第2話 新しいクラスにご案内、新しい学生たち。

迷宮学園では各専攻、各課にクラス分けがなされ、在籍する学生は先生の指導の下に職業ジョブを磨き、自分の進む道へと邁進まいしんする。

その大切なクラス分けが行われている一つがココ、〈戦闘3号館〉と呼ばれる〈戦闘課〉専門の校舎だ。

この〈戦闘3号館〉は主に〈ダンジョン攻略専攻・戦闘課〉の1年生が在籍する。他の〈攻略専攻〉である〈採集課〉や〈調査課〉、〈罠外わなはずし課〉などは別の校舎で行われているはずだ。

全学年で2万人も在籍しているため、もうクラス分けというよりも学舎分けと言っても良い具合だな。

少し遅れ気味に校舎に到着すると、そこは学生でごったがえしていた。

この世界はダンジョン資源で回っているため〈ダンジョン攻略専攻・戦闘課〉に在籍する学生は多い。というより全ての課の中でトップの大人気部門だ。全体の6割弱の学生が〈戦闘課〉を選ぶほどである。

故にここに集まる学生もむちゃくちゃ多い。そして校舎もむちゃくちゃデカい。

さて、完全に出遅れたな。こりゃ俺の番までだいぶ時間が掛かりそうである。

どうしたものか。

目の前の人混みに軽く悩ましい顔をしていると、声を掛けてくる人物がいた。

俺の従者であり執事のセレスタンだ。どうやら俺を待っていたらしい。

「ゼフィルス様、おはようございます」

「……セレスタンか! おはよう。なんか制服姿が新鮮すぎて一瞬わかんなかったぞ」

セレスタンの格好は白いブレザーに紺のズボンと、この迷宮学園の標準の制服姿だった。

いつも上下がパリッとした黒の執事服を着ているため少し違和感がある。とはいえ似合ってるけどな。

「ゼフィルス様は制服姿がよくお似合いですね」

「ありがとな。セレスタンも制服似合ってるぞ。そういえばセレスタンも〈戦闘課〉だったんだよな。執事だから別の課でもいいと思うんだが」

「僕はゼフィルス様の従者ですからね、それに戦う執事でもあります」

どうも俺に無理して付いてきている様子は無いようだ。【バトラー】、というよりもセレスタン自身が執事なので別の課に行ってもおかしくはなかったが。まあ、セレスタンが良いと言うのだから良いのだろう。

「それと、ゼフィルス様、こちらに。すでにゼフィルス様はクラスが決まっておりますのでご案内しましょう」

「仕事が早いなセレスタン!?

どうやらセレスタンのおかげであの混雑に並ぶ必要は無いようだ。さすがセレスタン。良い仕事をする。

ちなみに俺たちは早期に職業ジョブに就いていたため、先生方からの確認はある程度免除されていたそうだ。今大混雑中なのは昨日や最近職業ジョブに就いた学生たちらしい。彼ら彼女らはまだクラスが決まっていないとのことだ。どうりで早いはずだ。

先導するセレスタンに付いていき校舎に入った。

「そういえば他のメンバーはどうしたんだ?」

「はい。シズさんやエステルさんたちに連れられて先にクラスへ向かったはずです。ゼフィルス様が最後ですね」

どうやら俺が最後だったらしい。アレだ、ギルドマスター出勤ってやつだ。遅刻ではない。

ハンナがちょっと可愛くごねただけだ。しかしそれを言うのはなんなので適当に言う。

「あ~、来る途中ちょっとしたトラブルがあってな」

「おや、大丈夫でしたか?」

「ああ。多分。問題ない」

大丈夫かは俺も知りたいところだが、とりあえずそう言ってごまかした。

話を変えよう。俺は先ほどから気になっていた事をセレスタンに聞く。

「それよりメンバーの所属クラスを教えてくれないか、ハンナ以外は〈戦闘課〉希望だっただろ?」

「はい。全員〈戦闘課1年1組〉ですよ」

「お、それは何よりだ」

〈エデン〉のメンバーはハンナを抜かして全員が〈ダンジョン攻略専攻・戦闘課〉希望だった。そしてその希望が通り、無事所属。さらにクラスまで全員一緒とはとても幸先が良いな。

