ディアナの王太子殿下

「父上、本日、叔父上とお会いになられたのですか」

「ああ。どうした、ルーファス? フェリスに逢いたかったのか?」

ディアナ王国、王太子ルーファスは、レティシアと同じ五歳だ。

本来なら、ルーファスとレティシアの婚姻が、歳も同じで、釣りあいがとれている。

レティシアにしてみると、やや偽の五歳児としては本物の五歳児と何を話そう……、とそれはそれで焦るとは思うが。

「僕もお話したかったです」

ルーファスは羨ましそうに、父であるマリウスを見上げた。

彼は無邪気な子供らしく、立ってるだけでも華やかな王弟フェリスが好きだ。

祖母である王太后からは、フェリス叔父上とはあまり遊んではいけません、と言われるが、何故なのかはよくわからない。

もちろん、おばあさまの言うことには、はい、と大人しく頷いておいて、都合よく忘れる。

おばあさまに口応えはちょっと無理だ。

「王弟殿下は、花嫁をお迎えしたばかりでお忙しいのよ、ルーファス」

母であるポーラ王妃が、ルーファスを諫める。

「僕と同い年の子が来たのでしょう、母上?」

「そうよ。レティシア姫は五歳とお伺いしてるわ」

「叔父上のお嫁さんにしては、ちっちゃすぎない?」

「そうねぇ。少し歳が離れてるけど……、ディアナとサリアの国同士で決めたことだから。レティシア妃にお会いしたら、優しくして差し上げましょうね。レティシア妃は、ルーファスと同い年なのに、遠くから一人でいらしたのよ」

「……はい、母上」

フェリス叔父上の妃に、そんなチビは、僕は気に入らない。と思っていたのがまるきり顔に出てたのか、ポーラ王妃にそう釘を刺され、仕方なくルーファスは頷いた。

優しくしてやってもいいけど、僕と同い年の癖に、フェリス叔父上のお嫁さんになるなんて、やっぱり、凄く凄く生意気だ、と思う。

誰も、叔父上の心の中には、入れないのに。

フェリス叔父上は、気まぐれなレーヴェ竜王陛下が、絵画の中から抜け出て来て動き出したかのように、美しい。

そして、誰にでも、ちょっと遠いところから、優しい。

王宮で舞踏会があると、令嬢たちはみんなフェリス叔父上と踊りたがるが、叔父上はいつも礼儀に適う程度に踊っては、退出していく。

叔父上の影のように離れないレイを、皆が密かに羨ましがっている。

宮廷人が言うように『氷の美貌』とまでは思わないが(叔父上は優しいので)、ディアナ宮廷の者はみんな、尊い竜王陛下にそっくりなフェリス叔父上の心を手に入れることなんて、誰にも出来ないんだと思ってた。

「フェリスはレティシア姫を気に入ったそうだよ」

「まあ、陛下、それはとても喜ばしいお話ですね」

呑気そうな両親二人の話を聞きながら、そんなの本当かどうかわからないじゃないか、だいたい叔父上は、いつも父上に遠慮して、嫌な話なんてしないんだから、とルーファスは子供心に、まだ少しも信じてなかった。