第一話 キャロルの悪巧み



「いつも講義をすまぬな、キャロル」

「いえ。これが私のお仕事ですから」

 講義を終えて、団長室でヴィルヘルム様と一緒にお茶を飲みます。

 査察などで席を外されていることもあるのですが、大抵このように講義の後には、ヴィルヘルム様が労いの言葉をかけてくださいます。いつもいつもこのように労っていただいて申し訳がないのですが、褒めていただけるのは嬉しいのでどうしても通ってしまうのです。

 昼食をご一緒して、それから講義をして、終わればヴィルヘルム様とお茶──私の生活、物もの凄すごく充実している気がします。

「今日は問題なかったか?」

「はい。皆様、ちゃんと真面目に受けてくださいました」

「以前アンドリューが大怪我をしたときに、キャロルが素早い応急処置をして命を助けたという話は、騎士団の中でも広がっておる。あやつらも、キャロルの講義の重要性が分かったということだろう」

「ありがとうございます」

 まぁ、私も必死でしたし。がんばりました。

 ですが、アンドリューさんの名前にちょっと眉まゆを上げます。近頃ちょこちょこやってくるアンドリューさんのことは報告をした方が良いのでしょうか。

 いつも講義が終わったら私を誘ってくるので、お仕事ではなく非番の日にわざわざいらっしゃっているのでしょう。非番の日にまでお勉強をするというのは、素晴らしいことだと思いますけれど。

「ああ、そうだ。今日はキャロルに渡すものがあるのだ」

「はい?」

 え?

 何かをいただけるのですか?

 ヴィルヘルム様が私にプレゼントですか?

 まぁ!

 何であっても大切にいたします。家宝として飾りましょうか。

 そ、それとも。

 まさか、その、指輪とか?

 そんな、ヴィルヘルム様。

 キャロルはいつでも心の準備ができております──。

「これだ」

「……こちらは」

「うむ。今月の給金だ」

 ヴィルヘルム様が出されたのは、封筒でした。

 受け取ると、中に貨幣が入っているのが分かります。確かに、私が講義を始めてからもう一月ですね。お給金をいただくのは当然の話です。

 でも、何故でしょう。

 すごく落ち込んでしまいました。

「いや……まぁ、すまぬな。あまり多くは出せぬ……」

「い、いえ、そういうわけではありません」

「傍聴している者も多いからな。そのあたりの色もつけてある。最初に話していた内容よりも、多少は多いはずだ」

 封筒の中身を確認します。

 決して少なくないお金が入っています。多くないと仰いましたけど、むしろ多いくらいです。

 ザックよりも月給が高いのではないでしょうか。

「ありがとうございます、ヴィルヘルム様。大切に使わせていただきます」

「うむ。キャロルは、このように金を稼ぐのは初めてか?」

「はい……お恥ずかしながら」

「なに、貴族令嬢であるならば当然だ」

 ヴィルヘルム様はそう仰ってくださいますが、私としては恥じ入るばかりです。