第4話 今日は学園が休みだ! ダンジョン行こうぜ!

楽しい体験学習を受けまくった翌日。

今日は土曜日だ。つまりダンジョンアタックの日である。

早速ギルド部屋に向かい、扉を開けると共に軽快な挨拶を交わす。

「おはよう皆! 今日は楽しい楽しいダンジョンアタックの日だ!」

「そうね! 今日はバンバン倒すわよ! そして〈金箱〉を当てるの!」

ラナが乗ってきてくれたのでイエーイとハイタッチを交わした。

どうやら最近まで毎日のようにダンジョンに潜り続けていたのに、ここ数日ダンジョンに潜らなかったものだから楽しみが溢れている様子だ。

「あなたたち元気ね。もっと普通に挨拶しなさいな」

「ふふ、いいじゃないですかシエラさん。私もダンジョンに潜れるのを楽しみにしていました」

「……そうね。でもハンナは気をつけなさい。特にあなたは学生の模範となるように言われたのでしょう?」

「あう。あの、未だ私が学年のトップレベルの扱いを受けるのに抵抗があるのですが……」

あまりの俺たちのはしゃぎぶりにシエラからジト目をいただいてしまった。実を言うとシエラのジト目は結構好きだったりする。今日はラッキーな日だ!

また、ハンナは学年トップレベルなので順調に先生方から目を掛けられている様子だ。頑張れハンナ。

一つ落ち着いたのでギルドを見渡すと他にエステル、シズ、パメラ、セレスタンの姿が見える。

シェリア、ルル、リカ、カルアはまだ来ていないようだ。

それを確認してシエラに相談を持ちかける。

「シエラちょっといいか? 全体のスキルアップも進んでるしそろそろ次の方針を決めておきたいんだが」

「構わないわ」

シエラが頷いたので横の席に座る。

「サンキュ。次の方針なんだが、とりあえずの目先の目標として中級下位ダンジョンの攻略を目指したい」

今まで攻略してきたのは初級ダンジョン。つまりまだ入門編に過ぎない。

中級ダンジョンからはまた一気に難易度が上がり、パーティ単位の攻略からギルド単位の攻略に変わってくる。

前にも言ったかもしれないが固定パーティではキツくなってくるのだ。

そのダンジョンに合わせた攻略メンバーが必要になってくる。相性の悪いと思われるダンジョンにはメンバーを入れ替えて挑むようになってくるのだ。

また、中級ダンジョンの数は初級ダンジョンの比ではない。その数なんと30箇所。

中級下位チュカ10箇所、中級中位チュウチュウ10箇所、中級上位チュウジョウ10箇所のダンジョンが学園内には存在する。

ちなみにその中の各3箇所を攻略していれば次のダンジョンにステップアップしていける仕組みになっている。

中級下位ダンジョンの入場制限なら「職業ジョブLv40以上」「初級上位ダンジョン3箇所の攻略」「Eランクギルド以上の所属経験有り」の三つだな。

今のところこの条件をクリアしているのは俺、ハンナ、ラナ、エステル、シエラの5人だ。〈エデン〉全体を見ても、1年生全体を見てもまだ5人しかいない。

つまり入れ替えが出来ないので中級ダンジョンの攻略は今まで推し進めておらず、後続の育成に努めていたのだ。

ちなみに一番条件クリアに近いのがカルアで、後Lv4つのところまで来ている。

しかし、早く中級ダンジョンには行きたい。楽しいから。

ということで改めて方針を決めて、中級ダンジョン目指してがんばっていこうと決めるのが今回の相談である。

「はあ」

そんなことを熱く相談したらため息を吐かれてしまった。

「後続を引っ張っていくのはいいけれど、私はもう少し〈スキル〉〈魔法〉の練習をさせたほうが良いと思うわ。彼女たちを見ていると、やっぱり急なLvアップに身体が慣れてないのよ。これでLvだけクリアしたからと言って中級ダンジョンに連れて行っても満足に成果を挙げられないと思うわ」

