驚きに、声が出ません。
ただ、優しく私の頭を撫でてくださるヴィルヘルム様が、頰を赤く染めて顔を
ああっ!
心から、心から
「そ、それは! ヴィルヘルム様! わ、私……!」
「さて、それでは帰ろうか。儂も今日は直帰だ。屋敷まで送ってゆこう」
「ヴィルヘルム様!」
もう一度お聞かせくださいませ。
私のことを婚約者だと。アンドリューさんに渡すわけにはいかないから勝利なさったのだと。
つまり、それは。
私のことを、愛してくださっている──。
「わ、私のことを、婚約者だと……!」
「一雨来そうだな、早めに帰るとしよう」
「ヴィルヘルム様ぁ!」
んもうっ!
話を逸らされながらも、しかし一緒に駐屯所を出ます。
殿方は、そういうことを言葉に出すのが恥ずかしいと聞いたことがあります。
私は、何度だって聞きたいですのに。
でも、仕方ありません。
せめて、私からはしっかりと気持ちを伝えておかないと。
殿方から
「さぁ、屋敷まで送ろう。雨が降らぬうちにな」
「ヴィルヘルム様」
「む?」
「お
「む……おお」
ヴィルヘルム様の右膝に、僅かながら土の汚れがついています。恐らく、闘技場でついたものでしょう。
身を
「もう少し下にもついていますわ」
「むむ……これほど汚れておったか」
「うふふ」
しっかりと身を屈められるまで待ちます。
ヴィルヘルム様が、足首のあたりまでついていた汚れを、払い落とされて。
やっと。
私の背が届く位置に、いらっしゃってくださいました。
「ヴィルヘルム様」
「──っ!?」
ちゅ、と。
身を屈められたヴィルヘルム様の頰に、口付けをします。
私からの、感謝の気持ちです。
私のために戦ってくださり、そして私のために勝利してくださったことへの。
「ありがとうございます、ヴィルヘルム様」
「む、むぅ……」
どうしましょう。
私も照れてしまって、ヴィルヘルム様と目を合わせることができませんでした。