんな嘘には惑わされない!」

否定しつつもキョドる3人。全員目が泳ぎまくっている。

なんとなく今の話が実はマジだと分かったのかもしれない。

サターンなんて顔色が青くなっている。

「まあ、4人の意見は分かった。なら俺も本気で挑もう。次のボス戦は俺も参加する」

ということで俺も戦闘メンバーに加わることにしたのだ。

彼らが知りたいのは俺の実力だろう。

確かに、教える側が貧弱では教わる側も思うところがあるだろう。

故に、今回は本気を出すと決めた。

モナには門を潜ったところで待っていてもらい、いざ戦闘開始。

俺はやってくるお供ゴブリンを無視してナイトゴブリンに肉薄すると、ユニークスキルを二つ発動して一気に叩き込んだ。

「行くぜ! これが【勇者】の本気だー!!  『勇気ブレイブハート』! からの──『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」

「ゴブオオオオ!?

ぶった切られて一気に大ダメージを負ったナイトゴブリンがクリティカルダウンしたのでチャンスとばかりに猛攻撃を掛けたらそれでHPがゼロになり、戦闘が終了してしまったのだ。

呆気ない戦闘であった。やっぱり初手でクリティカル決まったのが大きかったな。

こういうのも楽しいから良しだ。

ちなみにお供はボスが消えた時点で一緒に消えている。

「こんなところだが、足りていたかな? 俺の実力は」

そう聞くと、唖然としていたモナ以外の4人がブンブンと首を縦に振って頷いた。

ちょっとやり過ぎたかなぁと思ったが、ちゃんと認めてくれて良かったよ。

「じゃ、とりあえず今日はお疲れ様。また明日も頑張ろうな」

「!」

「ふ!?

「きょ、今日だけじゃないのか!?

「俺様はもう十分だと思うぞ!」

何故か明日も遊びに誘うとビクッとする4人。ちなみにモナは目を輝かせている。

「明日は練習場に行こう。サターンのこともあるが、まだまだ君たちはスキルの使い方が分かってないからな。それに今後取得した方が良いスキルも説明したいし、放課後空けておいてくれよ」

「「「「いぃ!?」」」」

一度やり始めると育成って止まらないんだよなぁ。

まあ、俺も〈エデン〉の事があるのでたまにしか出来ないだろうが、せっかく仲良くなったのだし彼らともたまにダンジョンに行こうと思う。その前に要練習だけどな。

モナも、今日は少ししか教えられなかったからまた時間を作ろう。

そんなこんなで今日はここで解散。明日の楽しみが増えたな。

今日のドロップは全部売却して後日山分け予定。採取物についてはモナが8割、連れてきた俺たちに2割としていたのだが、今日のお礼と言って〈魔力草〉を結構多めに分けてくれた。

モナ、超良いやつ。

「さて、じゃあ今日の本番と行きますかね」

俺以外の全員が転移陣で帰還するのを見届け、俺は1人救済場所セーフティエリアに戻っていた。

彼らからは訝しがられたが、1人でやりたいことがあるからと言って帰ってもらった。

俺はバッグから〈笛〉を取り出す。

せっかく〈野草の草原ダンジョン〉に来たのだから、久しぶりに〈エンペラーゴブリン〉と遊ぼうかと思ったのだ。

今はソロなので、〈笛〉の代金が多少かさんでも報酬は独り占め出来るので収支はギリプラスになるだろう見込みだ。

ということで、8回全部使ってしまおう。さて、何回〈エンペラーゴブリン〉ツモれるかなぁ。早速1回目を吹いた。

「〈エンペラーゴブリン〉、あっそぼうぜ!」