俺は理解した。カナン王国が科学を捨てたその理由……それを目の当たりにして「まあ、そうだろうな」と呟いた。これが科学を発展させた末路なら、誰だって捨てることを選択する。いや……むしろ現代に於いて、科学を発展させるような国家は攻撃対象にすらなり得る。

愛する祖国とまでは言わないが、貴方に一つだけ質問がしたい。一体何をしたらこんな惨事が生まれるのだ?

帝国が歩んだ道は間違いだったのか?

拳を強く握り、目の前の光景を前に立ち尽くす。帰りたかった場所はなく、行くべき場所も見当たらない。

(学生時代の進路相談が懐かしいな)

思ったよりもこみ上げて来るものがある。とっくに受け入れたつもりではあったが、案外現実から目を逸らしていたようだ。言いたいことが山程あるが、言葉にできないのがこの体。ならばせめてと大きく吠えた。聞いているものは誰もいない。俺はクレーターに背を向けると歩き出した。



やはり帝国最大の脅威であったエルフの情報を集めるということは、俺が生き残る上でも必須である。今回俺が目をつけたのは一人の女性エルフ──常に目隠しをしているか目を閉じていることと、三名の従者を侍らせていることから、共和国に於いて立場のある者であると推測している。彼女は他の川を利用するエルフと違い、まるで「身を清める」かのような儀式を中心とした動作を行う。

「これはきっと何かある」

そう直観するだけの神秘性が彼女にはあった。未だ彼女が目を開けたことがなく、従者がいることから特殊な立場──もしくは体質や能力を持っていると推測される以上、そう感じずにはいられない。故にここでの観察は現在彼女を軸に行っており、一度たりとも見逃すことのないよう目を光らせている。

(恐らくあのエルフは目が見えない)

だからこそ、最大限の注意を払わなければならない。今もこうして身を潜め、望遠能力を最大限活用してその動作の一つ一つを注視している。魔法に関する知識が乏しいことから、監視時間を否応なく増やすことになっているが不満はない。俺は盲目のエルフを「八号さん」と呼称し、彼女の一挙一動を観察している。

(ええい、共和国め! あのような兵器を隠し持つとは!)

「まったく、これだからエルフは侮れん!」とニマニマしながら脳内茶番に勤しむ。暇だからね、仕方ない。帝国が滅んだ原因を突き止めたまでは良かったんだが、何というか……こう、心に穴が開いたとでも言うべきか?