ステバノスが緑に輝いていた一方で、ヴァロウが放つ光は青白く、より力強く輝き、その制御から漏れた魔力は炎のように揺らめいていた。ステバノスのストームブリンガーが、千の魔族を引き裂くなら、ヴァロウのは一万、いや十万の軍勢すら消滅させることができるかもしれない。

 それほど、ヴァロウとステバノスの間には、地力の差があった。持ってる潜在能力が違うのだ。

 そもそも人類の軍師であった頃から、ヴァロウの魔力は勇者と比べてもそんしょくがなかった。その魔力が魔族になったことによって増幅され、魔王から〝角〟の力を借り受けたことにより、さらに底上げされたのである。すでにこの時、ヴァロウの魔力はかつて最強と言われた『毒の勇者』の魔力を抜き去っていた。

 そのヴァロウのストームブリンガーが炸裂する。

 巨竜も最大火力を持って対応した。

 それがヤバい代物であることを、本能的に察したのだろう。

 全力を以て、青白い嵐を消しにかかると、炎と嵐がぶつかり合った。

 竜と竜が組み合う──そんな拮抗状態を予想したが違う。

 あっさりと嵐が炎を食い破り、巨竜の鼻先に青白い刃が落とされた。

 竜の硬いうろこをものともせず、肉に食い込む。

 ズザァァァァアアアァアァアァアァアァアァアアアアンンンン!!

 ついに巨竜を真っ二つに切り裂いた。

『ぎゃああああああああああ!!

 断末魔の悲鳴が上がった瞬間、開けたあごがズレた。

 ずるりときょが歪み、二つに割れる。胴は安定を失い、両端に向かって倒れた。

 轟音が鳴り響き、黒いすすが舞い上がると、嵐の中に吸い込まれていく。

 ストーブリンガーの嵐に小型の飛竜も巻き込まれたらしい。

 焼け野原の街に、地面に叩きつけられた飛竜の死体がるいるいと転がっていた。

「やった……」

 メトラは思わず口元を手で覆い、赤い瞳に涙を浮かべた。

「あの野郎……。やりやがった」

 飛竜の頭を棍棒で叩きつぶしたザガスはニヤリと笑う。

「ヴァロウめ。まだあんな技を隠していたのか」

 ベガラスクは飛竜の喉元から爪を抜くと、ぐっと目に力を入れてヴァロウの背中を睨む。

 アルパヤは手を叩き、ゴブリンたち魔物も地面を踏み鳴らした。

 魔狼族ワーグたちも遠吠えを上げ、よその師団長を称賛する。

 魔族軍はお祭り騒ぎだが、巨竜が討たれるのを見て、喜んでいたのは魔族だけではない。

 人間──メッツァーの民も一緒だった。

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 絶叫した。魔族たちと同様に手を叩き、巨竜を討ち取った魔族を賛美する。

 先ほどまで地獄を彷徨さまよい歩いていた。死すら覚悟していた。だが、生き延びた。

 生死の瀬戸際から解放された喜びに、メッツァーの民たちは踊り狂う。

 そしていつの間にか、こんな声が聞こえてきた。

「英雄だ!」

「メッツァーを救った英雄だ!」

「英雄様をたたえろ!」

「英雄様、万歳!!

 英雄、そして万歳という言葉が、魔族たちを包む。

 メッツァーの民はその四分の三を失っていたが、声の大きさは一万人分を遙かに超えていた。

 すべての力を振り絞り、メッツァーの民たちはヴァロウを讃えたのである。


『英雄』と……。