ミーシャさんの暴露とまたあいつかよ!
「はい、エルフです。異種族は初めてですか?」
「初めてですよ。むしろ異種族の方っていたんですか!?」
衝撃の事実。
この世界にはエルフが存在した。
「人族に比べると多くありませんが、この世界にはエルフ以外にも獣人や海人なども居ますよ。ちなみに私はハーフエルフです」
そう言ってミーシャさんは自身のサラサラとした長い髪の毛を手でよけると、露わになる少し尖った耳。
この特徴はまさにエルフ!
少しテンションが上がってしまった。
「……僕に教えても良かったのですか?」
「ラグナ様ならば構わないかと。何せ……使徒様でもありますしね」
ミーシャさんがそう言うと微笑む。
「えっと……知っていたんですか……」
「ご安心下さい。メイド内でこの件を知らされているのは私のみとなっていますので」
「本当に名前だけなので……そんな使徒様らしいことなんて全く無いんですよ」
うーん、機会があれば一度マリオン様と話をする必要があるかな。
なんかマリオン様の使徒って立場だけが独り歩きしてる気がする。
「ちなみに先ほどの本屋で働いていた彼女はいくつくらいに見えました?」
「正直なところ、僕と同じくらいか少し下の十歳前後だと思っていました。こんなに小さい頃から働いているんだって」
「うふふ。人族を基準にするとそうなりますよね。でも彼女は五十歳を超えたくらいの年齢ですよ」
嘘だろ!?
完全に同じ歳くらいの見た目だったじゃないか。
「にわかには信じられませんよ……ぱっと見た感じでは、僕と同じくらいにしか見えませんもん」
「エルフと人族では寿命が違いますからね。人族は八十歳くらいの寿命ですが、エルフだと四百歳以上は寿命がありますから。」
流石エルフ。
存在と寿命がファンタジー過ぎる。
この際聞いてみようかな。
「女性に年齢を尋ねるのはマナー違反だと思って我慢してましたけど……ミーシャさんっていくつなんですか?」
「いくつに見えますか?」
来た。
定番のいくつに見えますか?
でも正直に答えよう。
「十八~二十歳くらいかなぁと思っていましたけど……」
「そう見えましたか? ありがとうございます。でも実際には今年で四十五歳になります」
まじかよ。
この見た目でうちの両親よりも年上とか……
「大体ハーフエルフは二百年ほどの寿命らしいです。しかもありがたいことに百五十歳くらいまでは今くらいのまま見た目が変わらないらしく、百五十を超えたくらいから人族と同じペースで老いていくと言われてますね」
エルフもハーフエルフも不思議生物過ぎる。
ミーシャさんは後百年近くはこの見た目のままなのか……
俺の方が先に年寄りになるってことか。
でも、これを聞いて納得だ。
だから若く見えたミーシャさんがメイド長だったのがずっと不思議に感じていたけど、そういう事だったのか。
少しミーシャさんと打ち解けてきたので、お互いに話をしながら寮へと向かって歩いていく。
しばらく歩いていると香ばしい肉の香りが漂う軽食の出店を見かけた。
お昼ご飯を食べた後に結構歩き回ったしな。
ちょっと小腹が空いてきた。
「ミーシャさん、少しお腹が空いたので、ちょっと寄り道しません? 物凄くいい匂いなので気になっちゃいました」
そう言いながら出店を指さす。
「あの店ですか? わかりました。いきましょう」
二人で出店へと進む。
「いらっしゃい。おや! 特級組の新入生さんがうちみたいな店に来てくれるのか。うれしいねぇ。何にしますか?」
恰幅のいい女性がお店を切り盛りしていた。
流石にこの世界のメニューには商品サンプルも写真も無いからな。
メニューの名前だけで判断しなきゃいけない。
「どれどれ、メニューは……」
たまたま寄ったお店で当たりを引いたらしい。
まさかのメニューに思わず顔が引きつってしまう。
・ボアたっぷりグーナパン
・新鮮野菜たっぷりグーナパン
・肉! 特盛りグーナパン
見事にグーナパンオンリーのお店を引き当ててしまった。
わざとじゃないんだけど……まるで僕が開発しましたってアピールしてるような感じになっちゃった。