「……なるほど」

確かにシエラの言うことも一理あった。

特に新メンバーは職業ジョブLv20に到達した翌日にはLv30を突破していたのだ。

身体の動きとかスキル回しとか全然分かっていないだろう。

シエラはまず数をこなし、職業ジョブに慣れさせるべきだと俺にさとしてくれる。

それを聞いて俺は深く納得した。

ゲーム〈ダン活〉時代は全てのキャラをプレイヤーが操っていた。

もしくはセミオートだ。

どちらにしても熟練度なんかはそこそこ高かった。

要は新しく加入したメンバーがいたとしても練習いらずだったのである。

しかしリアル〈ダン活〉では個人の熟練度に依存するため、たとえ職業ジョブとLvが良くてもポンコツと言うのは普通にありえる。

ゲーム用語ではこれを養殖、なんて呼んでいたっけ。パワーレベリングの弊害である。Lvに実力が追いついていないという意味だ。

纏めるとだ。

「まずは後続にLv相応の実力を身につけてもらったほうが良い、ということか」

「そうね。〈エデン〉は最強のSランクを目指すのだもの。相応の実力は持ってしかるべきだわ」

「だなぁ。やっぱりシエラに相談してよかったぜ」

「……そう。それと提案なのだけれど、あなた並みの指示や指揮が出来る人物がいた方がいい気がするの。私たち先陣メンバーもあなたの指揮や指示のおかげでスムーズに強くなったのだし、いるのといないのではだいぶ違ってくるわよ」

シエラの話によれば新メンバーと先陣メンバーの違いは俺の指揮や指示にあるとの事。

初期からずっと俺の指揮や指示を聞いていたからこそ今の先陣メンバーはあれだけの実力を手に入れたのだとシエラは言う。

まさかここまで褒められるとは思わなかった。シエラにそう言われると、少し照れるな。

しかし、

「俺並みの指揮や指示が出来る人物か……」

ゲーム〈ダン活〉時代の知識がある俺並みの人物はこの世界にいない。

しかし、だからと言っていないから無理だと決め付けるのは早計だ。知識は俺に及ばずとも、戦略が俺より上手い人物はいるはずなのだから。

ちょっと探してみるかな。

とりあえず、新メンバーは職業ジョブLvが40になっても中級ダンジョンに行くのはまだ早いという結論に落ち着いた。

シズとパメラも頷いていたので彼女たちにも自覚があったのだろう。

わりと早い段階で職業ジョブに就いていたカルアとリカならともかく新メンバーは色々と慣れと練習が必要だ。

じゃあ当面の間、俺が先陣メンバーに教えていたように指揮を執って新メンバーを育成するのか、というとちょっとそこまでの時間が取れないかもしれないので、新たに戦略に詳しいメンバーに加入してもらうということを目標にするとして話は付いた。

今の話をギルドに集まったメンバーに説明する。

「というわけで、誰か戦略や戦術に詳しい知り合いがいたら紹介してほしいんだが、誰かいないか?」

ギルド部屋で全員が集まったのでミーティングをして、そこで推薦候補を募ってみた。以前新メンバー組を募集したときを思い出すなぁ。

するとまずリカが口を開く。

「そうだな、心当たりがいないでもないが、上級生ではだめなのだろう?」

「ああ。出来れば1年生で揃えたいんだ。職業ジョブは基本的に〈戦闘職〉もしくは【武官ぶかん】系で」

「ゼフィルス、【武官】って何?」

希望を伝えると、【武官】というのが耳慣れない言葉だったのだろう、カルアが首を傾げて聞いてくる。

「【武官】系っていうのは軍の階級の名前が付いた職業ジョブ群のことだな。【中尉】とか【大尉】とかが該当する」

ちなみに【筋肉戦士】のダビデフ教官は国軍では少佐の地位にいるが、地位仕事職業ジョブは別物である。……ダビデフ教官って少佐なんだよな、あの若さで。エリートである。さすがこの世界の【筋肉戦士】。

「うーん、聞いたことないかも」

「まあ、公爵しか発現しないしな」

【武官】系は「公爵」のカテゴリーに発現する職業ジョブ群である。さすがにカルアが知らないのも無理は無い。

【武官】系は人の上に立つ系統けいとうの多い職業ジョブ群だった。軍の地位系職業ジョブのほか、【大臣】や【宰相】なんかの職業ジョブを内包する優秀なカテゴリーでもある。できれば「公爵」も〈エデン〉に加えたい。