クラス分けは職業ジョブの種類、そして職業ジョブLvと成績で決まる。〈1組〉ならその課で最も優秀なLvと成績を修めた者がクラス分けされるシステムだ。さすが実力主義。まあこれは学力などがまだ不明の1年生だけの処置なんだけどな。2年生以降のクラス替えはまたちょっと変わる。

そして1年生だけで構成されたギルド〈エデン〉のメンバーは全員職業ジョブLv30以上、初級中位ダンジョンクリア者なので当然のように全員1組だった。実は狙ってた。ハンナはすまん。

「到着しました。こちらが1組です」

「案内ありがとな」

クラスに到着した。

見覚えのある教室がそこにあった。ゲームで見たとおりだ。

俺は心の中でジーンと感動し、これからの学園生活に夢を膨らませる。

セレスタンが優雅に扉を開けてくれたので、背筋を意識してピンと伸ばし、悠々と中に入った。

「あ、ゼフィルスが来たわ! もう遅いじゃない!」

「おは。ゼフィルス」

最初に出迎えてくれたのはラナとカルアだった。

その声に反応してクラス全員の視線が俺に向く。

今クラスに居たのは15人ほど、そのうち俺とセレスタンを抜いた9人が〈エデン〉のメンバー、5人が制服の上からでも盛り上がる筋肉が分かるほどの筋肉、〈マッチョーズ〉のメンバーである。あと女子学生が1人、こちらは知らない顔だ。

少しだけ教室内がざわめく。主に〈マッチョーズ〉からだ。

「む、アレが【勇者】か」

「身体は細身だが筋肉は中々」

「ああ。鍛えられているな」

「どんな奴かと思っていたが中々どうして、話せそうだな」

「よし、後で筋肉談義に誘ってみよう」

そこ、聞こえているからな。というか筋肉談義ってなんだ? 参加しないぞ俺は、絶対にだ。

どうやら、1組のクラス分けはまだまだこれかららしく、まだ半数しか決まっていないようだ。

まあ1年生の中でもトップの学生を決める作業だからな、学園側も慎重になっているのだろう。

その慎重になった結果に何故【筋肉戦士】が入っているのか俺には悩ましいのだが、この世界では【筋肉戦士】が非常に優良職なのだと認識されているのだから仕方ない。

何気なにげに【筋肉戦士】たちは訓練によって凄まじくLvが高いらしい。少し前に【筋肉戦士】5人のパーティがついに〈デブブ〉を倒し〈幽霊の洞窟ダンジョン〉を攻略したようなのだ。その時に聞いた話では全員が【筋肉戦士Lv35】だったという。正直めまいがするほど驚いた。どんだけ訓練してるんだこの筋肉たちはと。

まあ、そんなわけでLvも高く、成績も初級中位ダンジョン2つクリアとあって1組に決まったようだな。

俺は意図的に筋肉から視線を外し、まず〈エデン〉のメンバーの下へ行く。

さて、では他の学生たちが集まり終えるまで少し談笑でもして待つとしようかね。

筋肉談義には参加しないからな?


クラス分けは1日掛けて行われるためにどのくらい待たされるのかと思ったが、思いのほか早く教員の方が来た。しかも偶然にもよく知る先生である。

どうやら学校案内をしてくれるらしい。

さすがにクラス分けが完全に終わるまで教室で待機というのは効率が悪いため、クラスが過半数近く揃ったところで学園案内が行われるのだという。クラスの全体で校内を歩き回るのも大所帯過ぎるので分ける形だな。

つまり俺たちは前半組。早めに解放されるかも。やったぜ。

「今日から君たちのクラスを受け持つことになりますフィリスといいます。皆さん気軽にフィリス先生と呼んでくださいね」

案内役はお馴染みのフィリス先生だった。ちょっとびっくり、しかもフィリス先生はこのクラスの担任を務めるらしい。

19歳美人教師が担任とか、やったぜ!!(2回目)

