まさかの優しい眼差し。
杖で魔法剣を発動した結果、暴発してしまい痛い目にあった……
「んじゃあとは……魔法が使えるんだよな? やって見せろよ」
それを聞いて一部のクラスメイトが騒ぐ。
魔法剣だけではなく魔法までもが使える存在など聞いたことが無かったらしい。
でも困った事が一つ。
俺が使える魔法ってライトの魔法しかない。
でもそうするとウィリアムと被ってしまう。
あいつ……プライドが高そうだから出来れば同じ魔法を使いたくはない。
「なんだ、出来ないのか? それとも……今更杖が無いから出来ないとでも?」
先生の目つきが徐々に厳しい物へと変化している。
確かに杖はさっきの実験で見事にぶっ壊れてしまったが……
これまで杖を使ったことなんて無かったから別に無くても困らない。
これは覚悟を決めるしかない。
「別に杖が無くても出来ますけど……」
「なら早くしろ。私をあまりイライラさせるなよ?」
先生は無詠唱で指先に炎を発生させる。
このままでは俺の髪の毛までチリチリになってしまう……
仕方ない……やるか……
気は進まないが手を前に突き出し、魔力を練り詠唱を始める。
「光よ、我を暗闇から救いたまえ。ライト!」
魔法を詠唱すると、ウィリアムが発動した時とは違い、ぽわぁっとした光が安定したまま宙に留まっていた。
「ほぅ。やるじゃないか」
フィリス先生は腕を組みながら、満足げに俺が発動した魔法を観察していたのだが……
少しドキドキしながら視線をウィリアムへと向ける。
どうか怒ってませんようにと。
しかし……
ウィリアムの表情をチラッと見て、駄目だったと確信する。
鋭い目つきで俺を睨み、拳をギュッと握っているのが見えたから。
『わざわざ僕と同じ魔法を披露するとは! あいつは侯爵家の一員である僕をバカにしているのか!? クソっ 屈辱、屈辱だ!! 平民であるアイツよりも選ばれし僕の方が劣っているとでもいうのか!!』
ウィリアムはラグナの存在がそもそも気に入らない。
一学年トップが平民だというのも気に入らないが、あの娘は平民といえどもあのエチゴヤの一族の人間だから我慢できるのだ……
次席のアイツは何なのだ。
平民の癖に魔法剣が使える……それだけではなく、魔法まで使える。
何なのだ、あの冗談のようなバカげた存在は。
ウィリアムが厳しい視線を送る中、ラグナは深いため息を吐く。
『結局みんなに加護持ちだってことがバレたなぁ……マリオン様の契約はバレても仕方ないけど、サリオラの契約はどうしよう。後で相談かな』
「よーし。お前らの力量は分かった。一人おかしい奴もいるけど、あとはどんぐりの背比べって感じだな。そもそも魔力の量が低すぎる。たかが魔法を一回、二回発動させただけでスッカラカンなんて使い物になんねーぞ。お前ら今まで何してたんだ?」
確かにそれは俺も思った。
みんなの魔力量が少なすぎるって。
特級組でこんな感じってことは、他のクラスだとどんなことになっているんだろうか。
それにしてもフィリス先生の言い方……厳しいよな……
「お前ら、この中で魔力切れでぶっ倒れるくらいまで魔力使ったことあるのか?」
「流石に倒れるくらいまでは……」
「そんな危険な事なんて……」
俺以外はみんな頭を振る。
「やっぱりな……魔力量っていうのは、限界まで使わなきゃ伸びねーんだよ。あぁ、疲れた。もう終わりなんてぬるま湯に浸かっている限り、増える量なんて微々たるもんだ」
確かに俺は毎日毎日魔力を限界まで使い続けていたから、徐々に魔力量が増えていった気がする。
村にいるときからほぼ毎日、寝る前にスパイスとか備長炭を限界近くまで召喚しては収納スキルを発動して召喚した品を収納しては魔力を空にして、ぶっ倒れる感じで寝るって日々を過ごしていた……
「おい、ラグナ。お前が初めて魔力切れでぶっ倒れたのは何歳だ?」
魔力切れで初めてぶっ倒れた時……
それってあれだよな。
あれは確か、初めて頭の中に声が聞こえてスキルを使った時だから……
「たしか五歳の時に初めて魔力を使って倒れました。その時は三日間くらい目が覚めなかったって後から言われましたけど……」
あの時は母さん達に物凄く心配をかけてしまい、滅茶苦茶怒られた。
しかもそのあと懲りずにまたスキルを使って倒れちゃったし……
ラグナが苦笑いしながらそんな事を話している一方で、フィオナはラグナのこの発言に驚きが隠せなかった。
『五歳だと……五歳で……たった五歳で魔力量の訓練だと……?? それはあまりにも早すぎるだろ……』
流石のフィオナも、そんなにも幼い頃から魔力を使用していた事に驚き……さらに初っ端から魔力をすっからかんにするなんて異常な事をしていた事に絶句していた。
「お前……五歳からそんな危険でキツいことしてたのか……?」
キツいこと?
「初めて魔力を使って三日ほど倒れた後に懲りずにまた魔力使って倒れた時は本気で両親から怒られましたけど……」
「はぁ? 当たり前だろ! 普通、そんな小さな頃からそんなこと繰り返してたら確実に死ぬぞ!」
「えっ? 魔力枯渇って死ぬかも知れないくらい危ないことだったんですか?」
確かに身体はめっちゃキツかったけど……どうせ後は寝るだけからいいかなって思っていたから多少きつくても繰り返し行ってきた。
「正直に教えろ。初めて魔力を枯渇した時には既に加護があったのか?」
確かスキルを初めて使ったのはサリオラと出会う前だった。
「い、いや。まだその頃は加護なんて何も無かったと思います……」
「嘘だろ……お前……加護を授かる前からそんな事してたのか……」
「してましたけど……その後もほとんど毎日寝る前に魔力を限界まで使っては寝るって日々を送ってましたし」
『五歳から五年間も毎日だと……? グイドならまだしも、ミーナがそんなことを許すとは思えないが……もしかして……?』
あれ?
急に優しい眼差しで先生が俺の事を見つめてきた。
「そういえばそうだったか……お前が住む村っていえば、あの村だからな……確かにお前の村ではそうまでしなきゃ生きていけなかったのかも知れないな……だがな、ここは王都だ。そこまで生き急ぐことなんてしなくてもいいんだぞ。もう少し肩の力を抜いてもいいんだ」
なんか勘違いされてる気がするのは気のせいだろうか?
別にあの村だからって訳じゃなくて、少しずつ魔力が増えていくのが楽しくてやってたんだけど……
「べ、別にあの村だからって訳じゃ……」
先生が俺の側に来ると頭をポンポンしてきた。