レプリカとは、なんなのか。
3巻はその謎に焦点が当てられ、解き明かされていく巻となります。
ただ、わたし自身はこの点を謎として捉えたことは一度もありませんでした。日常に潜むささやかなファンタジーやミステリーには、いつだって胸がときめきます。『レプリカだって、恋をする。』に関しても、それぞれ読んでくださった方に想像を膨らませていただければじゅうぶんだと思っておりました。
しかし3巻の打ち合わせ時、担当編集様に「1巻から一貫して(1巻だけに)描いてきたのは、実はこういうことなんです」とお話ししたら、「そういうことだったんですか」とかなり驚いていらっしゃいました。
ダジャレがつまらなすぎて驚かれたのではないはずです。その反応を踏まえて、3巻の内容は自ずと決まってきたところがあります。
もしも本作が推理小説であり、1巻が出題編であるとするなら、2巻で分かりやすくヒントが明示され、3巻は解答編と言い換えることもできそうです。帯には「1巻からのすべてが伏線!」と大きく書いてもらうやつです。
だからといって、決して身構える必要はありません。
今巻で綴られるのは立冬の物語。学生にとって一大イベントな修学旅行は互い違いに、共鳴しながら展開していきます。
ナオと素直。アキと秋也。りっちゃんや望月先輩にもそれぞれの喜びがあり、青春があり、悩みがあり、戦いがあります。
胸に秘めてきた思いがあったり、年相応に不器用だったり、ときには大人よりずっと大人びた顔をする……わたしは、そんな彼女たちみんなのことが愛おしいです。読者の皆様にも好きになっていただけていたら、この上なく嬉しく思います。
ちなみに当初、スルセイの修学旅行先は沖縄を想定していたのですが、担当様より「沖縄だとパリピ感が出てしまう気がする」と苦言を呈されておりました。書き終えた今、「京都で良かった!」としみじみ感じております。青い空と海、白い砂浜……うん、吉井ははしゃいでおりますが、素直の心境とまったく嚙み合いません(笑)
京都には8月上旬頃、取材旅行に行ってまいりました。
なんと日中の気温は37度超え! 「冬、今は冬……」と自分に言い聞かせながらの京都旅行、汗だくになりながら神社仏閣を巡りました。とっても楽しかったです。
ここで大切なお知らせです。花田ももせ様によるコミカライズ第1巻が、電撃コミックスNEXTより発売されております。
全ページのナオがかわいい。本当にかわいいです。爽やかな恋愛物語でありつつ、ジェットコースターのように感情を揺さぶられる漫画に仕上げていただきました。ぜひご堪能ください。
それでは謝辞に移らせていただきます。
担当編集様。今回も(主に締切関連で)大変なご迷惑をおかけしました。いつも的確なアドバイスをくださり、ありがとうございます。頼りにしております。
イラストレーターのraemz様。今巻のカバーイラストでは、星空を反射する夜の海にて、変化していくナオと素直の関係を表現いただきました。
1巻と対になる見事な構図、美しさと切なさに胸を打たれました。本当に素敵なイラストをありがとうございます!(カバーイラストには他にも多数の仕掛けがありますので、ぜひ見つけてみてくださいね)
そしてこの本をお手に取ってくださったあなたに、最大級の感謝を込めて。
前述の通り「レプリカとは、なんなのか」は、わたしにとって謎ではありませんでした。それには理由があります。
子どもの頃、ふとした折に、自分には人間として必要な何かが足りていない、欠落しているんじゃないかというような不安が、何度も何度も、胸をよぎることがありました。
大人になったら、こんな悩みはあっさり消えてしまうのだろうと、そんなふうに思っておりました。残念ながらというべきか、大人と呼ばれるべき年齢になった今も危惧は消えず、事あるごとにわたしを苛みます。
わたしは本物じゃない、とナオも素直も口にします。本物ってなんだろう、とわたしもずっと考えています。あなたにとっては、いかがでしょうか。
同じような気持ちを抱いたことがある方も、ない方も。
ナオの答えの続きを、一緒に聞きに行ってみませんか。