でも今更やっぱりいいって言える雰囲気じゃないし……
腹をくくるか。
「じゃあ僕は肉! 特盛りグ、グーナパンで。ミーシャさんはどれにします?」
そう言うと驚いた顔をした。
「私もですか?」
「うん。どうせなら一緒に食べよう」
「……では新鮮野菜たっぷりグーナパンを一つお願いします」
「はいよ! ちょっとお待ち」
ジューっと肉を焼く音と匂いが広がる。
あっと言う間に二人分のグーナパンが完成した。
「出来たよ、たんとお食べ!」
手渡されたグーナパンは何の肉かはわからないが溢れんばかりの肉が挟まれていた。
いや、むしろ肉が溢れすぎて落ちそう。
ミーシャさんのパンもすぐに完成して手渡される。
辺りを見渡すとベンチがあったので二人で並んで座ると出来立てのグーナパンにかぶりつく。
「頂きます」
一口かぶりつくと肉の旨味と肉汁とタレが口の中に広がった。
「思ってた以上に美味しい」
チラッとミーシャさんを見ると小動物のように小さく口を開けてモグモグと食べていた。
二人で座りながら夢中になって食べていると……
「貴様は!! おい、平民! なんでお前がこんな所にいるんだ!」
絶対に会いたくないと思っていた人物が目の前に現れてしまったのだった。
急に怒鳴られて驚いた俺は手に持っていたパンを落としそうになるが、ギリギリのところで耐えることが出来た。
そして急に怒鳴ってきた人物に対して睨み付けると……
まじかよ……
またこいつかよ……
なんでよりにもよってこいつに会うんだよ……
急に俺に絡んできたのはナルタ元辺境伯の息子。
名前は何だったっけ。
興味もないから全く覚えてない。
入学試験の時に絡まれてしまったからもしかしたらと思っていたけど……
こいつも学園に入学出来てしまったらしい。
本当にこいつだけには会いたくなかった。
だけど……絡まれたからには相手をするしかない。
「……合格したからに決まってるじゃないか」
まさかこいつが合格してるとは思わなかった。
ローブのマークを確認すると、こいつはどうやら青クラスらしい。
「なんだ、その態度は! こっちはお前と違って由緒正しき貴族様なんだぞ!! それに平民の癖に女連れとは生意気だな」
そう言いながらこいつはミーシャさんの顔を見ると、ニチャっとした気持ち悪い表情の笑顔になる。下品な思考が表情に出ている。
「おい、その女を俺に寄越せ。俺が可愛がってやる。そうしたら寛大な俺はお前の無礼を全てを許してやろう。お前にはもったいない女だ」
ニヤニヤとしながら近寄ってくる。
最初からこいつはミーシャさんが目当てか。
ミレーヌさんの時と一緒だな。
たかが十歳のマセガキが何言ってるんだか。
ぶん殴れば一瞬でヤレるとは思うんだけど、だからと言って手を出すと入学早々揉め事になりそうだし……
うん。これは逃げ一択だな。
「ミーシャさん、目を閉じて」
そう伝えたあとすぐにスキルを発動する。
『LEDランタン!』
目の前にいるエロガキの目元近くで発動すると、痛みを伴うほどのまばゆい光が襲い掛かる。
「目がぁぁ! イタい、イタい! 助けて、ママー」
目を押さえながらゴロゴロと転がるエロガキのケツを蹴り上げると、すぐにミーシャさんの手を取りこの場から逃げる。
そのまま二人で寮まで走りつづけた。
「ミーシャさん、ごめんね。何か変な事に巻き込んじゃって」
「大丈夫です。こちらこそ助けて頂きありがとうございます」
「あら? あらあら? あらあらあら?」
なんとか無事に寮へと辿り着いたと安堵したその瞬間、急に殺気と共に後ろから話し掛けられた。
「ふ、二人とも手を繋いで歩くなんて、な、仲がよろしいようで……もしかして買い出しじゃなくて、デートでもしてたのですの?」
その迫力ある声にビクッと身体が反応しながら、ゆっくりと後ろを向く。
俺達の後ろにいたのは……
「お、お帰り、ミレーヌさん。き、急にどうしたの」
笑顔。確かに今目の前にいる女の子の表情は笑顔なのだが……
目が怖い。
目は大きく見開き、感情を感じ取る事が出来ない。
まじで怖い。