ちなみに後で聞いた話では副担任はEランク試験の時に担当してくれた、あの〈轟炎のラダベナ〉先生とムカイ先生が就くらしい。なるほど、ベテランがサポートに付くということだろう。

普通担任と副担任逆じゃないか、とも思うが、何か事情があるんだろうな。

思えば1組には王女を始め、高貴な姫たちが多数在籍している。フィリス先生はリカのお姉さんで侯爵家の長女だ。何かそういう配慮的な問題かもしれない。

俺的にはフィリス先生が担任でラッキーである。

その後、前半組の17人とフィリス先生で校内を始め学園内の主要なエリアをぐるりと回った。

リアル〈ダン活〉に来てからダンジョンばっかりだったため、こうやってリアルの学園を見て回るのは実は初だったりする。学園に来た当時の感動を思い出したぜ。

一通り見終わった時にはすでにお昼だった。主要な場所に絞って見たはずなのにさすが、学園は広い。

途中〈マッチョーズ〉の面々が俺を囲み、購買に売っているオススメのプロテインジュースがどうこうと切り出してきた時は焦った。が「僕、筋肉語、ワカリマセン」と言って乗り切った。

嘘だ。

実はセレスタンに助けてもらった。出来る執事がいて俺は恵まれてる。


昼食後は、午後一番で〈戦闘3号館〉に備え付けられている〈練習場〉に〈ダンジョン攻略専攻・戦闘課〉の学生全員が集まり、そこで入学始業式が行われた。

入学始業式。入学式なのか始業式なのかよく分からないが、時期が微妙なので合わさっちゃったものと思われる。

〈戦闘3号館〉は1年生専用の校舎なのでここに集まるのは全て同級生だ。

広い〈練習場〉にクラス毎に並ぶ同級生たち。俺たちが見て回っている間にすでにクラス分けは終わったらしいな。

先生方、お疲れ様です。

そこから壇上に立った学園長の短い御言葉があった。学園長は全ての課に向かい挨拶を行うので短い言葉で学生を激励した後すぐに去っていった。学園長もお忙しそうだ。

〈戦闘課〉の入学始業式代表の挨拶はラナが務めた。まあ順当だろう。ラナは王女だし。Lv50だしな。

「我々は世界に資源を供給するとても大切な仕事を担当します。そのためのノウハウや技術を学園から、先生から、そして先輩方から学び取り、自分たちのかてと致しましょう。また───」

一瞬本当にラナが喋っているのかと疑ってしまった。

壇上に立つラナはなんというか、いつもの無邪気さは無く、とても高貴なオーラに包まれていた。この光景だけを見ればラナが王女だと疑う者は居ないだろう。俺は疑ってしまったが。

ラナも昨日は帰った後忙しそうにしていたが理由はこれだったんだな。と1人納得する。

そんなこんなで式も終わり、今日はこれで終了となった。前半組は。

後半組はこれから学園案内が行われるらしい。連れて行かれる男女13人を見送った。後半組よ、ガンバレ。俺たちは一足先に帰るから。また明日、クラスで会おう。


「あふぅ。疲れたわ~」

「ラナ様、お疲れ様でございます」

「ラナ様、レモンティーです。お熱いのでお気を付けくださいませ」

「ラナ様、ケーキはこちらに置かせていただきますのでご自由にお取りください」

「苦しゅぅないわぁ」

「なんだこれ?」

解散した後そのまま帰るのも勿体ないとギルド部屋に来た〈エデン〉のメンバー11人だったが、入学始業式代表の挨拶で気を張りまくったラナが一瞬でテーブルの上にぐでぇと身を預けていた。

