王弟殿下の小さな花嫁

「王弟殿下におかれましては、ご機嫌うるわしう……」

なんと哀れな姫君。

両親を失って、後ろ楯もなく、たった五歳で、十二歳も年上のディアナの王弟殿下に輿入れなどと……。

憐みの声にも、同情の目配せにも、疲れてしまった。

自分がそんなに可哀そうな姫なら、そんなに哀れな姫を、妻に貰わなければならないお相手も、とても気の毒だ。

もちろん、お互いに、自分で選んだ結婚ではないけれど。

でも、出来れば、追い返されたくない。

変わり者と評判のこの方に、この縁談は迷惑だと言われたら、レティシアには、もう、帰るところがない。

「ああ、長旅で疲れたろう。どうか、わが花嫁よ。そんなに怖がらないでくれ」

初めて聞いた花婿の声は、そんなに怖い声ではなかった。

優しい声だった。

ここに来るまでに、あまりよい噂を聞かされなかったせいか、物凄く冷たい声や態度を想像していた。

「こんなに幼いのに、だいぶ年上のおじさんと結婚させられて、可哀想なんだが……」

自らをおじさん扱いする花婿殿は、そうは言っても、十七歳だ。おじさんではない。

「おそれ、おお………」

なんて答えたらいいのかわからなくて、とりあえず恐れ多いことでございます、と言おうと思って顔を上げて、生まれて初めて彼の顔を見て、レティシアは、ぽかんと、口をあけた。

「どうした、姫君?」

「あの……、おおていでんか? で……あられ……ますか?」

「ああ、私がフェリスだ」

想像していた人と違う。なんてお可哀想な姫様、変わり者と噂の冷飯喰らいの王弟殿下のところへと言われ続けたせいか、暗闇に沈む吸血鬼のような、おどろおどろしい婿君を想像していた。

「姫……?」

「フェリス様、あんまり……綺麗な方なので……驚いて……」