増えました
近所で何やら事件があったらしい。普段から忙しいお父さんが、ますます慌ただしく働いている。頑張ってね。
とは言え、赤ん坊の私には関係ないだろうと思っていたら、危ないからと散歩をしばらく控える事になった。しょんぼり。
モヤモヤさんを仕入れたかったのに、タイミングが悪いよ。
不満たらたらで引きこもっていたら、お母さんが何かの包みと共にやって来た。
このタイミングでプレゼントですか?
物に釣られて機嫌を直したりなんてしないんだからね!
「レティはお掃除が大好きみたいだから、お母さんとお父さんも道具を用意したの。受け取ってくれる?」
そう言ってお母さんが取り出したのは箒! テンションがぐいぐい上がっていく。
勿論受け取りますとも。
こんな素晴らしい物が貰えるなら、何だって許せちゃう!
誕生日でもないのに、素敵な贈り物があるなんて、今日はなんと良い日だろう。
この世界に神様がいるのか知らないけれど、今日は最大限の感謝を捧げられる。徳も信心もない私に、類稀な幸運を与えて、この世界に転生させてくれてありがとう!
いや、神様以上に感謝しなきゃいけない人がいる。
「おかーしゃ、あーあと! だーじに、する、ね!」
一生懸命お礼を言ったら、優しく撫でてくれた。まだ舌が回らないから、文章にするのは大変なんだよ。
いつもはメイドさん達といる時間が長いからか、お母さんに撫でてもらうと気分がほっこりする。
新しい箒は、差別化の為か、以前のものより更に豪華だった。可愛く装飾もしてある。立体的に飾りが彫り出してあって、柄の穂側の付け根には翼が、持ち手側には大きな星が付いている。白、ピンク、黄と綺麗に色が塗り分けられて、赤いリボンも結んである。前世にテレビで見たマジカルステッキみたい。
ますます魔法少女気分だね。
あれ?
お母さんの傍に控えるテトラさんの手には、まだ包みが残っている。
え、プレゼントって、一つじゃないの!?
期待が膨らんで釘付けになった視線に苦笑しながら、テトラさんはもう一つの包みをお母さんに渡す。
「ふふ、こっちはお父さんからよ。後で、一緒にお礼を言いましょうね」
なんでも、私がいつも持ち歩いていたから、お母さんも自分で選んだ箒を私に持っていてほしくなって手配していたところ、誕生日にあまり喜んでもらえなかったお父さんも、挽回の為に箒を用意していたらしい。
夫婦揃って同じ考えで可笑しいね、と二人で喜んだとか。惚気はいいです。
どうやら私のご機嫌取りの為に用意したのではなかったみたい。
特注品だから、一日二日で用意できる訳ないものね。私が
二つ目を受け取った私は、ガッツポーズで頭上高くに箒を掲げて、喜びを示す。私、今、幸せです!