すぐにパメラ以外の従者3人がラナの下へ向かい癒やしを与え始める。

エステルが労いながらぐでっとしたラナを起こし、セレスタンがティーを入れ、シズがサービングタワーを用意している。

ってシズ、そんなケーキバイキングとかにありそうな物どっから用意した。

従者の〈空間収納鞄アイテムバッグ〉の中はいったいどうなっているのだろうか、ちょっと覗いてみたい。

そんな事を思っているとあっと言う間に貴族のティータイムが完成した。早い。

そんな光景を見てカルアが目を輝かせてラナに言う。

「おいしそう。私も食べていい?」

「もちろんいいわよカルア。皆も一緒に食べましょう?」

ラナのお誘いもあり、皆でティータイムをすることになった。

相変わらずセレスタンの入れるティーは美味かった。さすが、『ティー作製』のスキル持ち。やっぱりスキル持ちの作る料理アイテムは美味いなぁ。今度料理アイテム巡りをしようと心に決める。

他の皆もセレスタンとシズ以外は席に着き、ティータイムが始まった。

ラナはさすが王族という仕草でカップを口に運び、一息つく。

「ふぅ、でも本当に疲れたわ。慣れない事なんてするもんじゃないわよ」

「ですがラナ様はもう少し慣れていただきませんと」

ラナはよほど先ほどの代表の挨拶がこたえた模様だ。最近甘やかし気味だったエステルが珍しく厳しい。

「うぅ~、癒やしが、もっと癒やしがいるわね。カルア、〈幸猫様〉をここへ」

「ん。わかった」

「ちょっと待とうか、行かせないぞ!?

癒やしを求めたラナがとんでもない事を言い出したため俺が素早く先回りして立ち上がろうとしたカルアの肩を押さえて止める。

そのままカルアを席に座らせて俺が代わりに取ってくることにした。

「ほら、取ってきたぞ。癒し系ぬいぐるみのペガサスさんだ」

「これ〈幸猫様〉じゃないわ!」

そりゃシエラがルル用に買ってきた普通のぬいぐるみだからな。〈幸猫様〉への魔の手は俺が防ぐ!

「ただいまです~」

「あ、ハンナおかえり! こっちで一緒にお茶しましょうよ! シズ、ハンナの分もすぐに用意してあげて。セレスタンは椅子よ」

「お任せください」

「畏まりました」

そこへギルドにやってきたハンナ。良いタイミングだ。

ラナの気が逸れる。

シズがティーを用意している間にセレスタンが優雅な動作でハンナのために椅子を用意していた。な、なんて自然な動作なんだセレスタン。俺も見習いたい。

「ハンナ様、こちらへどうぞ」

「う~。ありがとうございます~」

セレスタンが椅子を引いて案内するとハンナがすぐに座り込んだ。

しかし、様子が少しおかしい。あの疲れ知らずなハンナがさっきのぐでっとしたラナのような雰囲気だ。

「どうしたんだハンナ? なんかすっごく疲れているようだが?」

「そうなの。聞いてゼフィルス君~」

なんか弱っているハンナの事情を聞くと、〈麒麟児のハンナ〉は〈ダンジョン生産専攻〉で大人気だったらしい。

ハンナは成績優秀だし、可愛いし、話しかけやすいから、もういろんな人に囲まれてチヤホヤ状態だったという。そして【勇者】との仲も根掘り葉掘り聞かれたらしい。

青春しているなぁと感じる。

「大人気かぁ。良かったじゃないか」

「良いけど、良くないんだよ~。あんなに尊敬の眼差しを受けて、私溶けちゃうんじゃないかって思ったもん」

それに加え〈ダンジョン生産専攻〉1年生全員の前での入学始業式代表の挨拶までこなしたハンナ。もう今日一日でハンナの許容量は一杯になってしまったらしい。

なんだか聞く限り、順調にお姉様路線を進んでいるように感じた。

いや、ロリのハンナではお姉様は難しいか。

とりあえず頭をなでなでして癒やしを与えておく。ハンナはこれをすると癒やされるらしいからな。

「え、えへへ~」

「あ、ハンナ、それ羨ましいわ! ゼフィルス、私にもやって!」

「ああ、これくらいなら別にいいぞ、──ってなんで〈幸猫様〉持ってるんだ!?

