「乱入事件、あんたとは無関係だってフラウが
「良かったじゃない、対戦相手の個人的な問題ってことに落ち着いて。なんなら、むしろテオルが護ったことになってるんでしょう? 始まる前の不安は無事、
「……うーん、そうだなぁ」
「なに、家のこと気にしてるの?」
「いや、まあな……」
上の空で話を聞いていると、心のうちを
新聞を閉じたリーナからの視線にきまりの悪さを覚え、窓の外を見ると
季節は冬に入った。
団長が留守にしているので、現在は暖かなこの部屋の中に
あれからもう、数日か……。
試合が終わりひと段落ついた後、俺はルウから様々な話を聞いた。
上位
加えて当主のゴルドーが
「どうしたのだ、二人して暗い顔で」
「あ……実家のことを少し考えていて。アマンダさんは訓練ですか?」
「ああ。体を動かそうと思ってな」
そうこうしていると、首にタオルを
俺が物思いに
切り
スポーツブラにレギンス姿のアマンダさんは
「実家といえば、やはり手助けをするつもりはないのだな?」
「はい。これ以上はもう……何も」
あとは残されたルドやルウが考えればいい。
「それにしても驚いたわよね。
「
リーナに言われ、
そうなのだ。
ガーファルド家が存続の危機に追い
それはなんと、俺が以前に倒した上位竜の暗殺だったらしい。
依頼主は秘宝──おそらく魔王の
ルウからの情報によって点と点が
「そういえばテオルが魔結界を解除したと聞いて、
「あの時に魔結界の中に閉じ込められてたそうなのよ」
「……なるほど、二度も命を救ってくれた恩人というわけか」
リーナから情報を得たアマンダさんが
本当にその件には参らさせられたんだ。
疲れを思い出すからあまり茶化さないでほしい。
もう
試合をして実力がどの程度なのか
はたまた、その
王都にいた間中、やたらと俺にくっついてきた。
……本当、ちょっと気味が悪いくらいに。
「命を救ったのは
い、いた。
何気なく横を見たら、ルウが立っていた。
小首を
「なっ、なんでルウが……? とっくに帰ったはずじゃ……」
「どうしたの、お兄様? 体調でも悪い?」
俺を見る目つきも、呼び方も変わったルウが
「ちょ、ちょっと。なんで
「うーん……熱くない。熱はないみたいね」
「お、お、落ち着け……! 体温を測るのに誰が抱きしめるんだっ?」
「え……
「いやな、その、胸が!」
この画は
リーナとアマンダさんも見てるし。
落ち着け……とにかく落ち着け、俺。
こんなことで
今は年上として堂々とだな……。
「あたしがしたいんだからいいじゃん。それに、わかっててやってるし……」
冷たい視線を感じ、俺がそっと顔を向けると
やばいっ、早く
殺され死体と化した上でドン引きされる未来が見えた気がする。
「
「じょ、
「じゃあなんで手を回してるのよ!」
「お兄様も熱を測ってくれるの!? だったらほら、早く! リーナさんが来る前にぎゅっと!!」
「ルウ……!? お前の目的を言ってくれ。お金か? お金だったらある程度はやるから……あの、リーナ? な、何をするつもりで──」
「この! 変態ッ!」
「──ぐはっ」
後ろに回ったリーナが乱暴にドシドシとソファーの背もたれを
「い、痛いっ! そ、それよりもまず初めに、大体なんでルウがここいるんだよっ?」
「ははっ、楽しそうだな。じゃあ私は昼食にでも行ってくるとするか」
楽しそうに笑いながら、こちらを見ていたアマンダさんが席を立った。
軽い足取りで去っていく彼女に手を
「ま、待って……助けてくださいっ、アマンダさん!」
騎士団室の入り口まで行くと、アマンダさんは
良かった、流石にふざけていただけ……だよな?
この人だけは
「ぐっ……早く……っ!」
しかし一向に
「団長がその子を事務員として
最後にそう言い残し、背を向けて行ってしまった。
「えぇ? ちょ、ちょっと──」
ルウが事務員に? じゃあこれから、ずっとここにいるのか?
