ブンブンと尻尾を振っている狼は、明らかについてくる気満々だった。

 どうやら怪我を治して檻から出してやったせいで、ずいぶんと懐かれてしまったらしい。

 ついてきたいというのなら、別に断る理由もない。

 知性も高いだろうから、言うことも聞いてくれるだろうし。

「人を食べちゃダメだからな……こいつら以外」

「ガルルッ!」

 狼がその鋭い犬歯を覗かせると、盗賊達がひいっと情けない声を上げる。

 こうして俺はなぜか懐かれた狼と一緒に、街へと戻るのだった……。


 盗賊を引き連れてやって来た時に、レルドーンの街は騒然となった。

 一応上層部の人間に話は伝えてあったので、特に問題もなく通される。

 騎士達と事情聴取をし、縛り上げられている人間がきっちりと指名手配犯である『首狩り』ザルーグであることを確認した上で、報奨金をもらうことになった。

「今回の報奨金は、全て君が受け取ってくれ」

「いえ、悪いですよ」

「悪いものか! こんなもので恩を返せたと考えるほど、私は恩知らずではないぞ」

 俺としては今まであまり触れてこなかった中期文明の魔力情報に触れることができたのでむしろ実りしかなかったのだが……ジュリアさんは頑なだった。

 一流の冒険者というのは、こんな風に一度こうと決めたら曲げない人が非常に多い。

「ありがとう、この恩は絶対に忘れない!」

「街道が封鎖されていると俺も困りましたので、お互い様ですよ」

「絶対に返しに行くからな!」

「勘弁してください……」

 ジュリアさんに見守られながら、街道封鎖の解かれた道を歩いていく。

「くぅん……」

 俺の隣には、街に入ってからしっかりとお行儀良く動いていた狼の姿があった。

 どうやら俺についてくるつもりは変わらないらしく、それならということで冒険者ギルドで俺の従魔として登録することにした。

 登録の際には名前が必要だったため、俺が名付けをすることになった。

「行くぞ、ジル」

「わふっ!」

 こうして俺の旅は、新たな旅のお供である狼の魔物のジルを引き連れて続くことになった。このまま何事もなく山にたどり着けることを、祈るばかりである。