ビビの花嫁修業
エルフの若者衆達の中でリーダー的存在になっているらしいビビ。
最近主婦二刀流の家元になり乗りに乗っている彼女が、我が家に遊びにやってきた。
エルフの里での問題が一段落してから、彼女は定期的に我が家に遊びに来るようになっていた。
「お邪魔するぞ!」
「わふっ」
『歓迎するわ』という感じでジルが尾でビビの腰元あたりを軽く撫でる。
ジルはわりと人なつっこいやつなので、こんな風に誰が来ても基本的に快く迎え入れることが多い。
実際に受け入れる準備をするのは、俺とシュリなんだけどな。
まったく気楽なものである。
「いつもフライパンと包丁を作ってくれて助かっているぞ!」
「注文をしてくれるのは素直にありがたいし、そんなに気にする必要はないぞ」
ドワーフの食料問題も一段落したことで、俺の生活には大分余裕が出てきた。
古代の魔力文字の解析もある程度は済んだし、わりと好きなように研究をすることができている。
エルフの里では相変わらず永遠に主婦二刀流が流行っているので、俺は空いた時間を使って、ビビに納品するための魔鉄製のフライパンと包丁を作るようにしていた。
そこまで気合いを入れずに作れるから、こいつが結構いい息抜きになっていたりする。
鍛冶師というのは自分のために生きるのと同時に、誰かの役に立たなければ意味がない。
作ったものを誰かに使ってもらうということを意識しなくなれば、独りよがりのものしか作れなくなってしまうからな。
「一泊していくのか?」
「ああ、お世話になるぞ!」
ビビも里ではかなり大変らしいからな。
せっかくだし、ゆっくりと休んでもらうことにしよう。
ドワーフ達に食料生産をさせるための拠点であるいくつかのプレハブ小屋は、来客が増えたこともあってそのままにしている。
俺と同じ家に泊まって噂が立ってもあれなので、ビビには小屋でゆっくりしてもらうようにしていた。
「私は別に気にならない……というかむしろ一緒の方が……ごにょごにょ」
黙ってしまったビビに、食材とお皿を手渡す。
ビビが来た時の夕食は、ワイルドにBBQと決まっている。
「――たあっ!!」
ビビは食材を天高く放り投げると同時に抜刀。
食材が皿の上に落ちてきた時には、既に綺麗にカットされた状態になっている。
「包丁の扱いなら誰にも負けないんだ、ふふんっ」
ビビがどや顔をしながら胸を張る。実際彼女の包丁さばきはやってくる度に向上しており、もう今では俺は彼女の斬撃を見切ることができない。
一体ビビはどこへ向かおうとしているのだろうか……。
「わあっ、焦げたあっ!」
ただし巧みなのは包丁さばきだけで、彼女は調理の方はてんで駄目だったりする。
「ほれ、こっちはちゃんと焼けてるぞ」
いい感じの焼き加減になっていた肉串を渡してやると、ビビが所在なさげにこちらを見上げてくる。
「い、いいのか?」
「ああ、肉なんてまた焼けばいいからな。それに……足りなくなったら、また捌いてくれるだろ?」
「――ああっ、任せてくれ!」
そう言って笑うビビと一緒に、俺はBBQを楽しむのだった――。