リーナたちが俺を引っ張る力がどんどん強くなっていく。
「いい加減に離しなさいよ! テオルが苦しそうじゃない!!」
「じゃあリーナさんが先に離せばいいじゃん! そしたらあたしも離すから!」
「……二人とも同時にやめればいいだけだろ!?」
そんな風に三人で
「お? ……な、なんの芸術だよこれッ!」
俺たちを見て、腹を
なんでうちの団員は面白がるだけ面白がって、一向に助けてくれないんだ!
頭を抱えたい気持ちに
暗殺者の
けれど、騎士になって初めて仲間ができて、誰かを護るために力を使い、働くという幸せがあることを知った。世界は俺が思ったより、
これからもやっていこう、人を護る──騎士の仕事を。
救けを求める誰かのために。
そんなことをこの日、俺はリーナに
◆ ◆ ◆
第六騎士団の面々が騒がしくしていた頃。
王城のとある一室に、
ジンとフラウディアだ。

「そういえば、ルウさんを雇われたとか。いずれ団員になさるおつもりですか?」
ふと、クッキーを
ジン様の行動はいつも予測がつきませんから、と
「いや、そのつもりはないかな? ここらでちょうど人手を増やしておきたかっただけさ」
「そうですか……少し残念です……」
「ははっ、でもこれからは彼女も仲間の一人だよ」
活動報告紙で話題にできるメンバーが増えると期待していたフラウディアは、しゅんとした。
その様子を見てジンが苦笑いを浮かべながら
「はい。心強い事務員さんが増えました」
「テオルの実家との問題も大方片付いたようだから、一安心させてもらいたいところなんだけどね……。まさか勇者正教が魔王軍と繫がっているなんて。いやー困った困った。このままいくと、人手が足りなくて大変なことになるところだったよ」
「私も、大きく考え方を変えなければなりませんね……」
「そうだね。敵が新たに、強力な別の敵と手を取り合ったみたいなものだから」
まったく、とジンは続ける。
「
少しくたびれた様子で、ジンはどこか遠い目をした。
それでも
「こうなったからには、
「静観をやめ、自ら打って出ないといけません……か」
わずかな
「
「いえ、あれからはまだ……申し訳ございません」
フラウディアが頭を下げる。
自分の力不足だと
「
対面に座るジンは、
それはフラウディアだけでなくジンの目的でもあり、第六騎士団が創設された理由でもある。
「大丈夫。きっと
顔を上げたフラウディアの目に、なみなみと涙が浮かんでいく。
「ありがとう……ございます……っ」
当初の予定では、敵は勇者正教だった。
だが、そこに人類の敵──魔王軍との関係があるとなると、想像していたよりも敵は
「ジン様はどこまでお考えになっているのでしょうか?」
「僕なんて、いつも目先のことばかりだよ。君の方がよっぽど
ジンはそう言ったが、その目はどこか別の方向へ逸らされている。
フラウディアはすぐに気がついた。それが涙を流す自分を
いつも
しかし
「そ、そうだ。これからは君の
「も、もちろん構いませんが……それでは
「今後はより
「本当、ですか? 私だけのためにあまりご迷惑をおかけするのは……」
「リーナとテオルに警護を
自分ばかり足を引っ張るのはあまりに
「わかりました。では兵士たちにはすぐに話を通しておきます」
フラウディアはリーナと特に親しく、テオルのことをなぜか
警護は四六時中行動を共にするようなものだ。
ジンなりに
これで護りの準備は
「よし、じゃあ今日はもう失礼するよ。二人にはこの後、僕の方から話を伝えておくから」
立ち上がったジンは、最後にそう言い残すと部屋を後にした。
ジンは
これから立ち向かうことになる敵は、予想外に強大な存在だった。
だが、しかし──。
一方でこちらにも、幸運とも呼べる予想外があった。
テオルの強さと、それに
「……
信頼できる心強い仲間たちが
少数
その時、冷たい風が
中庭の上にある正方形に切り取られた空を見上げる。
団員たちには意図的に
いつしか
ジンは
「さぁ……いよいよ、国家転覆のお時間だ」
心の中で今一度、親友とその
君たちの大切なこの国は、僕が護ると。