「ゼフィルスが持ってきてくれないから私が直々に取りに行ったのよ」

「いやそこは諦めてくれよ!?

ちょっとハンナに気を取られている間に油断も隙も無い王女である。

「もう。ちょっとくらい良いじゃない、ハンナも一緒に癒やされましょ?」

その後〈幸猫様〉のおかげでラナとハンナは無事元気を取り戻したのだった。

〈幸猫様〉にも苦労を掛けます!


クラス分けの翌日、今日から授業が始まる。

〈戦闘課〉の授業は大きく分けて3種類、〈一般授業〉〈戦闘授業〉〈選択授業〉がある。

迷宮学園の授業は各専攻、各課によって異なり、俺たちの通う〈戦闘課〉は一般授業の他に多くの戦闘についての授業が組まれている。

〈一般授業〉の必修科目は国語、数学、歴史の3点。その他は選択授業で学生の伸ばしたいように伸ばす方針だ。

〈戦闘授業〉の必修科目は、ダンジョン攻略、職業ジョブ連携パーティ特産とくさんの4点。

これを座学、実技の両方で伸ばしていく。

他、受けたいものがあれば選択授業で受ける形だ。

〈選択授業〉は他の課と合同、専攻毎の括りは取り払われ、自分の好きな授業を選択して受講することが出来る。

たとえ〈戦闘課〉に所属していても生産を勉強したり商売を勉強したりして、将来の自分がなりたいものへの技能を身につけることができるのだ。個性を磨く非常に重要な授業と言えるだろう。

他の専攻の同級生との出会いの場でもあるしな。

と、教壇の奥で新任美人教師のフィリス先生が説明してくれる。

「これから時間割と選択授業のパンフレットを配りますね。1年生の選択授業が始まるのが来週金曜日からになりますので、皆さんは希望する選択科目を選び先生に提出するようお願いしますね」

今は朝のロングホームルーム中。学園生活についてのあれこれをフィリス先生が説明してくれているところだ。

そして窓側には〈轟炎のラダベナ〉先生が座っており、そんなフィリス先生と学生たちの様子を観察している。

そのせいか、学生たちは少し落ち着きが無い。

まあ、今日初めて学園生活がスタートしたわけだし、最初だから浮き立っているだけかもしれないが。

「以上です。何か質問はありますか? 無ければ1人ずつ自己紹介をしましょう」

そう言ってフィリス先生がまず廊下側の壁際に座っている男子の列に紹介を頼む。ちなみに俺が座っているのはその廊下側の席の一番後ろだ。前に居るのは4人なので俺は5番目だな。

ふむ。自己紹介か、この辺は日本の学校とそんなに変わらないんだな。

列の先頭にいる男子がゆっくり立ち上がると、クラスメイトたちに振り向いて自己紹介した。

「我は【大魔道士】のサターンだ。我がクラスを引っ張ってやるから光栄に思うが良い」

まあ、自己紹介の内容は普通じゃなかったが。続いて2番目の男子が立ち上がる。

「ふふ、前の彼は少し品に欠けていますね。僕は【大剣豪】のジーロンです。僕こそがクラスを引っ張っていくにふさわしいでしょう。よろしくお願いしますねみなさん」

すると3番目の男子も立ち上がった。

「おいおい待てよ。俺は【大戦斧士だいせんふし】のトマ。俺以外にクラスを引っ張っていくにふさわしい人物はいねぇだろ」

そして4番目の男子も立ち上がる。

「ふん。俺様を忘れてもらっちゃ困るな。俺様は【大戦士】のヘルクだ。俺様こそ先頭に立ってクラスを引っ張るにふさわしい」

なんでこいつらは自己紹介でマウントを取り合ってるのだろうか?