そんなことを考えているとシエラからツッコミが入った。

「なんであなたが公爵しか発現しない職業ジョブを知っているのよ」

「シエラさん、ゼフィルス君ですもん。いつものことですよ」

それをハンナがいつもの俺発言で援護する。いやあ、照れるぜ。

その後も募ってみたが、残念ながら皆の知り合いには戦略に長けた人物はいないとのことだ。いや、一応リカが上級生には戦略に長けた従姉妹がいるので紹介しようかと申し出てくれたのだが、先ほども言った通りなるべく1年生で揃えたいので見つからなかったら頼むとお願いした。

とそこへ小さく挙手する者がいた、俺の従者をやっているセレスタンだ。

「よろしいでしょうか?」

「もちろんだ」

「知り合いではないのですが、1年生で公爵家の方ならば確か2人ほど在学していたはずです。そちらを当ってみるのはいかがでしょうか」

「お! そいつはナイスな情報だ。どこにいるかとか分かるか? 早速会いに行ってみるぜ」

さすがはセレスタンだ。こういうのは早いほうが良い、即で立ち上がると、ラナも一緒に立ち上がった。その顔にはありありと不満が溢れている。

「ちょっとゼフィルス! ダンジョンアタックはどうする気よ! やっぱ無しなんて許さないわよ!」

「おっとそうだった。まずはダンジョンアタックだな」

俺としたことが、中級ダンジョンに挑みたいがためにダンジョンアタックを後回しにするところだった。そりゃあ本末転倒である。

「では、僕の方からアポイントをしておきましょう」

「そうだな。セレスタン頼む。だけど今日はこれからダンジョンアタックだから後日になる。後で調整しよう」

「かしこまりました」

話は纏まり、次にパーティ分けの話に移る。

今日の目標は「〈エデン〉のメンバー全員の初級中位ダンジョン全クリア」となった。

これで新メンバーも初級中位ショッチューを卒業し、初級上位ショッコーへステップアップできるな。初級ダンジョンなら誰を誘ってもどこでも行けるようになるんだ。素晴らしい。

早く中級ダンジョンでもそうなりたい。

というわけで2パーティに分け、片方は3日前と同じように新メンバー5人と俺、エステルで行く。ついでに指示や指揮などをして今日は彼女たちを鍛えるつもりだ。

エステルには悪いがまたキャリー役を頼んだ。

「最近御者ぎょしゃ扱いして悪いなエステル」

「いいえ。これはこれで楽しいですから問題ありません。待っている間も探索できますし」

それでもつまらない役回りだろう。

エステルには世話になりっぱなしだ。今度何かで報いようと心に決める。

一方で、別のパーティになってしまって拗ねている人が若干名。

「むう、またゼフィルスとは違うパーティなの?」

「悪いなラナ。明日は一緒のパーティになるから」

「約束よ! ハンナだって寂しがってるんだから」

「あ、あのラナ様、それは伝えなくて良いですよぉ」

「ダメよハンナ。寂しい時は寂しいって言わないと、構ってもらえないわよ!」

ラナとハンナには明日一緒にパーティを組むと約束をする。寂しがっているのはバレバレなのだが、暴露されたハンナが耳まで真っ赤になった。

あとラナのそれは多分お兄さんに構ってほしかった時のやつじゃないか?

いや、参考になった。ラナが寂しいと訴えてきた時はなるべく構ってあげることにしよう。

それはともかくだ。明日は一週間ぶりに先陣メンバーでダンジョンアタックすることになった。ちょっと中級下位ダンジョンにチャレンジしてみるのも有りかもしれない。

「それで、私たちは今日どのダンジョンに行こうかしら?」

「リカがまだ攻略してないダンジョンが良いわ! キノコ狩りに行きましょ!」

シエラとラナがもう片方のメンバーを集めてどこのダンジョンに行くかを相談する。

あちらはカルアとリカのダンジョン攻略の手伝いとボス周回でLv上げをするらしい。

もしかしたらカルアとリカは職業ジョブLv40に到達してしまうかもしれないな。

帰ってきたときが楽しみである。