ぐぅ。や、やるじゃないかラナ。多分素だと思うが今のはいい一撃だった、なんでも言うことを聞いてしまいたくなる。

だがしかし、俺にも応えられないお願いはあるのだ。

「う、残念だがラナ、フィールドボスはリポップできないんだ」

ちょっと呻き声が洩れたがなんとか告げる。

最奥のボスとは違いフィールドボスは人為的なリポップは不可なのだ。つまり〈公式裏技戦術ボス周回〉が使えない事を意味する。

というのもフィールドボスは最奥と違い、ボス部屋に敷居が設けられていない。つまり、人数制限が無いんだ。

ボス部屋は人数5人までしか受け入れられない制限があるがフィールドボスなら何人でも参加が可能。

フィールドに登場するボスは、実をいうと複数のパーティで討伐することが可能なボスなんだ。

最上級ダンジョンのボスになると結構ヤバい、完全にギルド大人数で攻略することが前提になっている強さをしているし。

まあこれは上級や最上級ダンジョンに行った時にまた説明するとして。話がそれた。

とにかく、複数のパーティでボッコボコに出来る特性上、〈公式裏技戦術ボス周回〉はむちゃくちゃ難易度が下がってしまう。苦労せずLv上げとアイテム収集が可能となってしまう。

それはさすがに開発陣が認めるわけも無く、〈公式裏技戦術ボス周回〉はボス部屋のみ可能な戦術となっているわけだ。

〈公式裏技戦術ボス周回〉はあくまで開発陣の苦肉の策だということを忘れてはいけない。出来れば有りとしたくない戦術なのだ。開発陣にとっては、だが。

これが初級ダンジョンであれば最奥に行くのは簡単だが、中級以降は最奥に到達するにも一苦労だ。苦労とはゲームを楽しむ上で重要なスパイス。そこらへん、上手くバランス調整されている。

つまり途中のフィールドボスでLv上げされて楽々攻略されてはたまらない、ということだな。

しかし現在の状況ではできればリポップ機能をつけてほしかったと思わざるを得ない。

裏話を省略して掻い摘んで説明したところ、ラナがガーンと背後に雷を幻視するほどショックを受けていたからだ。

おおう。普段元気いっぱいのラナに影が……。相当落ち込んでいるっぽい。

「う、うう~」

「ああ、ラナ様……」

まあ、エステルのあの対応も攻略という意味ではベストを尽くしたと言えるのだが、ラナはボス戦を楽しみにしていたのであんなにあっさり終わらせたくは無かったんだな。まさかここまでショックを受けるとは。

その後、落ち込むラナをエステルを除く全員で励ましてみたが、どんよりとした影が晴れることは無く、その日は帰還となったのだった。

〈ジュラ・ドルトル〉を倒したことにより20層の転移陣が起動し、それに乗って今日の攻略を終える。

〈中下ダン〉に帰還すると何やら周りが喧騒に包まれていて、その視線は俺たちに注がれているような気がしたが、気にしている余裕は無く、ラナとエステルはそのまま貴族舎に帰ると言うので3人でそれを見送ったのだった。

ハンナも錬金のノルマがあるとのことでここで別れ、後にはシエラと俺が残された。

「ちょっと心配ね。ラナ殿下も早く切り替えられればいいのだけれど」

「楽しみを奪われた子どもみたいだったな。いや、ラナは子どもだけどさ」

「あなたもでしょう。楽しみを奪われて平静でいられるかしら?」

「うーむ。不可能かもしれない」

「ほら、あなたも同じじゃない」

シエラの言葉に反論出来ない件。

ラナの反応を大げさに思ったりもしたが、自分の身に降りかかったらと思うと笑えなくなった。

ベストを尽くしたエステルではあったが、ちょっとタイミングが悪かったな。

「早く仲直りしてほしいわね。あの2人が仲違なかたがいをしているところなんて見たくないもの」

「まあ、それに関しては同意だが。大丈夫だろ、小さい頃からの付き合いだって言うし」

俺はこの時楽観的に考えていた。

ゲームで落ち込んだりテンション振り切れたりなんて日常茶飯事にちじょうさはんじだ。だから今は落ち込んでいようともすぐにまた戻るだろう。そう思っていた。

夜になり、部屋にエステルが訪ねてくるまでは。

「ゼフィルス殿、どうかラナ様との仲直りの方法を伝授してほしいのです」

俺にも伝授出来るものと出来ないものがあるぞエステル?


初めてリアルで中級ダンジョンに挑んだその夜のことだ。

1人のとても発育の良い女子が俺の部屋へと訪れていた。もちろんエステルのことだ。

少し落ち着きなさそうにソワソワしながらチラチラと部屋を窺う彼女。

その部屋にいるのは1人の男子と1人の女子だけ。

こんな時間に1人で男子の部屋にお邪魔するなんてどういうつもりだろうか。

しかも、その格好がいつもの姿と違いすぎる。

なんと彼女はピンクのパジャマ姿だったのだ。とても夜の男子の部屋にお邪魔する格好ではない。いや、むしろ正装なのだろうか? 俺には難しすぎて判断がつかない。ごくり。