というか最後の俺を忘れてもらっちゃ困ると言っている人物は誰だろう、俺知らないぞ。

なんか睨み合う男子学生たちを見て頭をひねる。

ゲーム〈ダン活〉では授業内容なんて当たり前のようにカットされていたため俺にはこれが常識なのかよく分からない。

もしかしてそういうノリなんだろうか。

また一つリアル〈ダン活〉の知識欲が満たされてしまった。

しかし、そこに物申す者が現れる。我らが頼れる王女様、ラナだ。

教室のほぼ中心の席に座っていたラナが立ち上がり、片手を腰に当てる。

「ちょっとあなたたちいい加減にしなさいよ! そんなドングリの背比べなんてして、まったくの不毛だわ!」

「な、なんだと!」

「ふふ。面白いですね。僕以上の存在がこのクラスに居るとでも?」

最初に紹介した【大魔道士】と【大剣豪】がラナの言葉に過剰に反応する。

なんでこいつらは自信満々なんだ? あ、ラナがこっち向いた。

顎をクイッとなさって、その顔は言ってやりなさいと告げている。

え? この雰囲気の中、言うの? 俺が?

……なんだか楽しくなってきた。言ってやろう。

「そこまで自信があるのならLvを言ってみてはどうだ?」

「ぬ」

「貴様は! 【勇者】か!」

男子列の最後の席に居た俺が立ち上がってそう言うと【大戦斧士】と【大戦士】の男子がこっちを向く。まだ自己紹介はしていないはずだが向こうは俺を知っているらしい。

すまん【大戦士】。俺は君を知らない。

「この学園は実力主義だ。なら、分かるだろ?」

俺の言わんとすることに気がついた4人が何故か平静を取り戻す。まるで自分たちの方が上だと確信しているかのような振る舞いだ。

え? 絶対そんな事無いと思うが? 俺、代表の挨拶をしたラナと同Lvだぞ?

そんな事を思っていると【大魔道士】のサターンが前に出て言った。

「ほう? 良いだろう。だが【勇者】がしただった場合はそれ相応の扱いを覚悟することだ。聞け! 我はサターン! 【大魔道士Lv17】のサターンである!」

「低っ!?

思った以上に低かった。思わずビックリしちまったぞ!

しかし、そんな反応をしたのは俺だけだったらしい。他の3人が落ち着きを無くす。

「ふふ。お、おかしいですね。計算と違います」

17、だと!? バカな」

「この俺様より上がいるだと!?

君たちの反応こそバカなである。

後ろを振り返り、そんな3人の様子を確認したサターンは自信満々にこっちを向いた。

「どうかね。教えてくれないか、君のLvを」

なんかむっちゃ勝ち誇った顔してる! 俺にはそれがピエロにしか見えない。

え、どうしよう。

言っちゃって良いのこれ? 

ラナの方に視線を向けると、とても優しい笑顔で親指が上に立てられた。

ゴーサインが出てしまった。もう告げるしか無い。さらばサターン。

「俺はゼフィルス。職業ジョブは【勇者】。Lvは──50だ」

「…………ん? すまないがもう一度言ってくれないか? どうも幻聴が聞こえたようでね」

現実を受け止められず幻聴に聞こえたらしい。

ならば次こそちゃんと聞こえるようハッキリと言ってやる。

「俺はゼフィルス! 【勇者Lv50】の、ゼフィルスだ!」

「な、なんだとぉぉぉっ!?!?

サターンの驚愕の叫びと共にざわっと教室内がざわめきに包まれた。

全員の視線が俺に向き、隣の席同士でこそこそ話し合っている。

ちょっと気持ち良い。

見ればサターンの足が子鹿のようにプルプルと震えていた。もう一押しだな。

「ちなみに言っておくと俺たちのギルド〈エデン〉のメンバーは全員Lv30を超えているからな? つまりこの教室の三分の一以上はLv30超えだ」

「な、なんだとぉぉぉっ!?!?

サターンに追撃。2回目のなんだとぉぉぉが教室に響いた。

もうサターンのHPはゼロのようだ。ついでに後ろの3人も、

「はいはい。では次にいきましょうね。隣の女子の列おねがいしますね」

ここでフィリス先生が何事も無かったように次に進めた。

促されて席に戻った彼ら4人は、真っ白に燃え尽きていた。